閑話2 お茶会 in ローズガーデン
――あの衝撃のラヴィアン男装デビューから後のお話し――
お茶会 in ローズガーデン
茶器が小さく音をたてながら中のお茶の香りを運んでくる。ここはあるお嬢様方のお茶会、丸いテーブルの真ん中に花をあしらいその回りに3組のカップ&ソーサーが置かれている。
「ふぅ、あれはなんというんでしょうか? 令嬢にあるまじき行為だと思いますわ」
赤の扇を片手に取り澄ました令嬢が発言した。
「そうですわね。あの方何を考えていらっしゃるのかしら、信じられませんわ」
青の扇の令嬢が同意する。
「まぁ、たまにあのような異種族?と申しましょうか変異種的な人が生まれるという事も聞いたことがございますし」
黒の大きな扇で顔半分以上を隠した令嬢が続ける。
「ですが、あれでは王太子妃候補のライバルとはなりませんのでその辺は安心ですわね」青扇
「そうですわね。何といっても第一候補はイザベラ様で決定ですもの」赤扇
「まぁ、そのようなことまだ決まってもおりませんのに」黒扇
「「そんなことございませんわ」」赤、青
「すでに決まっているも同然ですもの」赤
「「「ほほほほほほほ」」」
「コホン。ですけどあの容姿はちょっと侮れないですわね」赤
「ですわね、イザベラ様には敵いませんが侮れないですわね」青
「そのようなことございませんわ。ほほほ。容姿はどうあれいつもいつもあのように地味なドレスでは候補になりたくても難しいんじゃございませんこと?」黒
「「それもそうですわね。おほほほ」」
「でしたら毎日殿方の服装の方がよろしいんじゃなくて?まだあちらの方が華美でしたわ、それに王太子妃候補阻止の上でも」
「そうですわね!さすがですわっ」
「今度進言して差し上げましょう」
「ええ、賛成ですわ。あれならダンスの練習のお相手位はやってさしあげてもよろしくてよ」
「ですが最近あの子爵令嬢だのが周りに居てジャマなことこの上ないのですわ」
「そうなのです。忠告する暇もなく部屋へ戻られるので中々進言も難しいのですわ」
「あぁ、でしたらお勉強中にでも小声で話すという手段に出るしかございませんわね」
「そうですわね、いつもあの方一番後ろの席にいらっしゃいますし、隣に座ればお話しできるかもしれませんわね。嫌ですけど」
「あっっっ」赤が胸を押さえながら
「あら、如何なさいましたの?」青が心配する
「ええ、何かしらいつも前に座っているものですから、無理やり後ろの席に移動しなくてはならないと思うと、しかもあのラヴィアン様の隣に座ると思うと、罪悪感かしら? 胸がドキドキしてしまいましたわ」
「まぁ、それはいけませんわね。でしたら貴方は前の席のままでよろしくてよ? 代わりに私があのおかしなラヴィアン様の横に座りますので」
「いえいえそれには及びませんわ、ここはこの会の代表の私イザベラが参りますわ。ええ、もう、確り傍に座り顔を近づける事も嫌な事ですが、小声で話さないとなりませんのでそこは勇気を振り絞って頑張ってみますわ」
赤と青はなぜか残念そうに
「ま、まぁ、申し訳ありませんイザベラ様、そのようなお役目を自ら……。ですが、我慢出来なくなりましたらいつでも私が交代致しますのですぐにおっしゃってくださいまし」
「ええ、ええ、そうですわね。何時でも交代いたしますわ」
「まぁ!お二人共お優しいのね、ありがとう」
「「「おほほほほほほほほ」」」
本音と建て前を絵にかいたような会話のグループの他にもお茶会は開かれていた。
こちらも3人の令嬢が話に花を咲かせている。
「ほぉ……。」
「あら、どうしました?」
「ええ、なんか心配で……」
「あぁ、そうよね~、昨日の夕食も今朝の講義にもいらっしゃらなかったものね」
「ルナディ様から用事があるからと説明されましたけど、何かあったのかしら?」
「部屋へ押しかけるというのも、なにかはしたないような気がするし……」
「「「…………」」」
「そうだわ!他の事を考えて気を紛らわしましょう。例えば愛称なんかを考えるのはどうかしら?」
「「愛称?」」
「ええ、”ラヴィアン様”では如何にも可愛らしいお嬢様という感じであのお姿にはどうにもしっくりこないのよ」
「そうですわね、ではラー様とか」
「ラーミン様がいるので紛らわしいわ」
「ラヴィ様は?」
「う~ん まだ何となく女の子っぽい感じねぇ」
「アン様では同じね。う~ん あっ!ヴィー様は?」
「それいいわね!! あの姿を思い浮かべて――ヴィー様。ヴィー様。いいかもしれないわっ」
「「「 ぐふふふふ 」」」
「まぁ、何あやしい含み笑いをしてるの?」
「「あなたもしてたわよっ」」
「あら失礼。それでその呼び方で呼んでいいかヴィー様に許可を頂かないと」
「そうね、でもあの方お茶会へお呼びしてもいつも忙しいとかで参加して頂けないからどうしようかしら?」
「教室なら話せるわきっと。いつもあの方後ろの席に一人で座ってらっしゃるもの」
「でも隣に座らないと話せないわよねぇ、後ろには席は無いし」
「それじゃ両側に一人づつ、前に一人という布陣はどう?」
「それはいいわね! でも最近あのよく倒れるヘレナ様達が近くにいるのよね~、ドレスの時は倒れることないみたいだけど」
「早めに周りを固めればいいのよ」
「「ですわね」」
「「「 ぐふふふふふふ 」」」
不気味な含み笑いと共に紅茶の香りが舞うお茶会だった。
さてこちらはお馴染みのヘレナ様グループ
「お茶会の日取りはこの日でいいとして、お花はどうしましょう? 招待状は今日仕上げたいですね」
ラーミンが取り仕切り、話を進める。
「ええ、お花は真っ赤なバチュラがいいわ~、ラヴィアン様によく似合いそうだし」
「男装のラヴィアン様からバチュラの花なんて貰ったらどうしましょう~~~」
花の候補をマニュアルが出しヘレナが妄想に入る。
「そう言えばお話しの最中時々違う名前で呼ばれるのはなぜかしら?」
「「あなたも?」」
「あら全員なの?――ヘレナ様はなんて?」
「私は確か、キューチャン? て呼ばれたような」
「私は”トリセツ”よ」
「私は”ラーハク”。ラーだけは合ってるけど、ハク、って何かしら?」
「それを言うなら”トリセツ”なんて一文字も掠っていない呼び名はどういう意味なのかしら」
「キューチャンは何となく解るわよ?ヘレナ様倒れる時「きゅうううう」って言いながら倒れるから」
「へ? そうなの?」
「「 そうよ~(笑)」」
「ま、まぁ深く考えなくてもいいでしょう。愛称で呼んでくれるのは私達だけだもの」
「そういえばそうよね~、お茶会もまだどこにも参加してないらしいわよ? ヘレナ様が約束していたおかげでこうして呼ぶことができるし、なんか私達ちょっと特別じゃない?」
「そ、そうよね。うふふふ」
「「「 うふふふふふ 」」」
「取りあえずヘレナ様は倒れないように精神を保つことね?」
「わ、わかりましたぁ」
色々な思惑や画策の中ラヴィアンの周りが本人の意思と関係なく繋がりを求め動きだす。
教室のラヴィアンの隣席の争奪戦は密やかに始まっていた。
急に涼しくなってきました 過ごしやすく寝やすいですね~
ラヴィアンの席の周りの温度は上がっているようですけれど