対面
シュバルツとアシュレーの対面です。
シュバルツは城に到着すると、まず王に謁見した。
そしてその後、すぐリディアのもとに向かったが、彼女は部屋にはいなかった。侍女に聞いても「分かりかねます」とだけ言われる。
だから彼は仕方がなくある人物の元に向かった。
「リディアはどこにいるの」
「帰ってきてまず最初に言うことがそれなの」
シュバルツがリディアに会えないと分かるやいなやいの一番に尋ねた人物、それはこの国の第一王女ミリアのところだった。
「久しぶりだね。元気の良さは相変わらずみたいだけど。でも君が城に着いたら真っ先に会いに来るよううちの執事に頼んだんじゃないか」
「この性悪男め!そんな減らず口聞くならリディアの居場所教えてあげないから」
「・・・・・・悪かったよ」
リディアの名が出てくるとすぐに謝ったシュバルツをみて内心あきれつつ、ミリアは答えた。
「リディアはね、今は・・・「おーいミリアいるかー?」」
ミリアがリディアの居場所を言おうとしたそのとき、よこから思わぬ声がそれを遮った。
遮った人物はまさしく今ミリアがその名を口に出そうとしていた、アシュレーその人であったから、ミリアは都合が良いとばかりにアシュレーに返事をした。
マナー?良識?そんなものミリアにとっては私生活において関係ない。
もちろん公式の場では一応それらしく振る舞うが、それは本当の自分ではない。
そして、本当の自分を知っている人にとっても、それはミリアといる上での日常風景なわけだ。
だから、シュバルツもそれを思い出したのか最初にちょっと眉をしかめた程度ですぐに元の表情―リディアと一緒で基本の表情は無表情に近い―に戻り、
突然入ってきたアシュレーに注意するようなことはなかった。
「ああちょうど良かった、こっち来てアシュレー。シュバルツ、今リディアはね、アシュレーの館にいるのよ」
そういった瞬間シュバルツの顔が微かにだが強ばった。ミリアはそれに気づいていたが特に気にすることなく話を進める。
「実はリディアたっての希望でね、私も詳しい事情は聞いてないんだけど、しばらくの間そういうことになったみたいなの。まあ何と言っても彼は・・・」
次の言葉を言おうとしたとき、いままでじっとシュバルツを凝視していただけだったアシュレーがすっと動いてミリアとシュバルツの間に割り込むと、またミリアの言葉を遮った。
「久しぶりだな、シュバルツ。6年ぶりか」
「・・・ああ。さっきの話本当か」
「リディアは確かにうちにいるよ。だけどな、それより先にお前に伝えなきゃいけないことがあるんだ」
そういうと、アシュレーはいつになく姿勢を正し、正騎士の礼をとった後シュバルツに次の瞬間言い放った。それはまさしく言い放つという表現にふさわしかった。
「先日リディア・ノース・フォレスト嬢の婚約者となりました、ワグナー家が近衛隊隊長アシュレー・ワグナーです。今後末永く、お兄様であるシュバルツ様には温かくお見守りいただければと思います。ふつつか者ですが、これからよろしくお願いします」
今度こそ、シュバルツの目は見開かれた。
<第五話、終>