表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー ~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~  作者: エース皇命
勇者祭編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/110

その97 混戦の予感

 一次予選を突破した生徒は全員で五十五名。


 ここから決勝トーナメントの人数である十六名まで数を減らすと考えると、二次予選はさらにレベルを上げた、高い壁であることがうかがえる。


 俺やグレイソンを含む一年生は十二名。

 二年生が思いの外少なくて十三名。これが最後の勇者祭になる三年生が三十名という比率だ。


 一年生の十二名の中で、〈1-A〉クラス出身は俺とグレイソン、獅子王(ししおう)にセレナ、ミクリン、神道(しんどう)東雲(しののめ)、それにテオの八名。

 今年の〈1-A〉は豊作だ。そう言われるのも頷ける。


「はっは! オレが思っていたより、周囲の連中は強かったらしいな!」


「学園全体がそう思っているだろうね。まさか僕達の学級(クラス)から八人も二次予選に進むなんて」


 一次予選の合格者は、〈待機室デルタ〉よりほんの少し広くて豪華な、〈待機室アルファ〉に集められていた。


 そこで改めて同じクラスの七人と顔を合わせる。

 獅子王は相変わらず、内側から溢れる自信を隠せていなかった。


「オスカーくん、絶対、決勝トーナメントに進もう」


「テオか」


 俺に話しかけてきたのは、一次予選で百八十二点を獲得し、無事に突破を決めた天王寺(てんのうじ)テオ。


 そのちょうど反対側には、彼の兄であるエイダンもいる。

 元〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉の実力者であるエイダンが、一次予選落ちなどあり得ない。彼も彼で、あらゆる生徒に対しての敵意をむき出しにしていた。


「エイダンと戦う覚悟はできたか?」


「うん。おれは……今では……もっと高いものを、見てるから」


「そうか。眼差しがすっかり、変わったな」


 テオの真っ直ぐな瞳を見て、頬の筋肉を緩める。


 教え子の成長を喜び、遠くに送り出すかのように、大人びた表情を作った。


「お前の苦しみはお前自身で乗り越えるしかない。だが、その手助けは、俺がいつだってしてやろう」


「オスカーくん……」


 テオが飛びついてきた。

 ここは一応公共の面前だが、気にしている様子はない。


 ただ「かっこよさそう」な台詞(セリフ)を放っただけだが、それがどうも彼の心に響いてしまったようだ。

 俺は困惑を消し、落ち着きを纏う。


「俺達がこの勇者祭でできることは、全力で戦うことだけだ。もしテオと戦えと言われれば、俺は容赦なく君を対戦相手とみなす」


「おれだって……容赦は、しないよ……」


 まだ鼻水をすすっている。

 こういう時に発する言葉ではなかったような気もするが、とりあえずテオの闘志に火をつけたことに変わりはない。


 俺にしかできないこともあるということだ。


「なんだ西園寺(さいおんじ)! やっぱ面白い奴だぜ! お前に目をつけたオレは間違いじゃあなかった!」


 獅子王が牙のように尖った歯を見せ、ぼんぼんと俺の背中を叩いてくる。


 彼もまた、行動の意図がわからない男だ。

 クルリン二号と呼ぶことにしよう。


『私語はここまでにしてもらおうか、二次予選の資格を得た、選ばれし生徒諸君』


 待機室に広がる桐生(きりゅう)の声。

 今回の説明は彼がしてくれるらしい。鬼塚(おにずか)でなくてほっとしたのは事実だ。


『ここにいる全員が、二次試験の内容を知らない。当然去年とはまったく異なるし、むしろ去年の何倍も難しい課題になるだろう』


 その言葉で、この場にいる全員が気を引き締める。


『二次試験は、教師 VS 生徒だ』




 ***




『ここにいる五十五人には、それぞれくじを引いてもらう。引いたくじは私に見せて欲しい。私が回収し、記録する』


 木箱の中に手を突っ込み、平然とした表情のままくじを引く。


 ここで一切緊張を出さないのが、西園寺オスカーだ。

 確かに対戦相手次第では、厳しいことになる。魔王セトを討ったとはいえ、剣術の技もまだまだ桐生に劣っているのだ。


 俺に教師と対等にやり合えるだけの力があるのかは、神のみぞ知る。


『くじには君達が戦うべき教師の名前が書いてある。戦うと言えど、彼らの腰に巻いてある(ベルト)を奪うだけだ。それに――』


 俺が引き当てたくじには、「草薙(くさなぎ)アーサー」の文字。


 いいのか悪いのか、新人教師。

 教師としては新人だが、戦いの経験は俺よりも多いはずだ。それに、彼には他の教師が失おうとしている、若さが残っている。


 ある意味、アレクと同程度に未知数な男だ。


『――君達生徒は、基本的に三人でひとりの教師を相手にすることになっている。しかし、協力(・・)できる、とは思わない方がいいのかもしれないな』


 一次予選で二位のアレクは俺と同じように動揺を見せず、淡々とくじを引き、桐生に渡した。


 調子のいいアリアは、いつも以上に引き締まった様子だ。

 まるで、感情などそこに入る隙がないかのように。


『ひとりの教師につき、ひとつのベルト。つまり、同じ教師の名がかかれたくじを引いてしまうということは、その瞬間、その生徒がライバルになるということだ』


 お互いの顔を見合う生徒達。


 ここに来てしまった時点で、その覚悟は必要だ。

 友達は友達でも、勝負は勝負。誠意を見せるというのなら、お互い本気で戦うということだけだろう。


 もし、グレイソンやセレナ、ミクリン、テオが俺と同じ草薙(くさなぎ)を引いたのなら、俺は彼らを蹴落とさなくてはならない。

 ――そんなことが、今の俺にできるのだろうか。


「マスター・桐生、ひとりの教師に三人の生徒、って言いましたよね? でも、当然ながら数が合わないので、ひとりの教師に四人の生徒、もしくは二人の生徒なんていうことになりませんか?」


 ここで、呑気なアレクが手を上げた。

 なんだろう。どこか他人事のように聞こえる。


 彼はもう構えているということだ。俺よりも勇者祭の経験は二回も多い。


「いい質問だ、アレクサンダー。それは――運だ。実力があれば、どんな状況も乗り越えられる。たとえ不運に見舞われたとしても。そもそも、勇者にはどんな逆境にも立ち向かえるだけの器が必要――それが、この二次予選が求めていることでもあるのかもしれない」


「なるほど。でも、残念だなぁ。ボクが決勝トーナメントで戦いたいと思っていた相手と、ここで戦うことになるかもしれない」


 アレクがちらっと俺を見る。

 その後、グレイソンや獅子王に視線を向けた。


 もしアレクが草薙を引いたのであれば、かなり厄介かもしれない。


 今回の戦い、教師に対する警戒だけでなく、生徒に対する警戒も怠れない。


 決勝トーナメントはどんな年でもタイマンで戦い、勝ち上がっていくシステムのようだ。だとすれば、そっちの方がむしろ楽。この二次予選が、大きな分かれ道となる。


「私からの説明は以上だ。二次予選は今から十五分後に始まる。その間、くじでどの教師を引いたのか、という会話も許可する。とはいえ、言いたくないのなら言う必要はない。それも戦略のひとつだからね」


 桐生はくじの木箱を持って、静かに待機室を出ていった。


 俺は違うが、剣聖である桐生と戦うことになった生徒もいる。

 もし俺が桐生のくじを引いていたら、少なくとも戦い方はわかっていた。何度も模擬戦をした仲でもある。


 だが草薙は……〈ゼルトル語〉しか教えてもらったことがない。戦闘時の彼について、無知にも等しい。


「オスカー、キミが嫌じゃないなら、対戦相手が誰か聞いてもいいかい?」


 考え込む俺に声をかけたのは、グレイソンだった。

 その隣にはセレナとミクリンがいる。


 できることなら、この三人と、テオ、決勝トーナメントで決着をつけたい相手のアレク、エイダン、アリアとはここで争いたくない。


 そう思っていたら、面倒なことにアレクと……アリア、それにルーナ、ついでにガブリエルまでやってきた。


「やあやあオスカー君、きみは誰を引いたのかな?」


「特に隠す必要もないか。俺の対戦相手は草薙だ」


「――ッ! なっ、なんだって!? 奇遇だね、ボクもマスター・草薙君だよ」


 わざとらしい。


「嘘をついてるな?」


「おーよくわかったね。流石はオスカー君、ちょっとからかっただけさ」


 俺が草薙を引いたと知り、大きな反応を見せたのはアレクだけだ。

 他のみんなは、ほっとしたように胸を撫で下ろしたり、関心なさそうにそっぽを向いていたり。


 誰ともかぶってないのか……?


「いやぁ、ボクの対戦相手知りたい?」


「俺は誰が誰と戦おうと――」


 グレイソンやセレナの視線を感じる。

 ここは黙ってアレクの対戦相手を聞いた方が良さそうだ。


「――いや、聞かせてくれ」


「よくぞ聞いてくれた、オスカー君。ズバリ、ボクの対戦相手はマスター・鬼塚(おにずか)君さっ」


「……」


 何とも言えない。


 鬼塚と戦うのが俺でなくて良かったと心から思う。


 俺やグレイソンが微妙な表情でアレクを見る中、ひとり、表情に締まりを取り戻した生徒がいた。


「オスカー……私……マスター・鬼塚と……」


 セレナだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 西園寺オスカーを応援しよう!  ★★★★★評価及びグッドボタンよろしくお願いします!  ユーザーお気に入り登録の方も、作者マイページというところでできるので、ぜひポチッとしてくださいな。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ