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【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー ~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~  作者: エース皇命
読書パーティー編

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その51 読書パーティーの約束

 結局、エリザベスが俺に自身の問題を打ち明けることはなかった。


 十秒ほど抱きついていたかと思うと、はっと我に返ったようにして体を離し、何を話したらいいのかわからなくなっていた。


 俺は他にも面白い小説を教えて欲しい、と本題に戻し、せっかく作った雰囲気を壊すことにした。これ以上ごたごたしていても仕方ない。


 時間は有限だ。

 エリザベスの問題だけに時間を割くわけにはいかない。


 その後何冊か小説を紹介され、俺はそれを全部借りることに決めた。八冊ほどの本を抱え、図書カウンターに戻る。


「かなり長かったみたいだね」


 涼風(すずかぜ)が感情のこもっていない声で言ってきた。


 ちゃんと本人の口から聞けたか、という俺にしかわからない目配せをする。それに対し俺は、駄目だった、と首を小さく横に振った。


 はぁ、と涼風が溜め息を漏らす。

 俺に失望しているのかもしれないが、人間の本心を聞き出すという作業は、思っている以上に根気のいることだ。信頼関係がしっかりと構築されていない限り、本心に到達することはできない。


「後輩君、読書パーティーに来るつもりない?」


 本の貸出手続きが終わり、俺が図書館を出ようとした時、まだ逃がさないぞと言わんばかりに、涼風が話を切り出した。


 涼風が俺を誘うというまさかの展開に、驚きを隠せないエリザベス。


 読書パーティーというのは、週に一回以上図書館を利用する生徒が参加できる、図書館での豪華な会食パーティーのことだ。

 実は図書館には奥に飲食スペースがあり、高級レストランの内装のようだと評価されている。ゼルトル王国が資金をたっぷり使った結果だ。ただ、普段から飲食スペースを使う生徒はほぼおらず、年に一度の読書パーティーのためだけに作られた、といっても過言ではない。


 読書パーティーは午後五時から始まり、読書家の生徒達が豪華なコース料理を楽しむ。


 その間は自分の好きな本の話をしまくり、誰が一番の読書家なのか、という静かな戦いの場でもあるそうだ。食事が終わると夜の九時まで読書をして優雅に時間を過ごし、寮に帰る。


 今年度の開催は八月十日。

 こう聞くとなかなか悪くないように思えるが、俺には参加を躊躇する問題があった。


「俺は食べるものにはこだわっている。会食に参加することはできないので遠慮しておこう」


 そう言って、やんわりと断ろうとするが――。


「またまた、そんな遠慮なんていいから」


 脅すような目で、絶対に参加しろ、という圧をかけてくる涼風。

 彼女が何を望んでいるのかはわかっている。読書パーティーを利用して、エリザベスの口から事情を聞き出せ、と。


 如月エリザベスを救うことができる存在が西園寺(さいおんじ)オスカーだけだと思っているのなら、もう少し俺に対して優しく接して欲しいものだ。


「俺に出す料理は俺が指定した食材を使い、指定したように調理してくれるというのであれば、参加することも考えよう」


 腕を組み、偉そうに言う俺。


 きっと涼風はこんな俺の態度に相当お怒りだろう。どうしてただの(・・・)後輩がこんなに調子に乗っているんだ、と。


 だが、彼女の頼みの綱は俺だ。

 俺とエリザベスの関係は、涼風自身とエリザベスの関係よりもずっと深い。少なくとも彼女はそう思っているらしい。


 俺にエリザベスを救うように頼んだのも、エリザベスが心を許している相手が俺しかいないと思ったから、とのことだ。


 俺の条件を飲むしか、彼女に道はない。


「……わかった。うちが司書になんとか言っとくから」


「そうか」


「何か言いなさいよ」


「感謝する」


 今にも俺を殴りたそうな涼風だが、エリザベスに怪しまれても困る。殺意を隠し、わざとらしい笑顔を作った。


「それじゃあ、如月、後輩君の相手役(パートナー)頼んだよ」


「え? あたしが?」


「当たり前でしょ。うちがこいつと行くと思う? 勘弁してよ」


 俺はかなり嫌われているらしい。

 悪くない。好きか嫌いか人気が分かれる、というのも世界を動かす者の宿命だ。


「そ、そうなんだ。あたしはオスカーくんのこと、好きだけどなぁ――あ、いや、別に変な意味じゃなくて、尊敬してるというか……」


 一気に顔を赤く染めるエリザベス。

 また新鮮な表情を見ることができた。


「そうか。エリザベスと一緒だったら、悪くない」


 こうして、何度も涼風から睨まれたものの、エリザベスと読書パーティーの約束をすることに成功した。

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