監禁生活、始まりました①
結と俺は幼馴染だ。
物心ついた時から、俺の家の隣に結と結の母さんが2人きりで住んでた。
結の父親は死別したらしいけど、いないのが当たり前で不思議に思ったことはない。
結と俺はずっと一緒だった。
幼稚園の頃は、俺と結と姉の卯月は、いつも三人で遊んでた。
俺がリーダーで、遊びは俺が決めて2人を引っ張って行ったし、結が公園で小学生に意地悪をされた時は卯月を連れて助けに行った。
りっくん、ずっと結と一緒にいてね
と、結はいつも泣きそうな顔で、俺に繰り返し言っていた。
俺は、その時はガキ大将だったから、卯月に続いて従順な子分ができたつもりだったけど。
でも、俺が結を守るって本気で思ってた。
小学生になっても、3人でいつも一緒だった。
でも、中学生になるとだんだん変わってきた。
まず、卯月が勉強で頭角を現し始めた。
卯月がテストで100点を取っている時、俺は80点だった。
卯月が学年トップの時、俺はクラスで下から数えたら早い方がの順位だった。
結は「りっくんもすごいよ」って言ってくれたけど、卯月には敵わない。
卯月は成績優秀で、中学では生徒会長。クラスの人気者。部活動でも表彰されていた。
俺は普通。特に目立つこともない。
高校生になって、卯月は別の高校に進学した。偏差値が高い進学校。
俺と結は同じ高校。偏差値は普通。
正直、卯月と学校が別になって安心した。ずっと優秀な竜胆卯月の弟って扱いだったから。
結だけは変わらず、俺と一緒だった。
りっくんと同じ高校で嬉しい!
と、卯月のと比べてそれほど盛り上がらない俺の合格発表の後、結が笑っていた。
結のそばにいられるなら、まぁそれでいいかと思った。
卯月みたいに優秀な高校に行けなくても。
リーダーじゃなくても。
結が嬉しそうにして俺と一緒にいるなら、今のままでも悪くはないのかな、と。
それなのに、ある日突然、結の母さんが事故で亡くなって結は一人になった。
葬式の日、泣いている結に俺は何もしてやれなかった。
俺の母さんは不器用なりにあの手この手で結を慰めていたし、父さんは結が困らないように遺された財産を何とかしていた。
そして、結は住んでいた一軒家を売って、徒歩5分のマンションに引っ越した。
一人暮らしが心配で、俺はよく結の部屋を訪ねた。
りっくん、そんなに心配しなくても、大丈夫だよ!
と、いつも結は元気な素振りだったけど、突然独りぼっちになって寂しくないわけがない。
幼い頃、俺は結を守るつもりだった。
でも今、俺は何もできてない。
俺は、ただそばにいることしかできない。
それが少しでも結の助けになっているかもしれない。
そう信じて、俺は結の部屋に通い続けた。
結が笑顔になれるなら、ずっとそばにいるつもりだ。
***
「まさか、手錠で監禁されるなんてなぁ……」
ソファに寝転んでテレビのチャンネルを変える。
結の前の家から使っていたソファは、このマンションには少し大きいけど、俺が寝転ぶにはちょうどいいサイズでいつも俺の寝床になっていた。
「りっくん、夕ご飯、何がいい?」
結がキッチンから顔を出して聞いてきた。
「えーっと……なんでもいいよ」
「それじゃあ、オムライスにするね!」
結が嬉しそうに料理を始める。
俺はテレビを見ながら、思った。
全然困ってない。むしろ、卯月とチャンネル争いがない分、快適だ。
手錠の鎖が絶妙な長さで、トイレには行けるのに玄関のドアには届かない。
だから、部屋から出ようとしなければ単なるちょっとイキったアクセサリーって感じ。
そして、中学生くらいまで第2の部屋のように結の家に行っていたから、俺の着替えは一通り揃っている。
引っ越しの時に、結は俺のパジャマたちを律儀に荷造りしてくれたらしい。
俺の家族は誰も心配していないし、俺は全然困ってない。そして結は楽しそうだ。
なんか、これでいいかと思い始めていた。




