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辺境伯ご令嬢は斜め上の日常を歩む  作者: 黒鶺鴒
ローズガーデン編
18/45

第18話 教えて!貞ちゃん!



 部屋へ入って来た騎士達が市井で大変な事が起こっていると報告した。


「なに?どういうことだ! 詳しく説明しなさい」


「はっ!まだ詳しいことは解っておりませんが市井の民がバタバタと倒れていると。まだ報告が来たばかりで詳細まではっ、申し訳ありません」


「宰相、状況把握の為の采配を」


「はっ、かしこまりました」


 なんだか慌ただしくなってきたけど、何かのウィルスとかだったら上手く措置できんのかな?


「あのー、質問なんですが」


 おずおすと手を上げてみた。


「なんでしょうか?今は時間がありませんのでまた後日ということでよろしいですか?」


「いえ、この騒ぎについてなんですが、今までこの国で何かの病気が蔓延し手が付けられないといった事が過去に起こった史実はありますか?」


「手が付けられない程のことは起こってませんね、熱や咳が出るという病でしたら毎年それなりに流行りますが」


 なるほど風邪は普通にあるけど、死病は流行ったことないからパンデミック対策はできないというところかな?何かとんでもないウィルスが蔓延したらほぼ全滅か……。 黙っている場合じゃなさそう。


「すみません、騎士さん。急に起こったのですか?どのような症状なんでしょうか?」


「まだ詳しくは解らないのですが、昨日の夜から立て続けに市民が嘔吐や腹痛、頭痛を訴える者が多数確認されているということです」


 なんだろう? 急にということは何かの毒? いやわからない、憶測は危険だ。


「宰相様、一つよろしいでしょうか? これから調査するにあたって未知の流行り病の可能性がありますので何点か注意点を申し上げたいのですが」


「え? 何かわかったのですか?」


「いえ、わかりません。ですがこれが感染するものであればそのまま近づくのは危険です。調査する方は口にタオル等巻いて手は手袋を装備することをお勧めします。そして症状の出ている方々は一つ所に集めた方がいいと思います。他の方の安全の為に。 恐らくですが、急に広まったということであれば何かを口にした可能性が高いと思われますがまだわかりませんので」


「陛下いかが致しましょう?」


「う、うむ、そうだな。原因がわからぬうちはその対処がいいのかもしれんな。してラヴィアン譲なぜそのように対処方法を知っている?」


「先ほど説明しましたように、色々研究するにあたり沢山の文献を読み漁りました。その中に似たような事が書かれている物もございましたので…、そしてできれば私も行きたいのですが」


「なりません!!そのような危険な場所へお預かりしているご息女を向かわせるなどっ!」


 ルナディ様が凄い剣幕で反対した。でも専門的な知識がないにせよ、日本の暮らしで培った一般知識はこの世界では相当な知識に匹敵するんじゃないかな? 私に的確な判断ができるかわからないけど、少なくともこの世界の人よりは知っている事が多いと思う。


「王様、こういった場合は初動対応が今後を左右します。緊急であればある程初動が大切ですっ!」


「………………」


「…………」


「うむ、解った、だがくれぐれも気を付けるように。騎士を二人付ける。ルナディそれでよいな?」


 納得できないという顔でしぶしぶ頷くルナディ様。

 早々に部屋へ戻りカリサに説明したら案の定大騒ぎ。


「なぜお嬢様が行かなければならないのですかっ!」


「いや、私が行くと言ったから? それより厚手の手袋とタオルを数枚用意して? …………カリサ、宰相様がお待ちです、急いで!」




 カリサはギリギリまで自分も行くと騒いでいたがなんとか引きはがし、宰相に連れられ急ぎ二人の騎士と共に馬車に乗り込む。街にはすでに沢山の騎士達が向かったようだ。


「いいなっ、ラヴィアン殿をくれぐれも頼むぞ!ルシファ、サウザー! くれぐれも無茶なことは控えてくださいね?ラヴィアン殿」


「解りました」




 ここへ来た時に通った道を着た時とは比べようもない位のスピードで馬車が走る。王宮やローズガーデンは高い塀に囲まれおいそれと中に入れない。つまり簡単に外にも出られない。やっと王都の街に行けるというのに行ける理由がこれじゃなぁ。

 門を出て橋を渡り暫くすると王都の街並みが見えてきた。宮殿から広がる街は扇のように道が広がり、道に沿って大小の建物がひしめき合っている。


 変な病気じゃなきゃいいけど……。貞子レーダー頼むよ~?


 馬車の中から街を見回してみると、皆やはり恐ろしいのか人がほとんど居ない。居るのは病人を運ぶ騎士と病人本人位だった。

 病人の集められた所へ到着すると、騎士のルシファさんが様子を見てくるといい、ここで待機するよう言われた。


 馬車を下りてみる。サウザーさんが動き回らないでくださいというので、馬車の周りを一周したいと頼んだ。サウザーさんは馬車の周りでなにするんだ?的に訝しんだが許可が出た。

 馬車の周りを一歩づつゆっくりと歩き、馬車を背にして周辺を見て回る。貞子レーダーや貞子フィルターは異常を感じない。皆が集まれる集会場が隔離場所になっているらしい。その入口を見てもなんら恐怖を感じない。うーん、これはやっぱり食べ物系かなぁ?

 誰か症状の軽い人の話が聞ければなぁ。


 そうこうしているうちに、ルシファさんが戻って来た。


「大体の事が解ってきました。どうも皆同じ物を口にしたようです」


「やっぱりね。症状の軽い人と話せますか?」


「えーと、ラヴィアン様が話されるのですか? 少し危険では?」


 いや、もしもし?ここで見てるだけなら何しに来たって話だよ。


「大丈夫です。中に入ってもいいですか?」


「そ、それはちょっと、――ではあの横に部屋がありますので、そこへ連れて行きます」


 言われた部屋で待っていると、ルシファさんに支えられながら三十代位の男性が入って来た。


「こんにちは、ラヴィアンと言います。少しお話を聞かせてください」


 男性は野菜売りを生業にしている住民で、昨日は月に一度の大がかりな市の日だったらしい。市の日には、近場の村や町からも人が集まり大変賑わうという。その中で昨日は初めて見る商人がタダで食べ物を配っていたらしい。取引の足がかりにタダで試食してもらうのは誰でも考えつくこと。見たことも無い物をわざわざお金を出して買う人も居ない。荷馬車に沢山積んできたので大盤振る舞いだと、呼び込んでいたという。欲しい人には言われるまま与え、美味いと聞けばそれを見た他の人もタダだというので、その食べ物に群がった。そうこうしているうちにそっちこっちで嘔吐や腹痛で呻く人々が出てきた。そして朝から更に病人が増えたという。


 毒を入れられた? 取り敢えず空気感染はないと思う。


「何かの毒か食中毒かな? 取り敢えず人にうつることはないみたいだから、中の様子を見たいのだけど?」


「しかしっ……、大丈夫なんでしょうか? もし毒を混入されたとなれば他にも混入している可能性も」


「大丈夫大丈夫」 貞子レーダーあるからっ。


 建物の入口には簡単に出入りが出来ないよう騎士が二人立っている。許可を貰い中に入ってみると百人以上の人々が呻いていた。まだ更に増えそうだと言っている。


「吐しゃ物や掃除したものは念のため燃やした方がいいかもしれないですね」


「わかりました」


 ほとんどの人がお腹を下しているっぽいね。――とすると。


「ルシファさん、これから言うものを用意して貰えますか?」


 砂糖、塩、綺麗な水、柑橘系の果物、入れ物を頼んだ。

 腹痛の薬は何かの薬草らしい。ここまでの人数に間に合わないと、今急いで集めていると言われた。ならば脱水症状を回避しとくか。

 経口保水液、熱中症対策の為の飲み物である。


 用意されたものを前に記憶を手繰り寄せる。何回か作った経験がある。

 えーと一リットルの水に砂糖は大匙二~三杯位、塩はほんの少しだったっけ?飲みやすいように柑橘系の香り少々っと。


 目分量でしか計れないから、一リットルは牛乳パックを連想、大匙の大きさは大体解る。入れ物に入れて完全に溶けるように混ぜる。

 ぐるぐるぐるぐる。吐気よ治れ~、腹痛治れ~、頭痛治れ~。 


 魔法のある世界ならポーション位ないのか? 聞いたことも見たこともないけど、ラヴィアンの行動範囲も狭いからなぁ。

 ぐるぐるぐるぐる。毒素よ抜けろ~、痛いの痛いのとんでけ~。 いや、ふざけてませんって!


 ――ほわん――    


 あれ? 何か光った? なんかうすーく緑色に光ったような気のせいのような?まぁいっか。


 覗くと大体溶けた様子。舐めてみると、ああこんな感じこんな感じ、ていうか美味しいじゃん。 


「ルシファーさん、サウザーさんこの飲み物を症状の酷い人から飲ませてください」


「これは何ですか?」


「水分補給の為の飲み物です。人は体の水分が足らなくなると死ぬこともあるんですよ?」


「水ではだめなんですか?」


「こちらの方が吸収が早いのです」


「わかりました」


 感染しないだろうということで家族やお手伝いの人も増えてきた。


 取り敢えず重症の一人に持っていき飲ませる。虚ろな顔で相当危ない感じがする。


「大丈夫ですか?ちょっとこれを飲んでみてください」


 木をくり抜いたコップを口に当てゆっくり飲ませた。心なしか顔色が良くなった? あれ? 

 首を捻りながら、


「また後で持ってきますから休んでいてくださいね」 


 そこからまた保水液作りを永遠と続けた。作った傍から皆に与え続けて数時間、大体二巡は出来たかな?とほっとする。


「お疲れ様でした。ルシファーさんサウザーさん、喉が渇いたでしょう?どうぞこれ」


 残っている保水液を二人にも渡した。

 

 あれ? 何びっくりしてるのかな? 二人共首をかしげている。


「ラヴィアン様、これは……、先ほどまで疲れていたんですが、疲れが吹っ飛んだ様な?」


 なんですとっ!? ちょっと飲んでみよう。

 ゴクゴクゴク、ぷはぁーっ!  あ?ぐるぐる回してて疲れてた手が痛くなくなった?


「サウザーさんも?」


「ええ、私は夜勤からそのまま出てきたので、だいぶ疲れていたはずなんですが……、なんか元気になりました」


 周りの患者を見てみると、なんだか軒並み顔色が良くなっている。


 え? なにこれ? 砂糖と塩と果物の汁でポーション系ができちゃったの?


   んなばかなっ!    教えて?貞ちゃん!!


  


本人すら把握していないラヴィアンの秘密

徐々に徐々にチートへと進むのか


カリサ: お嬢様 チートってなんですか?


ラヴィアン: チートスって美味しいよね~(ごまかしたつもり)

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