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【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー ~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~  作者: エース皇命
オスカーの帰郷編

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その58 嵐の静まり

 五十嵐(いがらし)アイザックは退学になった。

 そう言いたいところだが、そう思い通りにはいかないのが貴族という厄介なものだ。


 グレイソンのおかげで、五十嵐の暴走はこれ以降起こらないだろう。一ノ瀬(いちのせ)家には五十嵐家を潰すだけの力がある。とりあえずそれは理解できた。


「それで、五十嵐(あいつ)はどうなったのです?」


 クルリンがベンチに腰掛け、足をぶらぶらさせながら聞いてくる。


 読書パーティーの翌日にも、俺とグレイソンは剣術の訓練をしていた。その帰りで、偶然(・・)にも双子姉妹に遭遇したわけだ。


「奴は俺からの一撃で内臓が破裂していた」


「ふぇ?」「え?」


 平然と事実を述べる。

 あの程度の一撃で破裂する内臓。哀れだ。もう一度はっきりと言おう。俺は〈魂の拳(ゼロ・ナックル)〉を使ったわけではない。哀れだ。


 クルリンが目を丸くし、ミクリンが拍子抜けする。


「オスカーがすぐに治してなかったら、あそこで死人が出てたよ」


 苦笑いしながら、グレイソンが一言。


 神は殺したことがあるが、人間は殺したことがない。無論、俺に五十嵐を殺すつもりはなかった。


 あの後、俺はすぐに五十嵐を〈超回復(ゼロ・ヒール)〉で治療した。

 自身の魔力を犠牲にすることと、最低四時間の睡眠を必要するという苦労から、滅多に使うことのない神能(スキル)だ。


「安心しろ。俺は人殺しになるつもりなどない」


「むぅ。なんであたちにはおしえてくれなかったのです? あたちも力になれたかもしれないのにぃ」


 クルリンはぷくっと頬を膨らませた。

 彼女もミクリンも平民出身だ。貴族の問題は貴族で解決することが好ましい。五十嵐の場合、一ノ瀬グレイソンに頼ることが最善策だった。


 今こうして二人に話しているのは、もうすでに事件が解決してしまったから。


 それと、ただの話題作りといったところか。


「まだだ」


「ほにゃ?」


「クルリンにしかできないことがあるように、今回はグレイソンにしかできないことがあった。いずれ君の力も借りることになるかもしれないが、その時は俺に協力してくれるか?」


「もっ、もちろんなのです!」


 子供のようにはしゃぐ少女(クルリン)

 それに対してミクリンは、少し呆れたような表情を見せた。


「オスカー君に迷惑をかけないといいんですけど……」


 自分の双子の妹が俺に迷惑をかけてしまうことを心配しているらしい。彼女はこの中の誰よりも礼儀正しく、常識がある。

 毎回思うが、この双子は正反対だ。


「なに、気にするな。迷惑なわけがない」


 不安げな表情のミクリンを見つめ、優しく彼女の顎に手を添える。

 お互いの視線が結びつき、唯一無二の繋がりを生み出した。ほんのりとミクリンの顔が赤く色づく。


「少し……顔が近いです」


「不満か?」


 すると首を激しく横に振る。


「そんなことはないんですけど……少し緊張して……」


「むぅ」


 クルリンがベンチから立ち上がり、俺とミクリンの間に入る。


「抜け駆けは駄目なのです」


 どうやら、二人で西園寺オスカーの取り合いをしているようだ。


 学年でも可愛い、もしくは美人な女子生徒として男子生徒から注目を浴びているらしい(・・・)若槻(わかつき)姉妹。

 その二人に熱を上げられている、最近座学での頭角を現し始めた西園寺(さいおんじ)オスカー。


 なかなか悪くない。


 それでいて、学年一の美少女であるセレナは、完全に俺に落ちていた。


 西園寺オスカーには、何か特別な魅力があるのではないか。女性を惹きつけてやまない魅力があるのではないか。


 グレイソンのような女子を射止める容姿(ルックス)の持ち主でもなければ、白竜(はくりゅう)のような面白さ(ユーモア)やコミュニケーション能力の持ち主でもない。


 曖昧で未知な感じ。

 最高に「かっこよさそう」だ。


 ミクリンの小振りな顎から手を離し、小さな吐息を漏らす。


「世界はまだ、俺を解放してくれないか」


 気持ち暗めで、険しい表情を加える。すると絶妙に奥深い台詞(セリフ)の誕生だ。


 世界に対する嘆き。

 普通の学生は世界と対峙することなどしない。自分の身の回りのことで精一杯だ。だが、俺は違う。


「オスカー(しゃま)、どうしたのです?」


 クルリンが小さな可愛らしい手で、俺の手首をきゅっと握った。その行動に込められた意味は誰にもわからない。


 そして思った。

 場の雰囲気を理解できないクルリンの行動は、俺にとって最大の脅威となる。


「いつか君達が、こんな俺を救ってくれ」


「オスカー……キミは一体……」


 頭上を黒いカラスが鳴き声を上げながら飛び去っていく。

 クルリンに雰囲気を台無しにされかけるも、グレイソンの熱演が俺を救った瞬間だった。

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