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【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー ~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~  作者: エース皇命
勇者祭編

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101/110

その101 二年生の優勝候補

 王都ゼルトル・シティを模倣した戦場(フィールド)


 荒くれ者の冒険者や賞金稼ぎの集まる場所である酒場で、三人の男達が向かい合っていた。


 ――誰も動かない。

 お互いに次の動きを読もうとしているが、慎重になりすぎるあまり、誰も隙を見せないのだ。


 俺もまた、新たに登場した二年生の実力者を警戒している。


 名は綾小路(あやのこうじ)ジャクソン。

 グレイソンは彼について、剣を使わない、とか言っていたような。彼自身もよく意味がわかっていなかったが。


「こうしていつまでも立っているつもりか?」


 永遠と感じられる沈黙を破ったのは、俺の低い声。


 いつだって俺は先駆者となる。


「僕はそれでもいいかなー。だってちょっと疲れたし」


西園寺(さいおんじ)オスカー、二年生の間でも最近話題になってきたっすね」


 草薙の言葉には気軽さがあったが、綾小路のそれには一切の油断や気の緩みが見られなかった。本気で俺を警戒しているようだ。


 それは俺だって同じ。

 いつ横から攻撃が飛んでくるかわからない。


「どんな話題だ?」


 不意打ちを警戒しつつ、話を続ける。

 緊迫した状況の中、敵同士で冷静に話をするという強者ムーブをかますことができた。


「生徒会に目をつけられてるっていう話題っす。あの九条(くじょう)先輩を座学で破った一年生。あの天王寺(てんのうじ)先輩にライバル視されている一年生。肩書は脅威的っすね」


「そうかもしれない」


「でも肝心なのはそこじゃないっす」


「ほう?」


 綾小路の握り拳は震えていた。


 エイダンに負けないほどの、燃えたぎる闘志。

 それを俺に対して向けている。


 溢れ出る魔力。彼が二年生の中で最も警戒すべき存在。それを再認識させられるほどの、膨大な魔力量。


 アリアには及ばない。

 それでも、とっくに常人の域を超えている。


「どうして――ッ! どうしてオレをそこに入れてくれなかったんすか!?」


 綾小路が叫んだ。


「仲間外れなんて酷いっすよ! オレもずっと一緒に戦いたかったんすから!」


「悪い」


 思わず謝罪してしまいそうになるほどの勢い。


 本気らしい。

 実力のある者は自分を上回る脅威に怯えない。むしろ、歓迎する。自分が強いという自覚を持っているからこそ、さらなる高みを求めてしまう。


 彼は紛れもない実力者だ。


(面白くなってきた)


 静かに微笑む。この状況に相応しくない気の緩み。だが、その隙を突いてくる者はいなかった。その必要などないと、誰もが思っているから。


「こうして強者は巡り合い、高みを目指す旅は続いていく。いいだろう、綾小路。今後はお前の存在も気にかけておく」


「気にかけるだけじゃ不十分なんすよぉぉぉおおお!」


 綾小路が飛びかかってきた。

 本来は草薙(くさなぎ)を狙うべきだが、こうしてライバルとなった俺を潰そうと考えるのも筋だ。


 草薙は、やっと少し休める、とでも言うように肩を落として息を整えていた。


「ただ飛びかかるだけで俺には勝てない」


「オレはそんな雑魚(ざこ)じゃないっ!」


 綾小路が剣を抜く。


 剣を使わない、という噂は嘘だったのか。

 その剣で今にも斬りかかりそうな勢いだ。


 素早く反応して剣で応戦する。


「どんな戦いをするか期待してたが、思っていたより単純だな。それともブラフか?」


「オレの神能(スキル)を知らないみたいっすね」


「――ッ」


 綾小路の剣を弾こうと、軽く手首をひねった瞬間、相手の攻撃の重みがグッとのしかかってきた。


 明らかに威力が違う。

 剣で出せるようなものではない。


金槌(ハンマー)か……魔術でも使ったか」


「まだまだこれからっすよ!」


 相手の剣はすっかり剣でなくなっていた。


 銀の輝きを秘めた金槌(ハンマー)だ。

 剣がまるで魔法のように変化し、込められた魔力の質力を最大化した。これが魔術でないのなら、彼の神能(スキル)は武器変形。


 これが剣から金槌(ハンマー)だけの変化なのか、それとも別の武器にも変化させることができるのか。


「オレの神能(スキル)武器錬術(ミューテーション)〉では武器を自在に変化させることができる。その中でも一番好きなのが金槌(これ)っす」


 ご親切に解説してくれる綾小路。


 情報というのは戦いにおいて勝敗のカギを握る重要な切り札。

 それを手放したとしても、俺を倒せると判断したのか。


 それか、まだ言及していない核となる情報があるのか。


 通常、強力な神能(スキル)には何かしらの条件がつく。武器を変化させるだけの力だが、使い方次第ではかなり厄介なものになる。

 条件や制約がついていても不思議ではない。


「僕のことは忘れてくれていいからね~」


 草薙が笑顔で言ってきた。


「好きなだけ休んでいるといい。だが、綾小路を片づければ、すぐにあなたのことを思い出す」


「言ってくれるねぃ」


「そうっすね。まずは西園寺オスカーを倒すのが先みたいっす」


 本来の攻略対象である草薙を一旦忘れ、生徒同士の戦いを望む俺と綾小路。


 綾小路の詳しい性格はわからない。

 直感にはなるが、正々堂々とした振る舞いから、嘘はつかないように思える。


 申し訳ないが、俺は嘘をついた。


 ――綾小路との戦いの最中に、無防備な草薙の(ベルト)を奪う。


 実際の戦いの場で敵が待ってくれることはほぼない。

 それぞれが目的を持ち、その両立ができない時点で、全員が敵だ。いつ、どこから攻撃が飛んでくるのかわからない。


 さて。

 綾小路をどう倒し、草薙をどう攻略するか。


 こうしている間にも時間は過ぎていく。


 だが、もう勝利の道がはっきりと見えた。


 俺は必ずこの二次試験を突破する。


 ――勝利の計算に狂いがなければ、の話だが……。

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