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守護者



部屋に入ると、リディアはソファに座り遠い目をして窓の外を眺めていた。



部屋に俺が来たことは聞いているはずなのに部屋に入っても全くこちらを見ようとしない。



まるで、俺が来たことに気がついていないかのように。



どうせ「あいつ」―シュバルツのことでも考えているんだろう。



そう思うと腹が立った。




「リディア」



呼びかけても返事をしないので、もう一度、今度はさっきよりも大きな声で呼びかける。



「リディア」



するとリディアははっとしてこちらを向いた。やはり気づいていなかったらしい。



今は部屋にいるためうすい水色のふんわりとしたドレスを着ている。


しかし髪の色と同じ薄い色合いが、リディアをはかなげに見せた。


とても剣をたしなんでいるようには見えない。




「戻ってこい」





思わず、そういっていた。





「え」





リディアは一瞬困惑した顔をした後、何かを悟ったように微笑した。




「どこにも行かないわよ」





そういって、その後「行くところもないしね」と続けた。



俺はその答えに「はあ」と一息ついてリディアの座るソファへと近づいていき・・・・・・



そして抱きしめた。



そうせずには、いられなかった。本当に彼女が消えてしまいそうで。



「アシュレー?」



「何を悩んでいる」




「何言ってるの。別に何も・・・ってきゃあ!」



ソファの上に押し倒されたリディアは小さく悲鳴を上げる。

その声のか細さに、俺は思わずぷっと軽く吹いていた。



するとリディアはむくれた顔をした。

しかしかまわずに笑い続ける。



そんな俺にリディアは怒ったらしく「アシュレー」と―本人曰く怖い顔らしい―拗ねた顔で俺をにらんだ。



「悪い悪い。でもリディアお前そんなか細い悲鳴じゃいざというとき誰も助けに来てくれないぜ」



「あなたがいるじゃない」



「おれ?」



「私の護衛なんでしょ?」



「まあ助けてやるかはお前の日頃の行いによるかな」



「・・・・・・それおどしてるの?それとも職務怠慢を王に進言してほしいの」



「いや、日頃から俺に優しくしてっていってるだけ」



「優しいでしょ」



「もういいよ」



このままでは話がそれたまま本題がはなせそうにないので俺はその話を切り上げることにした。まあ話をそらしたのは俺だけどな。



リディアの顔の横についていた手をはずし、体を起こした後、リディアも引き上げまたすっぽりと抱きしめる。


リディアはずっと抵抗もせずされるがままだ。



まあ少々拗ねてるが。



リディアがこういう行動に抵抗しなくなったのはいつ頃だっただろうか。

そんなに昔のことじゃないと思う。

たぶん一年前くらいからだ。




これと言ったきっかけと呼べるものもなく、本当にいつの間にか、だった。




気づけば、リディアは俺の腕の中にいた。



初めて抵抗されなかった時は、うれしさよりもむしろ驚きが勝った。



でもいつしか俺もリディアが抵抗しないことになれていった。




今では、二人でいるときはたいていリディアは俺の腕の中にいる。







それがどれだけ俺にとって幸せなことか、おまえはきっと一生気づかないんだろうな、リディア。





















「お前さ、なんか悩んでるんだろ。ミリアが俺んところに来てさ、心配だから俺からも聞いてみてくれって」



「ミリアが・・・そう。心配かけちゃったみたいね。





でもほんとに悩んでなんか・・・」






「シュバルツのことだろ」




そう言った瞬間腕の中のリディアの体が硬直した。

俺は続ける。





「何を悩んでる」



「別に・・・悩んでなんか」



そういったところで腕を解いて俺はリディアの顔をのぞき込んだ。


「本当に、ないか」



リディアの瞳は揺れていた。



「ならいい」



「・・・」



俺は「ないならいいんだ、じゃあ帰るから」といっソファから立ち上がった。



「じゃあな」












****








「・・・待って!」




たぶん俺は、リディアがそういってくれるのを待っていたんだと思う。

たぶん、ずっと。



俺だけに、話してくれるのを。



俺はまたソファに座り直した。「本当はね・・・」とリディアが話し出す。



「どうしたらいいか、分からないの」


「どうしたらって?」






















****




「シュバルツにあわないようにするには、どうしたらいい?」





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