過去
ちょっと長めです。
最初にそれが発覚されたのは彼女の母親―一番上の兄の母でもあり、正妃でもある―がミリアが16歳の時に病に倒れたことが原因だった。
目の前で倒れた母親。そして母を心配する周りの空気にミリアはついて行けなくなった。
16ともなれば少しは落ち着いて冷静に母の状況が命を脅かすほどのものではないと理解できただろうが、パニックになったミリアにそれは不可能だった。
何度母の部屋へと突入しようとする彼女をアシュレーとリディアで必死に止めたことか。
母の部屋に行けないと分かると、ミリアはすぐに王に抗議に行った。(二人が知らない間に会いに行っていたので以下は後日談)
父といえども一国の王。そう簡単には会えない。
しかしミリアな異常なまでに取り乱していたらしい。そのらしくない様子に、王は目通りを許可した。
そしてミリアは王に散々母に会えないことを抗議した後、王にこう言い放って泣き崩れたのだそうだ。(ちなみにミリアは母に会えない理由を「母が倒れたのは自分のせいでそれを怒った王がミリアを母に会わせないようにした」と勘違いしていたらしい)
「お母様がお亡くなりになってしまったら私も死ぬ!」
・・・・・・と。
それまでミリアの抗議を困惑して聞いていた王は、そこに来て「何かがおかしい」ことに気づいたらしい。だって正妃はただの“風邪”だったのだから。
そこで王はミリアを別室に行かせるとすぐにミリアの侍女を全員呼んで「ちゃんとミリアに正妃の状態を説明したのか」を聞いた。
侍女達は全員頷いてはいたがどこか不安そうな様子に王が理由を尋ねると、
「ミリアさまは部屋では泣くか呆然とするばかりで自分たちの話が聞こえていたかも分からない」というのだ。
侍女たちの話と、ミリアの様子、そして後にはアシュレーとリディアにも理由を聞いた後、
王は一つの結論を出した。
それは「ミリアは正妃の病状に対して勘違いしており、しかしただの勘違いではなく日頃と違う周りの状況へのストレスでパニックを起こしている」というものだった。
実際その後心の病専門の医師がミリアに何度正妃の病状を説明し、説得したが、ミリアはそのどれもをまともに聞くことはなく、ただ母の部屋に行きたがった。
しかし風邪が写っては困るので、母にあわせてやることもできない。
ミリアのパニックは城に大きな影響を及ぼした。
なにしろ今まで城の中が明るく、温かかったのはミリア故だったので、それが崩れると城の中は一気に重く暗い空気が支配した。
そしてその状況はミリアの母の風邪が良くなるまで続いた。
その間わずか2週間。
しかし城の中はすっかりミリアに影響され、明るく暖かな空気が戻るまでしばらくかかった。明るく暖かな空気が戻ったのはもちろんミリアが元に戻ったからに他ならない。
母に会えたその瞬間「お母様!」と叫ぶと同時にミリアは母に抱きつき号泣したという。
そして「お願いだからおいていかないで」と言った言葉はその場にいた誰もが聞いていた。
城の中の空気が元に戻ったとはいえ、またこのようなことがあれば大問題だ。
王はミリアに正妃の体調が良くなるまでついていた医師をそのままミリア専門にさせ、
心のケアに当たらせた。
しかし当のミリアに当時の状況を聞いても、ほとんど覚えていなかったらしい。
ただ、「どこか暗く寒い場所にいた」と答えた。
医師はミリアのパニックを「今回のことに限らず、深刻な空気に対する不慣れさにより引き起こされたパニックで、またこういう状況になったときに再び起こるかもしれない」とし、
その解決方法としては「ミリアを甘やかしすぎた周りの改善」や、「ミリアにもっと現実に起こりうるトラブルの対処法を身につけさせること」(つまり甘やかしすぎるなということ)
を挙げた。
ミリアには世の中のきれいなところだけを見せたかった王だったが、また今回のようなことが起こっては城の―ひいては国の―問題に関わるので、仕方なくミリアをリディアと共に離宮で療養させ、その間に外の世界にもっと触れるように環境を整えた。
(アシュレーも護衛兼友人として行った)
その後も小さくはないパニックが起こったりはしたが、(それは離宮でのことだったので国や城に大きな影響はなかった)だんだんパニックの大きさや頻度は収まり、今では記憶をなくすほどのパニックを起こすことはない。
しかし天性の性格が明るく優しいため、パニックは起こさなくともシリアスな雰囲気は苦手のようだ。
時々耐えられなくて思わず・・・・・・というわけなのだった。
今ではこの話題はミリアをからかう話の種として話される。
ミリアの恥じらう様子見たさにの行動で、ミリアはその話題が出るたびに必ず顔を赤くしてうつむく。
結局、みんなミリアが元気で明るくいてくれればいいのだった。
ミリアの行動はパニックの名残なのでした。あれ・・・主人公誰だったっけ(苦笑)
次回からはリディアも出る・・・はず。