第5話『スキルって異世界っぽいよね』
「出発前に行っておきたいところがあるのですが」
ルルシュが俺達について来てくれることになり、早速出発しようとしていたのだが。
「もちろん良いけど、どこに行くんだ?」
すると、ルルシュが大したことはなさそうに、
「刻印台ですね」
刻印台?
「それは何をするための場所なのだ?聞いたことも見たこともないのだが」
リーナの話を聞き、ルルシュは目を丸くして言った。
「2人が住んでいた世界にはスキルが無いのですか?」
何だよスキルって。
何だよ、何だよ。
「「カッケェ!!」」
俺達は思わず興奮していた。
「戦力向上にも繋がりますし、行っときますか?」
「「行きます!」」
しばらく歩いて着いたのは、教会みたいな場所。
その中に入ると神父らしき人が座っていた。
「こんにちは、お祈りですか、それとも刻印ですか?」
「刻印でお願いします」
ルルシュがどんどんと進めてくれる。
「この2人は刻印について知らないようなので、簡単に説明をお願いします」
「わかりました、ではまず……」
神父の話はありえないほどに長かった。
要約すると、人間は生まれつきに最低1つのスキルを持って生まれてくる。
ごく稀にだが、何か特殊な条件を満たすと新たにスキルを獲得できる。
そしてそれらのスキルは、刻印台で肉体に刻み込むことで初めて使えるようになるんだとか。
つまりこれは俺の秘められた才能が世に広まるイベント!
同じようなことを考えていたのだろう、リーナも鼻息を荒くして興奮していた。
「ではまずそちらの少年、前に出てきてください」
神父に呼ばれ、前に進み出た俺は神父の指示に従い、刻印台とやらに触れる。
……と、刻印台が発光を始めた。
これは俺のスキルが超強いか超多いかのどっちかになるパターンだな。
しばらくすると刻印台の光は消えていった。
「はい、終了しました。えーっと、あなたのスキルは……『操鞭』、ですかね」
えっ。
「他にはなんかありませんか?」
「これだけですね。あっ、でも先天スキルは1個が普通ですからね、2個以上なんてのはほとんどありませんから、落ち込まなくていいですよ」
い、いやでも『操鞭』がめっちゃ強いのかも……
「すみません、『操鞭』ってどんな効果があるんですかね」
淡い希望を持って尋ねたのだが、
「えっと、効果は『鞭を上手に扱える』ですね」
「……それだけですか?」
「それだけですね」
……。
すると、ルルシュがすかさずフォローしてきた。
「まあ、ハズレではないですよ、『木登り』なんてスキルしかなくて泣いてる人もいますから」
何だよそれ、せっかく異世界来たのに一般人と変わらないのかよ。
「ふっ、情けないなカズキ。まぁ見てろ」
この野郎。
舐めたことを言ってきたリーナに苛立ちながら、リーナの刻印が終わるのを待った。
「えっと、『狙撃』の1つですかね」
「そのスキルは強いですか!?アタリですか!?」
「戦闘向きのスキルの中でもなかなか強い方ですよ。効果は『遠距離攻撃の命中率と威力が大幅に上昇する』です」
その言葉を聞いて、リーナがドヤ顔してくる。
く、悔しい……!
「カズキさん、教会では先天スキルに合わせたアイテムを配布しております。こちらをお使いください」
神父が俺に手渡してきたのは一本の鞭。
なるほど、冒険者支援的なサービスがあるのか。
「リーナさんはどうします?」
「私は要らないぞ。もっといい得物があるからな」
フッと不敵に笑うリーナ。
何だろう、コイツに負けてると思うとめちゃくちゃ悔しい。
「では、2人とも、そろそろ出発しましょうか」
そして、俺達は教会を背に歩き出した。