表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

選択肢

「彼をどうとも思っていないのなら、俺と付き合わないか?」

 遅いから途中まで送ろうと言う先輩の言葉に甘えての帰り道。沈黙が気まずくなったのか、と思うようなタイミングで唐突に告げられた。


 付き合う?

 誰と?

 先輩と?

 

 単語を脳内で繰り返してみても想像がつかなかった。

 イメージできなかった。

 見上げれば、予想がついていたのか、冗談だったのか先輩が困ったように笑っている。

「いいんだ。気にしないで」

「ごめんなさい」

 私は謝るしかない。先輩の瞳にうつった私も困惑していた。


 部屋の中、イヤホンをつけて曲に浸る。

 ポップでノリのいい音楽が虚しい。動かない真新しい時計。私はどうして電池を入れなかったのか。

 まるで貴方のいない時間は動かないと言ってるようで苦しい。

 明るい曲を聞いているのに頬を伝う涙が止めるコトができないのだ。


 ベッドの中でマクラを抱き締めて天井を見つめる。

 家の中では無言。

 静かだ。

 気配がない。

 おやすみもおはようもじゃれてくる貴方の腕もない。料理に対する軽口や外出時の段取りを楽しげに仕切る姿も、遠い。


 わかってる。

 拒絶したのは私だった。逃げたのは私だ。


 楽しかった。

 そう思う。

 貴方との時間。

 でも、それは当たり前すぎてわからなくて、好きだと告げられても貴方の言葉はまるで、戯言のようで空回ってた。

 当たり前ってこわいなって思う。

 失ってはじめて気がつく。まさか自分が実体験としてそれを知るハメになるとは思わなかった。


 ねぇ。

 私の心は定まった?



 次に貴方を思い出した朝にメールをしてみよう。

 私は、卑怯者だから。


 いつの間にか外れたイヤホンからかすかに曲が聞こえてくる。






  挿絵(By みてみん)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ