第一章 第一話 突然の話
今この世には、かつてない危機がある。
それは、宇宙を住処としていた空想なる生き物が、地球に舞い降りたということ。とても危険であり、また、個々の命にも関わる。
そんな中、人類が魔術で生み出した生き物がいた。
名は〈神蛇〉。通称〈リヴァイアサン〉。
容姿はほとんど空想なる生き物に酷似しており、力も五分と言っていい。
けれど、それは、〈神蛇〉が盟約した乙女の力量にも左右される。
それに、盟約できる乙女は、まだ体が穢れてない乙女だけ。
マギ候補の穢れなき乙女が魔術に馴染んでいなければ、それ相応の〈神蛇〉しか生まれない。それに反し、魔術に馴染んでいるマギ候補の穢れなき乙女が盟約した〈神蛇〉は、力も格段に上がる。
ここ、マギ育成システムが導入された、ヨーロッパマギ神聖学園。
他にこの学園があるのは、日本、欧米ぐらいなもの。
その校長室に呼ばれた私、フレミアイル・アラスティアナ。校長の口から発せられた言葉は、私に言っているのかと思いたくなるものだった。
「君には、日本本拠地にて、これから活動してもらう」
「え?」
聞き間違いだと疑いたい。
私がここに来たのは、マギとして精進するため。
たとえ世界最強マギとしても、精進は怠ることはない。怠れば簡単に他のマギに抜かれてしまう。
「校長。私に日本本拠地にて活動せよと?」
「そうだ。日本は優秀なマギが居るし、ここよりかは精進することができよう」
「ですが、私を日本本拠地に送るのは、もしや数不足では?」
穢れなき乙女と言えど、全員が全員マギになれるわけではない。そのため数が少なく、空想なる生き物に対処しきれない場合もある。
そして、今一番被害が大きいと言われる国は、日本なのだ。
「そうだが、ここにはもう君以上の力を持つ者は居ないだろう?それなら、マギ神聖学園がある日本に行っては、と思ってね。そこなら、君の才を発揮できると思ったのだよ」
「そう、なのですか?けれど、私はここで学べと言われました」
「だが、君がここにいるその理由は達成されただろう?それなら、別の国で働くのも悪くはない」
校長の言葉はごもっとも。
私がこの世界最強のマギであるが故の使命なら解るが、私の目的は、校長でさえ知らないはず。なのに、どうしてそんなことを言うのか。
訳が解らない。
私が生まれた場所は、イギリス王室。
故に、正統な王家の血を引いている。
けれど、私は王家の一員として暮らすより、国の人達と変わらない暮らしをする方が、良かった。
たとえ、王家の者から蔑まれようとも。
そして、私はこの世界と、戦いのためだけに生み出される〈神蛇〉達のためだけに戦いたいと願った。その後日、マギ適性試験を受け、見事に合格した私は、〈盟約の義〉を執り行った。
パートナーとなったのは、グリフォン。今まで〈神蛇〉として生み出されて来たどのグリフォンよりも、体格は大きく、魔力は高く、知性も高く、とても美しかった。私はそのグリフォンに、アリシアと名づけた。意味は、神聖。
戦いの道具として生み出された彼女らには、相応しくないかもしれない。
たとえそれでも、私はアリシアと名づけたかった。
それが、私なりの、戦いの道具として生み出された〈神蛇〉に対しての償いかもしれない。
そんなアリシアは私に応え、今まで数えきれない程の空想なる生き物を撃退して来た。
どんなに辛くても、アリシアがいたから頑張れた。
そんな私は、アリシアと自分の可能性を広げるために、無意識に、「解りました」、と答えていた。