買い物
「先輩?」
「ん?」
「今日はありがとうございます」
「いや、僕こそあいつの好みの店を教えてもらって助かったよ」
そう言って笑いかける。
ネットカタログで欲しがってたデザインのアクセサリー「どうせ自分には似合わない」と諦めて、それでも未練がなくならないソレ。
それでも売ってる場所なんかはよくわからなくて、そんな時に後輩が買物に付き合って欲しいと言ってきたのは渡りに舟。
ショップは男の僕には少し入り難い雰囲気で。嬉しそうにアクセサリーを見ている後輩のツレだといってもとても居辛い。
君好みのアクセサリー。ネットショップで見てたお気に入りの傾向に近い物を見つけた瞬間、気にならなくなった。好みの色はわかっている。
その色がどちらにも入っていて悩む。値札を見て通帳を考えて、心を決める。
両方を持ってレジへむかう。
どちらもきっと君に似合うだろう。
思いが募る。
君への想いは消えない。
レジそばで見つけたシンプルなウッドスティックを添えて会計を。
「はい」
後輩がきょとりと目を瞬かせる。
「あの?」
「今日のお礼。レジ横にあった棒だけどね、見てたろ?」
ぱぁっと表情が明るくなる。
値段も手ごろだったし、シンプルだったし、そこまで喜ばれるなんて驚きだ。
「ありがとうございます。大事に使いますね」
「ああ」
買物に付き合ってもらったおかげでいいプレゼントが買えた。
僕一人じゃこういう店には少し入り難いし、後輩には感謝しかない。
ふと見れば零れ落ちた涙にぎょっとする。
「あ、……ごめんなさい。嬉しくて」
そんな、泣くほど欲しかったのか?
それとも何か謂れがあるのか?
僕がわからなくて困惑してると後輩は目元を押さえつつ笑う。
「いつも、欲しいと思っててもレジの人にこれもって、言いそびれちゃうんです」
ぺろりと舌を出して笑いながら意外な小心者ネタを披露する。
僕は軽く笑う。
「僕からの贈物が泣くほど嬉しかったのかって思ったよ」
「それもあるって言ったらどうしますー?」
「僕は彼女一筋だよ」