希望の罰
「っ!」
言葉なく壁を叩く。
どうして上手く立ち回れないのか、君をただ追い詰めてる自分がもどかしくてたまらない。
物心ついた頃からすすめてきた君との未来予想図。
ずっと見ていたから。その見てるものを追っていたから。君のすべてをわかっていると過信した。
そこからずれた君を見て、湧き上がる感情。それは喜び。まだ君をより知っていけるという喜びだったんだ。
それでも、君の心も同じと決めつけた罰なのか。
君が今遠い。
友人に探すコトは止められた。『追い詰めれば怯えさせる』と。怖がらせる気は当然なくて。追い求めることを僕は、躊躇する。
それでも、僕は君がいない未来に希望なんか見出せない。
今少しの恋人時間のつもりだったんだ。
ずっと一緒で言葉なんか必要ないと錯覚してた。
言葉を惜しんでなんかいないつもりだったんだ。
じんわりと熱を持つ手が痛い。
君の住む部屋はすぐそこなのに僕は君に近寄るコトすらできない。
遠回りして帰る。
残業して誘われるままに飲み会に出て、家には、そう、君のいないあの部屋には帰りたくなかった。
大丈夫かと問われ「もちろん」と返す。
帰っても君は居ない。
君が遠い。それ以外の問題は何もないのだ。仕事もそこでの人間関係も。だけど、遠巻きに心を掛けてくれていることには気がついている。塞いでいる僕を見て連れ出してくれる友人、同僚には感謝してるんだ。多少、煩わしく感じてもそれを、気遣いを無碍にはできないとブレーキがかかる。
君が、心を決めるのにかかる時間。
それは一体どれほど必要だというのだろう?
自分がここまで堪え性がないとは思わなかった。
他と遊べと友人は言う。
僕が好きなのは彼女だけで他を思い浮かべるなんて出来ない。
友人として女性はいる。
それでも、それは友人か知人としてしか見れない。
職場ではあげていた長い髪を退勤後にほどく姿を見て、僕は彼女しか思い浮かべれない。
君はまとめた髪をよくほどいてはまとめなおしていたから。『髪をいじるのは私を見てって意味だっけ?』とふった僕に君は冷たい視線を向け、『あっち向いてて』と命令するんだ。
それがとても愛おしかった。
君の心が他に向く。
そう思えば息苦しい。
それでも、やめられないんだ。
君を思うことを。
今、君が遠いことが、これほどまでに、痛い。