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辺境伯ご令嬢は斜め上の日常を歩む  作者: 黒鶺鴒
ローズガーデン編
28/45

第26話 『王宮主催パーティ』その1 冷たいあなたが ス キ

ラヴィアンさん、いよいよパーティ初参加です。

 次の日


「ごきげんよう」


 !!!!!


そこに居た全員の目がイザベラ様の髪の毛に注目した。


青扇「イ、イザベラ様!なんて美しい御髪おぐしですの?」


赤扇「それにっなんていい香りなのでしょう!」


「ま、まぁ、何かラヴィアン様がどうしてもとおっしゃるので仕方なくですわ。おほほほほ」


 それからイザベラ様と隣に座るラヴィアンの周りにはお嬢様の垣根ができた。

ここですかさず営業開始、2~3日に1度各部屋へ伺う(訪問営業)約束をした。毎日だと流石に疲れるので。まぁ洗うのはカリサだけどね。

 それからは、午前に講義、午後は王様へのプレゼントのあれやこれや。途中、お菓子の差し入れをすると、阿鼻叫喚、質問の嵐、すかさずサリスフォード領を宣伝。敏腕営業部長とは私のことよ、フッ。

 ヘレナ様が何度か倒れたのは言うまでもない。すでにデフォな認識に皆もういちいち驚かなくなった。

 実家からの荷物も届き、あとはパーティーの日を数えながら最終調整をしていく。




 王宮主催のパーティーは昼の部、夜の部と開催される。昼の部は広い庭園に軽食を揃え、皆で歓談、顔繫ぎ等々。一旦解散しそれぞれが夕食を取ってからパーティードレスに着替え、王宮のパーティー会場へ集まる。

数百人の食事を王宮だけで賄うことは物理的に無理だそうだ。バーンズさんが言っていた。それでも夜は酒類が出されるので更に軽食おつまみを出すそうだ。軽食と言っても人数が人数なのでそれはもう大変な作業らしい。

 

 バーンズさんはモウ乳を使った何かを出したいけど出せないジレンマに悶絶していた。「ムムムム、次こそはっ次こそは!」と小さく叫んでいた。


 さて、いよいよパーティー当日。


 ローズガーデンの令嬢は自身の親族が到着の前に先触れが来るのでそれに合わせてローズを出る。


「ぅぅ、お嬢様、私はこれで首です!!きっと旦那様よりお咎めを受け首になります……うぅうう」


「大丈夫よ。アル兄様は知ってるし、王様からはどんな格好でもいいと言質を取ってるんだから」


 そこへユリアさんが先触れの伝言に来た。が、私を見た瞬間、目を見開いで固まってしまった。


「ユリアさん、では行ってまいります」


「え?え?ラ、ラヴィアン様!?」


 ポカーンとしているユリアさんをやり過ごし門の先まで出て家族の待つ馬車まで行く。

 馬車のドアを開けるといきなり叫ばれた。


「「「ラヴィアン!!!」」」


 母様は倒れる寸前、父様は


「ラヴィアン……い、いくら何でもそれは、確かにっ、家では許可を出したが……王宮のパーティーに、陛下になんと説明すれば……」


 なにやらぶつぶつ言っているが構わずに


「お久しぶりです。父様、母様、エレ兄様、アル兄様」


「あ、ああ、ラヴィ、元気そうだな。しかしその恰好は。ま、まぁラヴィであることに変わりはない。兄様にキスしておくれ」


「やあ、ラヴィ、似合ってるよ、クス。僕の一番お気に入りのやつを選んだからね」


「アルベルト!知っていたのかっ」


「ええ、手紙で頼まれましたので」


 父様は頭を抱え、母様は侍女に扇でパタパタと煽られ天井を向いて額にハンカチを乗せている。


「大丈夫ですよ、王様にはお咎めなしって約束を貰いましたから」


「「 はぁ~~~ 」」 盛大な溜息を貰った。


 馬車に乗り込み全員にハグとキスをして落ち着かせる。


 さていよいよ王宮の門に来た。そこで馬車を降り王宮の庭園に向かう。周りは貴族、貴族、貴族。どっから湧いて来たの?っていう位の人の波だった。

 父様、母様が2人並び、その後ろに3人並んで歩いていく。他の家族は度々パーティには出席していたので顔は見知っているが、今日はもう一人増えている為、こちらを見ては不思議な顔をしている。 

 美形の兄弟の真ん中に中性的な銀髪の美形が混じっているわ。あれはどなたかしら? 

 ヒソヒソ話が聞こえ、なんだか注目の的になっている気がしないでもない。

 ローズに所属していないお嬢様方は美形3名の兄弟に目が釘付けになっていた。

 庭園に入ると、よく手入れされた花々が咲き誇り、花瓶にも花が活けられている。華美なテーブルがランダムに置かれ、正面にはこれから座るであろう主を待つ豪華な椅子が並べられている。 

 少し離れた場所にはバーンズさんが指揮を執り作られた軽食の数々が用意されていく。その中には10日前位から毎日1つ作っては冷凍しておいたラヴィアン特製のある物も用意されていく。


 ファンファーレが鳴り響く。両陛下の登場である。その後に王太子様、第二王子様、シルヴァーナ王女様が続く。

 そして、声を拡張してくれる魔石を手に持ち王様の挨拶が始まる。


「皆のもの、本日はよく集まってくれた。このように晴天に恵まれ喜ばしい限りである。今後もこの国の平和、発展の為尽力してほしい。貴族同士手を携え、益々の繁栄の手助けを望む」


 短い挨拶だったが盛大なる拍手は中々鳴りやまず、終了のファンファーレを以ってそれぞれ歓談に入る。陛下への挨拶は参加人数が多い為、昼、夜どちらかで済ます習わしらしい。そりゃこれだけ居れば半日では終わらないよね~。


「父様、父様、王様への挨拶はいつ頃行かれます?」


「まぁ、一息ついて様子を見てからだな。しかしお前を連れて行くのが少々恐ろしいのだが……」


「大丈夫ですからっ。出来ればこの昼の部で挨拶を終わらせて頂きたいのですが?」


「うむ……。嫌な事は早めに済ますとするか……」


 むっ



 豪華な席に腰を下ろした陛下と隣に立つ宰相が何やらコソコソ話し出した。


「エドヴァルト、オウエン達は到着しているのか?」


「ええ、あちらの奥にご家族でいらっしゃいます」


「はて、ラヴィアン嬢はまだのようだな」


「そう……ですか?――名簿には5名と記載がありますが?どちらかへ行かれているのでは?」


 宰相が遠くのサリスフォード一家を見ながら答えた。


「まぁ、その内挨拶に来るだろう。しかし、プレゼントとは何であろうな?」


「父様、ラヴィはまだ来てないの?」


「シルヴァーナ、いや、何処かにいるはずだ」


「そう。プレゼントって?ラヴィが何かプレゼントしてくれるの?」


「まぁ、そのような事を言っていたが、どうなるか」


「ラヴィならきっと美味しい物よっ。うふふふ」


 シルヴァーナ王女とはバーンズの厨房へ行くたびに顔を合わせていた為、だいぶ仲良くなっていた。



 暫く時間が過ぎ、各貴族が次々と王様への挨拶を済ませる。様子を見ると一段落したようで、いよいよオウエンが重い腰を上げる。


「さて、そろそろ挨拶に参ろうか……」


 両親を見ると、嫌々がにじみ出ている。

 大丈夫だってのにっ。たぶん。恐らく。あれ?なんか心配になってきたけど今更だ。

 両親を前に兄弟3人が後ろに付いていく。


「陛下、ご挨拶が遅くなりました。オウエン・サリスフォード辺境伯でございます。本日は王宮主催パーティーにご招待頂き誠にありがたき幸せ。陛下並びに王妃様――――」


 なんだか堅苦しい挨拶を延々と述べている。めんどくさっ。


「ラヴィアン!」


 あ、夜の事を考えてて聞いてなかった。


「ごきげん麗しゅう両陛下並びに王太子様、第二王子様、王女様。ラヴィアン・サリスフォードでございます」


「!!!ええええ!ラヴィ?」


 シルヴァーナ王女が即座に声を上げた。王様と宰相様はラヴィアンの姿に目が点になっている。

 ラヴィアンの今日の正装はアルベルトに頼んだ男装だった。上の兄より下の兄の方がまだ体型が近いのでアルベルトに礼服を頼んだのだ。

 王女様からラヴィと愛称で呼ばれていることに両親と兄達はびっくり、王様と宰相はラヴィアンを凝視、その様子を不思議そうに見ている王妃様と王子様達。


「ラ、ラヴィアン殿、その装いは……?」


「ええ、宰相様、パーティー用のドレスは持っていないのです」


 その言葉を聞いて今度は王妃様と王子様達が驚いた。なぜドレス?という疑問か、え?令嬢なの?という疑問かどちらかは定かでない。

 取り敢えずあれを持ってこよう。


「王様、少しお待ちくださいね」


 そう言いながらその場を去り、バーンズさんがいる場所へ走る。


「バーンズさん、ごきげんよう。用意は出来てます?」


「ええ、ええ、え?ラヴィアン様ですか?これはこれは、何と言えばいいんでしょう?いい男っぷり?いえいえ、本日も大変麗しゅうございます。腰抜かすとこでした。

 ああ、お預かりしたものですが、氷の魔石を周りに沢山置いてますので溶けてませんよ。しかしラヴィアン様、これも飛び上がるほど美味ですな」


「そうですか?ありがとう。それじゃあ、バニラ、ストロベリー、お酒入りレーズン、紅茶、木の実、それぞれ少量で二つづつ位持っていきますのでお願いします」


 そう、アイスクリームである。モウ乳で作った本格的なアイスクリームだ。冷凍すれば作り置きができるので毎日少しずつ作りある程度の量が用意できた。


「さあ、どうぞ。溶けないように魔石も乗せてありますのでお気をつけてお持ちください」


 バーンズさんと半分づつ持ち王様達の居る場所まで戻る。王様達はやっと正気に戻ったようだ。


「お待たせ致しました。こちらはアイスクリームと言います。どうぞお召し上がりください」


「殿方ラヴィ、私もー」


「はい、シル王女様、殿方付けないでいいです。そして、どれにしますか?あまり食べ過ぎるとお腹壊しますので2つ位にしてくださいね」


 それぞれが見たことも無い食べ物に恐る恐る木匙を取る。


「美味しいいいいいいいいいい!!何コレ?何コレ?何コレ!ラヴィ何コレ?冷たいけど甘い!何コレ?」


 はいはい、わかったから落ち着け。王女としての何たるかが崩れ落ちてるからっ。

 シル王女の様子を見ていた王族達がそれぞれ口に入れると、騒ぎはしないけど目を見開き、一瞬止まる。

 王妃様はほっぺたに手をやり「ん~~~~~~」

 王子達は勢いよく口に運んでいる。


「あー、あの余り急いで食べると頭が痛くなりますし、冷たいので量を食べるとお腹壊しますから気を付けてくださいね」


 周りで見ていた貴族達がバーンズさんに催促しだした。一人一回位なら食べられるかなぁ?


 王様は黙々と食べている。その横で宰相様が食べたそうな顔で見ている。


 うちの家族は何がなんだかわからないというように立ち尽くしている。

 どうでもいいけど早く食べないと無くなっちゃうよ~?



パーティ回は2~3話続く予定です。

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