第7話『スライムは雑魚じゃない』
「速っ、速いです!リーナさんのいた世界では、こんなに速い乗り物があるのですか!!」
「おい、窓から顔だすな!落っこちたらどうすんだ!」
俺たちは謎の扉を目指してバギーで平原を横断中。
リーナが運転席、俺が助手席でルルシュが後部座席に座っていたのだが、初めて乗る自動車に興奮したルルシュの行動が危なっかしいので、俺も後部座席に移りルルシュを宥めていた。
「そういえばカズキ、お前は元いた世界でそれなりに地位のある者だったのか?」
「? いやそこら中にいる一般人だったぞ?」
「では何故家名を持っているのだ」
「あっ、それは私も気になってました。家名なんて持っているのは貴族などの上流階級の人間だけでしょう?」
なるほど、コイツらは苗字的なのが無いのは、上流階級の人間しか家名を持てないからか。
「俺がいた世界ではな、ほぼ全ての人が家名を持ってるんだよ」
その言葉に2人は目を丸くして驚いた。
「すごいですね!カズキの世界では身分なんて物もなかったのですか?」
「いや、それでは国が成り立たんだろう。恐らく貴族や王族はいたのではないか?」
「国によってはまだ貴族もいたかな。でも俺がいた国では、王族的なのはいるけど貴族はもういなくなったな。政治は国民に選ばれた人達がして、王族は関わらないんだよ」
「ほう、なかなか見上げた仕組みだな」
そんな感じでそれぞれの世界について教え合いながら旅を続けていった。
〜旅を初めて3日目〜
街の近くを通る時にそこに寄って、物資を調達しながら進んでいたのだが。
俺達の目の前に現れたのは、ぷるるんとした液状のボディ。
そう、誰もが知るメジャーなモンスター、スライムだ。
すげぇ、イメージのスライムと完全に一致してる。
スライムはやっぱり雑魚モンスター、手早く倒してしまおう。
そう思いながら、俺は鞭を腰のベルトから引き抜いた。
『操鞭』スキルがあるから最初からある程度は扱えたが、念には念を入れて暇を見つけては鞭の練習をしていた。
「モンスターと遭遇したのは初めてだが、この俺が華麗に退治してやるぜ!」
俺は幼い頃からかなり運動神経が良かったのだ。
こんなプニプニ、敵じゃないぜ!
スライムが跳躍して飛びかかってくるが、こんなスピード大したことない!
スライムの体当たりを躱した俺は、スライムが着地する前に鞭で勢いよく攻撃した。
空中に浮いていたこともあり、かなりの距離を吹っ飛んだスライムは……。
「おい何でだよ!ちっとも効いてねぇ!!」
「当たり前ですよ、スライムの体はとても柔らかく弾力があるので打撃などは効かないんです。通用する物理攻撃は斬撃や刺突くらいで……」
「これならどうだ?」
リーナの方を見ると、一丁のハンドガンを構えていた。
スライムボディに弾丸なんか打ち込んだところで、体に沈み込んで終わりだと思うのだが。
「くらえ、『狙撃』!」
引き金を引くと同時にリーナはスキルを発動させた。
いやでも、多少威力を上げたところで……。
だが、リーナのハンドガンから放たれたのは弾丸ではなく、光線だった。
そう、SF映画とかでよく見るレーザーガンだった。
スライムは光線によって焼き貫かれ、絶命していた。
……コイツを見てると自信を無くしそうだ。