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辺境伯ご令嬢は斜め上の日常を歩む  作者: 黒鶺鴒
ローズガーデン編
29/45

第27話 『王宮主催パーティ』その2 ハーレムってなんじゃろ?

少し短めです。

 王様への挨拶が終わり、自分の家族にも食べて貰おうと振り返るとこれまた全員固まってるし。


「父様、母様、兄様達、あちらに用意してありますので一緒に行きましょう」


 家族を誘って歩き出してすぐに、こちらへ近づいてくる令嬢達が目に入った。


「ラヴィアン様、ごきげんよう」


 イザベラ様と取り巻き二人である。


「ごきげんよう、イザベラ様達。どうしました?ご家族と離れてよろしいんですか?」


「よろしいんですのよ、家族は。それよりラヴィアン様、本日は終日仲睦まじくご一緒しませんと最後までやり切る自信が持てませんわ。それに先程から他のご令嬢達からの矢の様な視線に気が付きませんの?仕方ありませんので私が近くにおりましてよ」


「はぁ、それはありがとうございます?」


 何の思惑の視線かわからないけど、兄様達がいるから安心だったんだけどね。イザベラ様自身がきっと夜の事を思うと落ち着かないんだな。


「では、イザベラ様、あちらに新作のお菓子がありますのでご一緒にいかがですか?」


 と言いながら作法の教室で教え込まれたエスコートをする。腕を組んで歩き出すと、周りの知らないご令嬢の視線がとてーも痛かった。あー絶対勘違いしてるよね、これ。

 私は令嬢なんですっ!って叫びたかったけど隣で赤くなった顔を黒い扇で隠しているイザベラ様に恥をかかせることにもなるので、そこは抑えた。

 バーンズさんの所まで歩いて行く内にパラパラとローズの顔見知りが集まってきた。


「ラヴィアン様、ごきげんよう、今日はなんてまた華麗な!」


「ヴィー様、ごきげんよう、美しいですわ、そのご衣裳」


「ラヴィアン様!はぅっ!」


 最後のは当然ヘレナ様である。


「皆さんごきげんよう。集まってきちゃってますけどご家族はいいんですか?」


「「「いいんです。いいんです。」」」


「それに、夜の事を考えると何か落ち着かないのです。今、この時でも修練をしたい位です」


 ラー博が落ち着かなげに心境を訴える。取説もうんうんと頷いている。


「そうですか。それではみなさん一緒に新作のお菓子でもいかがですか?」


「「「ええ、喜んでっ」」」


「ですが、イザベラ様だけエスコートされててずるいですわ」


 全員からジト目で見られた。


「こ、これはあれですわ、本日の夜の予行演習と申しますか、仕方なしにですわ」


「まぁまぁ、それでは行きますよ」


 そんなやり取りの中、ついてきたラヴィアンの家族は令嬢方に押され後ろの方へ追いやられていた。


「兄上、ラヴィへの感情は家族だからかと思ってましたけど、人たらしですね、あれは」


「う、うむ。男装を見た時には驚いたが良かったのかも知れないな。ドレスで着飾ったラヴィだったらハエを追い払うのに大変だったかもしれん」


 そんな兄達の感想も知らずに、総勢十四名の令嬢を侍らせて歩くラヴィアンは傍から見ればハーレムである。

 アイスが置いてある場所まで来た令嬢のかたまりに周りはちょっと引いている。

 その中に混じっている子息の視線は当然険しい。


「それでは私が盛り付けますのでどれか好きな物を選んでくださいね~。冷たいので食べ過ぎ注意ですからね~、特にヘレナ様?」


 一人一人リクエストを貰いアイスを渡す。ヘレナ様がまた興奮しだした。


「ラヴィアン様、ラヴィアン様、これはっこれはっ――きゅ」


「「「わーーーーーヘレナ様!」」」




 少し離れた王座では王がラヴィアン達の楽しげな様子を見ながら宰相に話かける。


「宰相も一息入れたらどうだ?挨拶もひと段落ついただろう」


「ええ、そのようですね。しかしラヴィアン殿は不思議な方ですね陛下」


「ああ、本人の意志とは関係無しに人が集まるようだな。あれはローズの令嬢達だろう?今までのローズでは考えられないほど纏まっておるではないか。しかもシルまで懐いておる。エドガーもアベルも負けてはいられないな?ククク」


 エドガー王太子とアベル第二王子は初めてラヴィアンと逢ったが、一連のやり取りでラヴィアンが男性なのか女性なのか計りかねていた。そして、終始視線を集めているのはサリスフォード兄弟だった為多少気分を害している。

 王太子や王子と言えば、国中の関心事としてお妃候補の話題で盛り上がっているはずだった。予想では。だが、蓋を開けて見れば辺境伯の兄弟、その中でも銀髪の麗人が突然社交の場に現れハーレムを築いている。

 王子達の心中といえば、自分達の妃候補の事などまだそれ程の関心事では無かったが、今現在の状況は、王子達は完全に蚊帳の外であり面白くなかった。


「それでは陛下、私もあのアイスクリームとやらを頂いてきます」


「うむ」


「シルも行く~」


「まぁ、シルヴァーナ食べ過ぎてはだめよ?」


「ラヴィの傍の方が面白そうだもん」


 王も王妃も娘には激甘なのである。

 宰相と連れ立ってシル王女もラヴィアン達の輪に向かう。



「失礼、ラヴィアン殿。私にもそのアイスクリームとやらを頂けますか?」


 ラヴィアンからアイスを受け取り一口食べると、モウ乳の濃厚な香りと木の実の固さが心地よく口の中で混ざりあう。冷たい菓子など今まで生きてきた中で想像もつかない食べ物だった。

 ラヴィアンという令嬢は、男装はするわ、料理はするわ、令嬢にはモテるわ、豊富な知識を持っているわで一体どれほどのポテンシャルを持ち合わせているのか。

 この国の宰相として国を思えばこの逸材を決してこの国から出してはならない、出来れば王宮に取り込みたい、と考えるのは必然だった。今日を限りに数年はパーティ等の招待は出来ない。王が一度約束をしたことを簡単に覆すことはできないのだ。

 ならばどうする?今日中にどうにかして王太子か第二王子と上手く顔合わせをしたいが、当のラヴィアン殿の装いは男装である。頭が痛い。ん?本当に頭が痛い。今日は倒れるわけにはいかないのだが……。


「あー、宰相様、間も置かず食べると頭痛くなりますよ?」


「いや、すでに手遅れですね、ハハハ。ところでラヴィアン殿ちょっとこちらへ」


「はい、どうしました?」


「このアイスクリームとやらはモウ乳が使われてますよね?」


「ええ」


「大丈夫でしょうか?このような大勢の貴族方に広めてしまって」


「はっ!」


 ラヴィアンはある所で抜けているのである。


「ラヴィ、どうしたの?顔色が悪いけど」


 シル王女が心配顔で聞く。


「宰相様どうしましょう、私自分で止めといて自分で広めてしまった」


 ラヴィアンはガックリ項垂れ、今までにない狼狽とそのおっちょこちょい振りに宰相は我慢できずに大笑いしてしまった。

 

 やっぱり面白い令嬢だ。




 


王子様達頑張ってね♪


兄達、令嬢達の阻止に立ち向かえるのかエドヴァルト宰相様

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