表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い瞳の王子さまに手を握られましたが、優しく髪を撫でられるので心も体もメロメロでどうにかなりそうです  作者: ちぃたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/10

第2話 「再会の花園」



 あの日から、何日もたった。


 市場で出会った“青い瞳の王子”。

 その人の声も、指のぬくもりも、

 どれだけ時間が過ぎても、まだ胸の奥に残っている。


 セラ・フローレンは花を束ねながら、小さく息をついた。


「……まさか、あれが夢じゃなかったなんて」


 あのあと、本当に王宮から使いが来たのだ。

 “王子殿下のご希望により、花園の手入れに協力してほしい”と。


 もちろん断る理由などない。

 けれど心臓が落ち着かないのは、きっと仕事のせいじゃない。


 ――また、あの人に会うかもしれない。


 セラは胸の前でそっと手を握りしめ、

 王宮の白い門をくぐった。


* * *


 王宮の庭園は、まるで別世界だった。

 見たことのない花々、澄み渡る噴水、

 そして静かな風の音さえも、どこか神聖で。


 けれど――その中心に、彼はいた。


「……来たのか」


 振り向いた瞬間、

 ユリウス・ルーヴェンの青い瞳が、まっすぐセラを捕らえる。


 光を反射して、まるで宝石のようにきらめいていた。


「せ、殿下……!」


「そんなに緊張するな。命までは取らない」


 わざと冷たいような声。

 でもその瞳は、前より少しだけ柔らかい。


「花の世話を見せてくれるんだろう?」


「は、はい……!」


 セラは震える手で籠を持ち直し、花壇の前に膝をつく。

 土に触れると、心が落ち着く。

 花たちの匂いに包まれながら、自然と笑みがこぼれた。


「花は、嘘をつかないんです。

 ちゃんと見て、話しかけてあげれば、すぐに元気になるんですよ」


 その言葉に、ユリウスが小さく目を細めた。


「……不思議な奴だな」


「えっ?」


「誰にでも怯まずに話す。俺が王子だと知っても、怖がらない」


「だ、だって……怖くなんて、ありません。

 殿下も、花を愛でる優しい方ですもの」


 そう言うと、ユリウスの唇がわずかに動く。


「優しい……か。そんなふうに言われたのは初めてだ」


 その声には、ほんの少しだけ寂しさが混じっていた。

 セラは思わず顔を上げ、そっと微笑んだ。


「じゃあ、これが初めてですね。光栄です」


 その笑顔に、ユリウスの喉がかすかに鳴った。

 次の瞬間――


「……無防備だな」


「え?」


 気づけば、彼の手がセラの頬に触れていた。

 指先が髪をすくい、花びらを拾うように優しく撫でる。


「殿下……?」


「髪に花のかけらがついていた。……嘘だが」


「えっ、えええっ!?」


 ユリウスがわずかに唇の端を上げる。

 その表情は、まさに“完璧な王子”ではなく、

 どこか楽しげで、少し意地悪だった。


「おまえが驚く顔、なかなか面白い」


「ひ、ひどいです……っ!」


「そうか? 俺は悪くない。

 おまえが、そんな顔を見せるからだ」


 青い瞳が、冗談とも本気ともつかない光を宿す。

 心臓がどくどくと高鳴り、セラは言葉を失った。


 しばらくして、ユリウスが小さくため息をつく。


「……仕事の邪魔をしたな。続けろ、セラ・フローレン」


 名前を呼ばれた瞬間、胸の奥がくすぐったくなる。


 “セラ”。

 あの完璧な王子の唇から、自分の名前が落ちるたびに、

 世界が優しく色づく気がした。


「……はい、殿下」


 花びらのように頬を染めながら、セラは微笑んだ。


 そしてその笑みを見つめる王子の瞳には、

 ほんの少し、熱を帯びた光が宿っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ