雨と公園とふたり
縁起よく666文字
君が指す先には流れ星。
君が呟いた『好き』という寝言が悔しくて、そっと触れる指先にキスをした。
それはとある日の僕だった。
公園に散歩に来たんだ。
今時の公園は子供もあまり遊んでいない。遊具に腰掛けて静かに空を仰ぐ。
木の葉が隠しつつも確かに見える空は灰色で黒さがもくもくと広がってゆく。
唖然と見守る僕の額にぽつっと衝撃。
「夕立かよ」
ついていなかった。
僕は吐き捨てるように毒づくと、水捌けの悪い公園の敷地から走り出した。
それはぐずついた空が気にかかるとある日のこと。
雨が降りそうだった。
散歩に行くと言っていたから私は慌てて傘を手にとって走った。
途中から振り出したバケツをひっくり返したような雨は足元を濡らし、スカートの裾に泥はね雨染みを描く。
たどり着いた公園は強い雨の影絵の世界。
それを美しくロマンティックだという余裕は私にはなかった。
公園には誰もいなかった。
「こんな、雨だもの。いるはずがないわよね」
切なくも空しい心境で呟いた時、振動が……。
「今どこにいるんだ?」
タオルで髪を拭きながら彼女に尋ねた。
玄関先の濡れた靴が土砂ぶりっぷりを示していた。突発的なスコールは対処に困ると思う。
ぎこちない間があって、君の声が届く。
『公園』
薄暗い声で心配になった。
「迎えに行くよ」
『そうね。夕立やんだし、すれ違わないよね』
僕は慌てて乾いたシャツをはおり、つっかけに足を差し込む。
『ねぇ』
「なんだい?」
『外に出た?』
何を言ってるんだろうと思いながら施錠する。
「ああ」
うわのそら気味に返せば囁くように聞こえた君の声。
『……空を』
わけもわからずに空を仰げば虹。