第25話 は、初めての経験でしたわ!Byイザベラ
王宮の厨房から戻って夕食後
「お嬢様、もうだいぶ夜も更けてまいりましたのでそろそろお休みになりませんと」
「ん~もうちょっと。カリサは先寝ててもいいわよ~」
「お嬢様、主人より先に寝る侍女がどこにいますかっ」
「別に咎めないし、それに誰かが傍にいる方が気が散るというか、なので先寝ちゃって?」
「明日、辛くても知りませんよ?ところで、さっきから何を書いてらっしゃるんです?」
「ん~色々~」
カリサが盛大な溜息をついて
「それではお言葉に甘えて先に休ませてもらいます」
「はいはい、おやすみ~」
ラヴィアンは王様のプレゼントにある事を思い付きそれを実行に移すべく行動を起こしていた。
パーティーで美味しいお菓子でも振る舞おうかとも考えたが、沢山の貴族達が居る前で両陛下にだけというのも憚れるので、それにそんな事したら目立ちたく無いのに目立ってしまう。それならローズのお嬢様方を巻き込もうと考えた。まぁ、相談して却下されたら別室でクレープシュゼットでも作ってあげよう。
色々書き物をしながら独り言で「あーこれは違うか」「ぐふふふ」「じゃじゃーん」等々、音の無い宵闇にラヴィアンの独り言が響きカリサは眠りたくても眠れぬ時間が過ぎた。
「あ゛--(怒)」 掛け布団を頭までかけてやり過ごすしかなかった。
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次の日午前中の講義中に隣に座っているイザベラ様へ小声で伝言、片方の隣のラー博にも伝言 講義と講義の合間に広めて貰った。
ルナディ様には午後のダンスフロアの使用許可を貰った。国王様へのプレゼントを皆で考えると胡麻化して、結果は当日披露するので決して誰も近づけないで貰いたいとも約束を取り付けた。
昼食後、全員が集まってくれたので計画を説明した。最初は難色を示したがここは口八丁手八丁、何とか持ち上げて全員参加を取り付けた。別に腹黒ラヴィアンを出したわけじゃないよ?
時間が無いのでその場でそれぞれの得意、不得意を聞きだしそれぞれの仕事を振り分けた。まぁ、ある決め事の時にはちょっとした騒ぎになったのだけれども。
明日から午後はそれぞれが忙しくなる。話を進めて行く内にそれぞれが今までにない位楽しそうに話始めている。 年齢的には前世でいう中学生の少女達である。それでなくても令嬢達は今まで皆でワイワイと何かをするということも無く、自分達で特殊な行動を起こす事も無い生活だった。ラヴィアンは中学生のクラスの担任のごとく目を細め皆をみていた。
「ラヴィアン様?どうされました?」
「いやぁ、皆さん楽しそうだなぁと」
知らず知らずのうちにニヤニヤしていたらしい。
「ま、まぁラヴィアン様がどうしてもとおっしゃるので渋々ですわ」
顔つきと裏腹な事をいい出すイザベラ様は、ついっっとそっぽを向いたりしている。ふふ、かわいい~。
ああ、そうだ。
「イザベラ様、以前私の髪の毛を触ってましたけど、興味あります?」
「え? い、いえ。興味という程のことではございませんが、なぜか急に手が伸びてしまっただけですわ。な、何かサラサラしてましたけれども、きょ、興味など全くございませんわ」
「あぁ、そうなんですか。では~他の方にサラサラ体験してもらいましょう。ヘレ「きょ、興味はありませんけどっ伺って差し上げてもよろしくてよっ」」
ぷぷっ、素直じゃないなぁ。
顔を近づけ、耳元で「それでは今日の夕食後イザベラ様の部屋へお伺い致しますがよろしいですか?」
「えっ!?な、何を」
「イザベラ様が最初です。クス」
イザベラ様が真っ赤な顔になりカクカクしだした。いやー笑える、クスクス
いたいけなお嬢様をからかうラヴィアンは十分腹黒である。
そして夕方近くにやっと解散になりそれぞれが楽しげに自室へ戻っていった。
さて、残りのポテテで何作ろうかな~
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「たのもぅ~」
「あら、ラヴィアン様、今日は夕食ですか?」
ラヴィアンが来れば何かを作るであろうことはすでに周知の事実である。
「昨日のポテテの残りを使いまーす。まずソースを作ります~」
トマトを沢山用意してもらい、玉ねぎのみじん切りを甘味が出るまで炒める。ニンニクと生姜を加え、出汁として味の濃い干し肉を細かく切り加える。肉はピグがいいかな、こまぎれにして同じく炒める。本当は粗びきウインナーが欲しいとこだけど無いし。
あーその内、燻製肉でも作ってみよう、簡単だし。
そして皮を剥いたトマトを沢山入れる。すこーし甘味でハチミツを足し、ぐつぐつ煮る。ある程度煮詰まったらモウ乳を加え、コンソメ、塩、胡椒で味を調えたらトマトクリームソースの出来上がり。
茹でたポテテの皮を取り、潰して塩胡椒、溶かしバターを少しと生クリームを少し混ぜる。そこへ小麦粉をベタベタしなくなるまで入れ捏ねる捏ねる。適当にちぎり細長く棒状にしたら小さ目に切っていく。それをお湯で茹でればニョッキの出来上がり。1~2分で茹で上がるのでお嬢様方が席についてから茹で始めても十分間に合う。あとはトマトクリームソースを掛けるだけ。
サンプルで作った一皿は厨房の面々によってあっという間に無くなりました。
裏から出て、しれっと今来た顔で席につく。
本日の献立はポテテのニョッキトマトクリームソース掛け、サラダ、パン、野菜スープ
これも懐かしいなぁ、モチモチしてて美味しい~。粉チーズ欲しいけど知らなければこれで十分美味しいと思う。
お嬢様方も美味しそうに食べてる食べてる。よしよし。
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夕食後お茶で一服した後用意してた荷物を持ちイザベラ様の部屋へ向かう
「ラヴィアンです」
「お待ちしておりました」
侍女に促され中へ入ると優雅にお茶を飲んでいるイザベラ様。手に持つ茶器がカチャカチャ音を鳴らしているのは多少の緊張からか。
「こんばんわ。イザベラ様。早速ですが湯あみはされました?」
「ゆ、湯あみ!?ななな、なぜですのっ?!」
「これから一緒に湯あみをするからです」
「「「 !!!! 」」」
侍女も一緒になってびっくりしている、ふふふ。
「まず、侍女のお一人をお借りしますね」
そう言い三名いる侍女の内の一人と湯あみ場へ向かう。
「まずこれを入れ、湯を勢いよく溜めてください」
この世界では魔石から湯を出す。温度調節は後で水を足して調整する。
「え?泡が立ってきましたけど……」
「それが石鹸の替わりになります。中にゆっくり浸かりながら体を洗うので温めのお湯にしてくださいね。あと今日は私もここに居ますのでイザベラ様には薄布を羽織って貰ってください」
「はぁ」
侍女は首を傾げながら用意していく。持ってきたシャンプーとリンスを用意し隣の桶に湯を溜める。風呂桶の端の丁度頭が乗る場所に厚めのタオルを被せその前に小さ目の椅子を置き準備終了。
「さあ、イザベラ様着替えてくださいね~」
ラヴィアンヘッドスパ出張サービス開始。中へ入って来たイザベラ様は泡泡の湯船に驚いているが構わず入って貰う。
「イザベラ様、その湯はそのまま石鹸です。今日は布を羽織って貰ってますが通常は裸で入ってくださいね。湯船の中で体を綺麗にする感じです。さて、ここに頭を乗せてください」
「あ、あの、ラヴィアン様?一体これは?なんかとてもいい香りですが」
そうでしょうそうでしょう。苦労したんだよここまでくるのに。
「これはシャボンです。湯から出た後もいい香りですよ。では髪の毛を洗いますね」
「え?ラ、ラヴィアン様みずから?」
「えっと、嫌でしたら侍女のどなたかに頼みますけど」
「い、いえ――」
何やらごにょごにょ言っているけど時間もかかりそうだし自分でやっちゃおう。
髪の毛を湯で濡らしシャンプーをつけ一度ざっと洗う。泡はほとんどでませんでした。キチンと洗いなさい、もー。
「侍女の方、よく見ててくださいね。こうやって頭の地肌を良く洗います。髪の毛の方はこすると痛むので気を付けてくださいね?」
最初こそ緊張していたイザベラ様は頭を洗われて段々全体が弛緩してきた。美容院の洗髪も気持ちよかったもんね~、気持ちわかるよ~。
三回目位にやっと普通に泡立ちモワモワになった。その状態を侍女に覚えて貰って明日からは一度は流し洗い、二度目で確り地肌洗いと教えた。石鹸成分が無くなるまで何度も地肌を濯ぐことを注意し、リンスは髪の毛だけに付け地肌に付けないよう気を付け、少し置きざっとお湯で流す。
「この状態の髪の毛を触ってみてください」
「まぁ、ツルツルですっ!」
確かめた侍女三名が驚く。
「はい、後はタオルで水分を取って体を流しておしまいです。それではお部屋の方で待ってます。髪の毛はタオルを巻いたまま来てくださいね」
暫くして出てきたイザベラ様を椅子に座らせ、温風の出る魔石を使い髪の毛を乾かしていく。今度は侍女達にやってもらう。
「襟足の地肌から乾かしていき全体へ、最後は手すきでいいので上から下へ温風をあて乾かしていってください」
暫くするとツヤツヤの金髪がサラサラに仕上がった。
「まぁ、お嬢様!サラサラでございますっ」
イザベラ様も自分の髪の毛を触り、指通りの良さにびっくりしている。姿見に急いで向かい自分を見つめ
「まぁ!まぁ!輝いているわ!なんてことでしょう!それに体も髪もいい香りがするわっ」
まだ、一二~三歳の綺麗な髪の毛なんだからその方が断然いいと思う。
「どうですか?サラサラで気持ちいいと思いますけど?油を付けてセットしなくてもそのままで十分美しいと思いますよ?」
「ええ、ラヴィアン様。……あの臭い髪油はもう付けたくありませんわ、ね」
「ということですので侍女さん達、明日から朝のセットはしなくて大丈夫ですよ。これはシャンプーとリンスと湯船に入れるシャボンというものです。お預けしますので明日からのイザベラ様の湯あみにお使いください」
「頂けるのでございますか?」
「ええ、今回だけは。無くなりましたらサリスフォード領で売ってますのでご連絡お待ちしております」
「「「 かしこまりましたっ 」」」
侍女’sの返事に力が入っているのは自分の為でもあるのだろう。よしよし、販売促進着実にいくよ~。
「では、イザベラ様、私は部屋へ戻りますね。では、また明日に」
自分の姿に呆けているイザベラ様の返事も待たずに部屋を後にした。
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自室に戻り着いたラヴィアン。
「う~ちょっと今日は疲れた~」
朝から講義2項目、午後はプレゼント計画のすり合わせ、夕食の手伝い、ヘッドスパ、いくら若いラヴィアンの体でもこの一日はハードだった。
あー植えたポテテの様子見に行けなかった~。枯れてませんように、アーメン。
「ですから私がやりますと申し上げましたのにっ」
「明日からの改造計画はカリサに頼むわ~」
前日の寝不足もあり、湯あみをしてベッドに入る早々意識が無くなった。
ぐぅ~
もぅあれです。野菜の名前にいちいちモドキ入れてません。その内野菜の名前を考えないとなぁ・・・
ラヴィアン:そのままの名前にしときゃよかったのよ。作者の自由なんだから。
黒鶺鴒:い、いや~転生先の名称が全く同じっていうのも無理があるんじゃ・・・。
ラヴィアン:じゃあ少しは頭捻れば~
黒鶺鴒:他人事だと思って・・・くそぅ