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辺境伯ご令嬢は斜め上の日常を歩む  作者: 黒鶺鴒
ローズガーデン編
31/45

第29話 『王宮主催パーティ』その4 いざ、討ち入りでござる

 

 今だパーティは腕相撲で盛り上がっていた。この世界には簡単に勝負を楽しむというゲーム的な物は殆ど存在していなかった。

 王すらも観戦して楽しんでいた。


「陛下、陛下」


「ああ、エドヴァルト、どうした?」


「そろそろお時間です」


「もうそのような時間か?今年昼の部は短く設定したのか?」


「いえ、いつも通りでございます」


「そうか。いや、楽しいと時間の経つのが早いものだな」


「左様ですね。そろそろお戻りになりませんと、お食事やお着換えもございますので」


「うむ、わかった」



 宰相が昼の部終了のお触れを出し、王家を送り出した後、貴族達は三々五々散っていく。皆、集まった時よりも笑顔で戻っていった。


「父様、私は少し用意がありますので一旦ローズへ戻ります」


「え?ラヴィ、食事を一緒に摂らないのか?」


「ごめんなさい、兄様。すぐ戻りますがお食事は先に済ませてください」


「まぁ、ラヴィ、久しぶりに逢えたのに食事も一緒にできないなんて」


「母様、ごめんなさい。その代わり夜の部をお楽しみに!――それから父様、ローズのご令嬢方に洗髪剤等広めましたので、もしかしたら注文の問合せが行くかもしれませんのでよろしくお願いしますね」


「ああ、アレイも毎日準備に忙しく動いているようだ。抜かりはない」


「そうですか。ありがとうございます。それじゃちょっと失礼しますね。カリサ!いくわよ」



 それからカリサを伴い、打合せ通りの待ち合わせ場所へ。王宮とローズを繋ぐ横の門へ行くと、すでに全員揃っていた。プラス、騎士のルシファさんとサウザーさんにもお手伝いを頼んである。

 騎士’sは最初私を見て、ローズは殿方入館禁止です!と、のたまった。誤解はすぐ解けたけどね。


「遅くなりました、皆さま。それじゃ早速用意を始めましょう」


 ローズではルナディさんに軽食を頼んである。皆で軽く摘みながら最終確認をそれぞれ行う。

 重たい荷物は粗方運んであるが、残り全部を侍女達が一度に持ちきれない為、騎士’sに袖の下という名のプリンで懐柔、荷物持ちを依頼した。プリン最強♪



「ああああ、あのっあのっ、なんかドキドキしてきました。ラヴィアン様!」


「えー、ちょっとヘレナ様、落ち着いてくださいね?きゅううって倒れるの無しですよ?――そういえば皆さま、陛下へのご挨拶は昼の部で済まされました?」


 皆の顔を見回すと、抜かりないという顔つきで頷いている。


「それではそろそろ向かいましょうか」


 全員がザっと席を立つ。緊張と高揚が入り混じった顔つきになり、いざ、決戦!という雰囲気である。いや、そこまで気負わなくても……。吉良の首でも取りにいくつもりか?赤穂浪士には人数が足りないぞ?



   ~~~~~


 

 王宮のパーティフロア兼ダンスフロアはとても広い。

 壁際に高く設けられた台座は王族達の椅子が置かれ、いつもその横に楽団が配備される。

 そして、今日はいつもと違う箇所があった。宰相様に頼んで内緒のステージを組んで貰ったのだ。楽団の横のそのステージは、奥に一つ部屋がある。奥の部屋ではローズガーデンの令嬢達が様々な用意を始めていた。おおよそ、優雅とはかけ離れている喧騒で、これから始まる初めての試みに戦々恐々の心持であった。


「皆さん、まだ時間はあります。ゆっくり落ち着いて用意してくださいね。大丈夫です。四十日弱毎日練習したんですから、自信を持ってください。そろそろフロアに集まってきたようです。いい頃合いになりましたら私が陛下の元へ知らせにまいります。それまで十分時間はありますので落ち着いて用意をしてくださいね」


 何とか落ち着いて貰うよう声を掛けたが、緊張は解けないようだ。まぁ一旦始まってしまえば何とかなるべー。





 ファンファーレが鳴り王様達の入場が始まったようだ。私達はフロアに居ないけど、あの人数ならバレないバレない。

 集まって暫くは歓談してるみたいだな~。ダンスが始まる前の方がいいし、そろそろかなぁ。


 よし!


「それじゃあ皆様、準備はできたようですね。では、お知らせに行ってまいります」


 皆の顔が一瞬にして張り詰めた。うっわー、大丈夫かなぁ? よし、変顔してやれっ


「注目~。むにゅ!」


 ほっぺたを摘んで引っ張ったり、挟んだりと変な顔を見せてみた。


「ちょ、ラヴィアン様!何を!う、うぷ」


 ラー博が笑顔になった。


「大丈夫ですよ~、回りは野菜か何かと思って、練習通りやればいいんですよ」


「わかりましたわ、ラヴィアン様。いつも通り、いつも通りですね」


 取説が少し緊張を含めた笑顔で答えてくれた。回りも少しだけ緊張が和らいだかな?

 イザベラ様が大人し過ぎるのが不気味だけど、たぶん緊張でいつもの憎まれ口が叩けない模様。その辺はまだ子供だよね。ガンバレーみんな!


「それじゃ、行ってきます。準備お願いしますね」


 フロアへ通じるドアから出て、コッソリ楽団の脇を歩く、そして王様達の居る場所へ。



「失礼します。宰相様。王様と少しお話ししても構いませんか?」


「ラヴィアン殿、ええ、大丈夫ですよ」


 今のラヴィアンは男装なのは変わらないが、普段着の男装に替わっていた。昼間よりも数段地味になっている為、どうした?という顔つきで見られている。


「いかがした?ラヴィアン嬢、嬢と言っていいのかわからんが」


「はい、これから皆様へのプレゼントをご披露したいと思いますが宜しいですか?」


「なに?プレゼントはあのアイスクリームだと思っておったぞ!」


「あちらもそうですが、プレゼントの本番はこれからです。楽しんで頂けたら幸いです」


「ラヴィ!何が始まるの?美味しい物?どこで?どこで?」


「シル王女様、残念ながら美味しい物ではありませんが、多分、この国で初めての試みですので楽しんでくださいませ」


 それから騎士’sの手を借り、設置されているステージ前にに王族だけ椅子を用意してもらう。貴族達全員分の椅子を用意するには時間がかかり過ぎる為、諦めた。すまないねぇ、立ちんぼで。

 貴族達はいつもと違うフロアの様子と、王族達の椅子の用意が始まるとワラワラと集まってきた。

 あー後ろの方は声しか聞こえないだろうなぁ。 


 まぁ、取り敢えず準備は万全。


 ステージ裏の部屋へ戻り


  「さぁ、皆様!始めます!」と声をかけた。




思いのほか『王宮主催パーティ』が長引いております。

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