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【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー ~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~  作者: エース皇命
勇者祭編

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100/110

その100 疾風との対峙

「待ってたよ、オスカーくーん」


「……」


 見つけたのは偶然だ。


 たまたま入った酒場に、俺が狙う草薙(くさなぎ)アーサーがいた。


 カウンターの椅子に座り、何も入っていないグラスを指の先で掴みながら、キラキラした笑みを浮かべている。

 刺客としての登場の仕方は、ゴーレムよりずっとかっこいい。


 幸い、もうひとりのライバルはまだここにはいなかった。

 (ベルト)は彼の華奢な腰にしっかり巻いてある。説明によれば、ベルトを外すために特別な技術は必要なく、単純に引っ張るだけで奪うことができるらしい。


 ゆっくりしている暇はない。


 この二次試験、ただベルトを他のライバルより先に奪えば合格、ではないのだ。


 決勝トーナメントの枠は十六しかない。

 仮にベルトを奪っても、その時点で十六人合格していたら脱落、ということになる。


「そんなカチカチな顔しないでよ~。僕、オスカーくんと戦うの楽しみにしてたんだよ?」


「俺も同じだ。ずっとあなたと戦いたいと思っていた」


 草薙は生徒に対し、フラットであることを心掛けている。


『僕はみんなとほぼ年齢(とし)が変わらないので、僕と話す時はタメ口で話してくださいねぃ』


 これは、〈ゼルトル語〉の授業で最初に彼が宣言したことだ。

 ほんわかとした態度のまま、教師の威厳など一切出さずに自然に接する。それが草薙の教育法。


 それにより、俺は彼の前でもいつもの調子で「かっこよさそう」なムーブをかますことができる。


「あなたの神能(スキル)は風の神から授けられたものだ。違うか?」


「ふへへ。そうそう、残念だけど、僕のベルトは渡さないよ~」


 草薙が構えた。

 そろそろ戦闘のスイッチが入ってきたようだ。


「うわぁ。やっぱりちょっとダルいなぁ」


 と思ったら、ぐだーっとした態度になって椅子に座り直す草薙。


「実は僕、力をほんの少し抑える魔術かけられてて~、だからあんまり戦いたくないんだよねぃ」


「それなら、素直にベルトを渡してもらう必要がある」


「うーんと、やっぱりそれは怒られるよね、うん。よーし、戦うぞぉ」


 草薙の剣は短剣より長く、長剣より短い。

 グリップの部分には手を守るパーツがつけられていて、刃は端から端までが細い構造だ。


 色はわからない。


 〈視界無効(ゼロ・ブラインド)〉の副作用で、俺の視界は十時間白黒(モノクロ)だ。


「それじゃあ、行きまーす!」


 草薙が動いた。


 ――と思った瞬間、顔がすぐ横にある。


(――速い!)


 少し前の俺の動きがスローに思えるほどの、圧倒的な速さ。


 目を見開きながら思う。

 これは不可避の攻撃だ、と。


「――ッ」


 腹に金属を感じた。


 草薙のサーベルの腹の部分が、俺の腹に一撃を繰り出したのだ。

 斬られたわけではない。だが、その気になれば彼は俺の腹を割ることができた。


 その事実が頭の中を駆け巡る。


 衝撃で飛ばされた俺は、テーブルを背中で木っ端微塵に破壊した上で壁に激突した。壁には亀裂が……俺がグレイソンとの決闘で見せたパフォーマンスと似ている。


「あれ~? やり過ぎちゃった?」


 後頭部をかきながら、焦ったように近寄ってくる草薙。


 それは愚策だ。


 自分の間合いを確認した上で、確実に草薙に攻撃を当てる。

 ギリギリまで動かなかった俺は、ここぞというタイミングで風圧蹴りを放った。


(――決まった)


 蹴りによって作り出された高圧の風が、草薙に向かって直進する。


「油断なんてしてないよ~へへ」


「――ッ」


 俺の不可避の攻撃を笑いながら受け止める草薙。


「風は僕のトモダチだよ~。トモダチが僕を裏切るわけないもんねぃ」


 風が散った。

 圧力が分散し、草薙にはまったく当たらない。


 この時、俺は衝撃の事実に気づいてしまった。今後、俺はこの時のことを一生忘れないだろう。


 ――このヘラヘラほんわか教師、とんでもなく強い。


 気づくことには気づいた俺。

 もう恐れるものはない。あとは突き進むだけだ。


「興味深い」


 この場面(シーン)に合わない台詞(セリフ)を放ち、余裕そうに立ち上がる。


 体に傷はない。

 軽度の打撲と重度の自信(・・)があるだけだ。


「その風の能力も速さも、初見殺し。対応することさえできれば簡単に攻略できる」


「バレちゃったか~えへへ」


 再び草薙が動いた。


 今度は右だ。

 斜めにサーベルを振り下ろす。


 スピードによって不可避となる一撃。

 かわすことなく、自分の剣で受け止める。


 速さは大きな武器になる。仮に一撃の威力がそこまでだったとしても、不可避の攻撃を何度も撃ち続ければ相手は屈するのだ。


 草薙の斬撃はさほど強くない。

 それこそ、グレイソンの方が威力は大きいように感じる。剣の動きも、剣聖と謳われた桐生(きりゅう)と普段から打ち合っている俺からすれば未熟なものだ。


 突破口が見えてくる。


(カウンターを狙うか)


 草薙の攻撃を跳ね返す。

 その勢いを利用して次の攻撃に繋げる。それがこの場合における最善。風圧には動じない相手だ。だったら剣と剣の衝撃で体勢を崩すしかない。


「オスカーくん、僕が思っていた以上に強いんだね~」


「幸い、実力を低く見積もられることには慣れている」


「確かにこれ、戦いたくない相手との手応えなんだけどー!」


 半泣き状態で喚く草薙に、ニヤッと笑いかける。


 速さ(スピード)で敵わないのであれば、素直に動かなければいい。


 堂々と攻撃が来るのを待ち、迎撃する。

 瞬発力は草薙よりも上だ。


「まあでも、おかげで神能(スキル)じゃんじゃん使えるねぃ」


(――神能(スキル)!?)


 これだけの速さを誇っておきながら、まだ神能(スキル)未使用だったのか……てっきりスピード強化の能力だと思っていた。


 次の一手に警戒する俺。


『――そこまでっす!』


 攻撃の構えを取った草薙と俺を止めたのは、黒髪リーゼントの男だった。


 酒場には三人。

 俺と草薙と、そして綾小路(あやのこうじ)ジャクソン。


 一次試験でアレクに続いて三位という好成績を残した逸材である。


「ややややばいなぁ……ここで君に乱入されると、僕勝ち目ないんですけど! せっかく人目につかないところに隠れてたのにぃ……」


 草薙が酒場にいたのって、ただ隠れていただけなのか。


「決勝トーナメントに行くのはオレっす。勝ち上がるからには、ここにいる二人にも精一杯感謝して戦うんで、そこんとこよろしくっす!」

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