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幼馴染がヤンデレ化して自宅に軟禁されてる俺に果たして自由はあるのだろうか?  作者: 甘酢ニノ
監禁生活、始まりました

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5/13

風呂から上がると、脱衣所を出た所で結が待ち構えていた。


「りっくん! 髪、乾かしてー」

「はいはい」


差し出されたドライヤーを受け取って、結の後ろに立つ。

互いの家でお泊りをした時、卯月と結の髪を乾かすのは俺の仕事だ。

ドライヤーのスイッチを入れて、結の髪に温風をあてる。

俺が風呂を出るまで待っていたから、結の髪は既に乾き始めていた。

でも、髪を乾かすのが目的じゃなくて、俺にやってほしかったんだろう。

結の柔らかい髪を指で梳きながら、丁寧に乾かす。


「りっくん、上手ー」

「そうか?」

「うん。美容師さんみたいー」


結が嬉しそうに俺を見上げた。

結の髪からは甘くてドキドキする匂いがするのに、触ってると落ち着くから不思議だ。

結の髪が乾いて軽くなって、もう少しで終わる。

なんだかもったいない気がするけど、ドライヤーを止めた。


「はい、終わり」

「ありがとう! そしたら、交代!」


結は俺が片付けようとしていたドライヤーを手に取った。


「俺はいいよ。ほっとけば乾くし」

「だーめ! 風邪引いちゃうよ!」


結は俺の後ろに立って、タオルでゴシゴシ拭きながらドライヤーを当て始めた。

正直、力が強くてちょっと痛いし、ドライヤーが近くて熱い。


「りっくん、気持ちいい?」


結が楽しそうに尋ねて来る。


「ああ、ありがとう」


ちょっとくらい痛いのは我慢して答えると、結が笑う。


「ねえ、りっくん……今日、ありがとう」

「何が?」

「お風呂、そばにいてくれて。一人だと怖いから、すぐに洗ってすぐに出てたの」

「……そっか」

「りっくんがいてくれて、良かったよ!」


明るく結が言うから、俺はなんだか泣きそうになった。

引っ越してからずっと気にかけていたつもりだけど、夜に一人で家にいる結がどんな気持ちなのか考えていなかった。

可哀想なことをしてしまったと、後悔で苦しくなる。

結はめちゃくちゃ言っているけど、俺ができることなら結が望むことを何でも叶えてあげよう。

そう考えていると、結はドライヤーを止めた。


「そしたら、明日は学校だし、今日は早く寝ようか!」

「えーっと……俺はこの家で寝るのかな?」

「うん! 一緒に寝よう!」


結は隣の部屋と居間を仕切る引き戸を開けた。

寝室として使っているらしく、まだ物が少ない部屋に敷布団が敷かれている。

布団が、1組だけ。


「い、一緒に、寝るのか?」

「うん! そう言ってるじゃん」


結が笑顔で言って、俺の心臓が跳ねる。

さっき結の望むことを何でも叶えてあげようって決心したばかりだけど、取り消しだ。


「む、無理だ!!」

「え? なんで? 前までみんな一緒に寝てたのに」

「俺たちは、もう大人だ! 大人の男女が、同じ布団で寝るのはおかしい」


結は、果たしてわかってくれるだろうか。

俺は結を守りたい。それなら、一線を越えちゃ駄目だ。

結は、俺を信頼してる。その信頼を、裏切るわけにはいかない。

緊張して結を見つめていると、結は少し残念そうな顔で頷いた。


「そっか……じゃあ、りっくんはソファで寝て。毛布は持って来るから」

「ああ」

「あーあ! りっくんのために枕買ったのに」


結が明るい声で不満を漏らしながら寝室に向かう。


「どうせなら布団一式買っておいてくれよ」

「ふーんだ! いいよ、ソファで使って」

「はいはい、どーも」


結が投げて来た枕を受け止めて、今日の寝床を作る。

ずっと寝ていたソファは充分ベッド代わりになる。

毛布ももらったし、気持ちよく眠れそうだ。

繋がったままの手錠が気になるけど。


「……あれ?」


そういえば、風呂の時から俺の手錠は結に繋がっていた。

既に部屋の電気を消して引き戸を閉めているから、俺と結は居間と寝室で分かれている。

この手錠で結と繋がっているんだ、と考えていると、俺は動いていないのに手錠の鎖が震えている。

鎖が揺れる音に耳を澄ますと、泣いてる声に気付いた。

結が、泣いてる。

俺はソファから起き上がって寝室の戸に近付いた。


「結……泣いてるのか?」


俺が声をかけると、結が鼻をすすって衣擦れの音がする。


「ううん! 泣いてないよ」

「一人で寝るのが怖いのか? 」

「ううん。りっくんがいるから、怖くないよ」


結の声が少し明るくなった。

でも、まだ泣いてる。

そうか、と俺は気付いた。

結は、怖いんじゃない。寂しいんだ。


「……今日だけだからな!」


俺はがらりと戸を開けて寝室に入った。


「り、りっくん、何?」


結が驚いて枕から顔を上げる。潤んだ目が暗闇の中でも光っていた。


「布団には、入らないからな」


俺は結の布団の横に自分の枕と毛布を置いて寝転んだ。

ソファよりも固い床だけど、今は気にしていられない。


「りっくん……」

「寝ろよ。明日、学校だろ」

「……うん」


結も布団に横になる。

長さを持て余した手錠の鎖が、相変わらず俺と結を繋いでいる。


「りっくん……手、繋いでもいい?」


結が小さな声で囁いて、俺の心臓が跳ねた。

手を、繋ぐ。いつもしていることなのに、暗闇のせいかすごくドキドキする。


「いいよ」


俺が毛布から手を出すと、結の手が俺の手を握る。

小さくて、柔らかい手。少し冷たい。

俺が少し力を入れて握ると、結はもっと強い力でぎゅっと握り返してくる。


「ありがとう、りっくん」


結の声は、安心した様子だった。

しばらくすると、結の寝息が聞こえる。

穏やかな、寝息。泣き止んだみたいだ。

お風呂に入るのが怖いなら、夜に一人で寝るのもずっと怖かっただろうなと思う。


見慣れない天井を見上げながら、俺はぼんやり考える。

明日から学校だ。

結はどうするつもりなんだろう。

同じ学校とはいえ、手錠で繋いだまま登校して授業を受けるわけにもいかないし。

大人しくて真面目なキャラで通っている結だ。さすがにそんな奇行はしないだろう。

いや、でも、今の結ならやりかねない。


「まあ……なんとかなるか」


そう呟いて、結の手を握ったまま俺は眠りに落ちていく。

隣で、結の寝息が聞こえる。穏やかな、寝息。

結が安心して眠れているし、今はこれで充分だ。

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