離別
貴方との距離感を考える。
今、私の心は貴方に近くない。
愛か愛着か。
それとも惰性を捨てたくないだけなのか。
私の心は小狡く揺れる。
そっと思いを馳せるのは自分の心。
思い悩むのは貴方との関係。
私はこのまま流されていいのかしら?
貴方はイイ人。
少し、身勝手だけど、それはお互い様で。
一緒に過ごす時間は気楽だった。
お互いに仕事も安定。それぞれの趣味役割も尊重しあえてると思う。共通の趣味も楽しめてる。
でも、なんだか私……。
こぼれるため息。
なんだか最近増えた気がするの。
リビングで灯りをつけたまま、ゲーム機が膝に無造作に落ちていて、貴方の意識も落ちていた。
どこか笑える。微笑ましいようなばかばかしいような。そんな皮肉な心境。
小さくこぼれた笑いで貴方が起きるんじゃないかと少し焦る。
私の焦りとは無縁に貴方は熟睡。
私は息を吐いて肩を揺する。どこかがっかり。変化がないことに安心しつつ、変化を求めてる。
矛盾した私。
「ねぇ、起きて」
ぐずる貴方を起こして寝室へ。貴方はもごもご呟き、しゃきり起きることなく寝入る。
寝入る貴方の額に軽くキスを落とす。
「おやすみなさい」
貴方はもごもごと呟くけれど、目覚めはしない。
コレは私の答えの一つ。
迷ってばかりはいられないの。
貴方はすきよ?
大葉と縮緬雑魚のスパゲッティと同じくらいに。
だから、このままじゃダメなの。
だから。
「ただいま」
誰もいない部屋にかばんを放り投げる。
彼の部屋から出て一ヶ月。
職場も変えて、住まいも仮住まいからちゃんとした契約に。携帯も番号を変えた。
彼からの着信は見ない。
一度だけ返したメール。
『自分を振り返る時間がほしいの。ごめん。別れて』と。
送ったメールについた返信は画像付きファイル。
それは二人でいった海の写真。彼の背中を思い出してふっと目元に熱が上がる。
優しいわ。ずっとそばにいたわ。
コレはただの惰性?
それとも愛情?
だって、自分の視野を狭めたくなかった。
私はもっと世界を見たいの。