プロローグ マギ
「サルーカ、神格を水に!」
青みがかかった銀髪を持つ少女が叫ぶと、少女の頭上に留まっていた〈神蛇〉が動き出した。
「遠隔攻撃に集中させて!」
神速の域を超えるスピードを出す少女の〈神蛇〉。けれど、少女の〈神蛇〉は、肉体の崩壊が始まっているのか、身体が塵のように砂になって散っていっている。
たとえどれだけ〈神蛇〉が強くても、肉体の崩壊までは止めることはできない。それはあの〈神蛇〉も同じ。
それに、命もそこまで長くはない。
「焔王!神格を火球に、全速で飛ばして!」
銀髪少女の隣には、いかにも和が似合う黒髪少女が立っていた。彼女の背後には、また別の〈神蛇〉が。
そして、その〈神蛇〉も動き出した。
でも、劣勢には変わらない。
相手は上位種。そう簡単に倒せる相手ではない。
もし、銀髪少女の〈神蛇〉の肉体の崩壊が始まっていなかったら、勝てたかもしれない。
現状はそうもいかないけれど。
刹那、一際大きい爆発音が響いた。視線を移すと、銀髪少女の〈神蛇〉も、黒髪少女の〈神蛇〉も、動けずになっていた。〈神蛇〉の盟約者の二人は、自分の〈神蛇〉に駆け寄って行く。
あれじゃ、自殺行為と一緒。
仕方ない、かな。
「魔法陣展開!」
私はよく通る声で叫んだ。
すると、最後の攻撃を繰り出そうとしていた上位種も、二人の〈神蛇〉の盟約者も、私の方を向く。
「あ、あの、あの方は?」
「私に聞かないでください。ですが、ここに入れたということは、私達と同じかもしれません」
貴女達と一緒にしては欲しくないんですが。
ま、そこは後にしよう。
「黙示録の炎よ、全てを焼き尽くしなさい!」
力ある言葉が放たれて、私の背後の魔方陣から、青白い炎が生み出され、上位種に向かっていく。
そして、直撃。それも、四つ。
刹那、先程よりも大きな爆発音が響いた。
爆発して生み出された煙に紛れて、戦場に舞い降りた。
「古の清浄の御印に願う!仮初めの魂持つグリフォンを地上に遣わせたまえ!」
私の頭上には、先程のよりか何倍もの大きい魔方陣が現れ、魔方陣の上には巨大な無限の印が浮かび上がる。
刹那、無限の印が形を変え、一体の〈神蛇〉が現れた。
それが、私の〈神蛇〉。