混迷
一人きりの部屋の中、揃え切れていない内装に思う。
きっと、貴方がいても違和感はないんだろうと。思考がゆるり遠回り。きっと出会いが早すぎた。
私の心が育つ前に貴方がいろいろ準備した。
だから、迷って惑う。
貴方のセイ。恋も愛も惰性も全部混ざってわからない。
誰かのセイじゃなく、貴方のセイ。
二人っきりの部屋。過去の時間。バラバラなコトをしてても心地よかった。
私の時間。それは貴方の時間とイコールで。
手を伸ばせば貴方に届く。私は貴方が好きかしら?
迷う迷う。私の心がいつまでも迷子。
心は貴方に落ちてるのかしら?
好きの自信がまだないの。
ぱちんぱちんと打ち合わせる金属のかみ合う音。
君のひそやかな視線がない。
小さく曲のリズムを打つ君の足の音。それは過去にあった音。部屋にいることが辛い。君に拒否られたことが辛い。君のそばに他の誰かがいることが辛い。
君を守るように現れた彼の眼差しには君への好意。
辛い辛い辛い。
意識がその言葉だけで染まる。描いたはずの君との幸せな未来も見えない。君が選ぶのは僕なのか、彼なのか?
「まだ」という言葉に希望を持っていいのだろうか?
未来へと繋がる細い糸。
途切れることに怯え、僕は直視するしか道が見えない。
辛いんだ。
ぱちんぱちんぱちん。
音をたてる髪を束ねるクリップ。
君はひらりとした布の揺れるものを好んだ。
それでも職場や外で使うのはシンプルな物。ひっそりとラインストーンがポイントにあったりうっすらと花が描かれたり。フェミニンな物よりシンプルな物。
いつしかそれを自分の色にしてた。
本来好きであろうひらりふわりした物を選べばいいと思うけれど、その装いの君はかわいらしすぎてついぶっきらぼうになってしまった学生時代。
過去を振り返り思うのは装う楽しさを僕の独占欲が崩してしまったのかと思う。
いつしか君の選ぶものは無駄の極力少ないシンプルさ。
本当は開放すべきなのかもしれない。
縛りすぎたのかもしれない。
重すぎる『好き』の束縛だったのかもしれない。
僕はそれでも、それをわかった上でも、それでも、やめられないんだ。
君を僕に繋ぎ止めておきたいんだ。
約束してしまったんだろうか?
君をそっとしておくと。
木陰で空を仰ぐ。星の見えない曇り空。
待ち受け画像の中で遠くを見る君と、手のひらの中で君に贈りたいモノがかさりと音を立てた。