第3話『帰れるかも』
急にこの子は何を言い出すのだろう。
弟を返せと言われた俺達だが、もちろんその弟なんて見たことも無いし、この少女だって初対面だった。
「えっと……、返せも何も君の弟なんて知らないやだけど」
すると少女は目を鋭くして言った。
「誤魔化そうにも、私は騙されませんよ」
少女は続けた。
「今この街では弟だけでなく、たくさんの人が突如として姿を消しています。それと全く同じタイミングであなた達のような知らない人達がたくさん現れました。あなた達が関与しているのは間違いないでしょう!」
……え?
この街からたくさんの人が消えてる?
そして、俺達2人以外にもたくさんの異世界人が現れた?
つまり、かなりの大人数が世界を移動しているということではないか?
リーナは恐らく俺と違う世界から来ている。
他にもいくつか世界があってもおかしくはない。
優希先輩が見知らぬ世界に飛ばされているかもしれない。
もとの世界にいたとしても、野蛮な人間や魔物が先輩の近くに飛ばされているかも。
———先輩が危険だ。
一刻も早く、日本に帰らなくては。
だが、一体どうやって……。
次の瞬間、リーナのポケットから変な音が流れ始めた。
まるでスマホの通知音のような。
リーナがポケットから取り出したのは……
えっ、スマホ!?
驚愕している俺の隣でスマホを見ていたリーナは、
「おいカズキ、元の世界に帰れるかもしれないぞ!」
そんなとても頼りになることを叫んだ。