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悪役令嬢♂〜彼は婚約破棄国外追放死亡の運命を回避しつつ、ヒロイン達へ復讐を目論む〜  作者: フオツグ
復讐編 あなたは絶世のファム・ファタール!

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更なる真実

「どういうことよ! ラヴィスマン!」


 レンコは床に縫い付けられたまま、ホール内に響くように叫ぶ。


「貴方の言う通りにしたら、アナスタシオス様が手に入るんじゃないの!?」


 ラヴィスマンは一連の騒動をホールの隅で静観していた。

 彼はやれやれとため息をつきながら、レンコに近づく。


「……何の話じゃ? 今までの話を聞いておったが……。そなたがアナスタシアに嫉妬し、陥れたらしいではないか。我に一体、何の関係があるというのじゃ?」

「はあ!?」


 レンコは信じられない、と言った顔でラヴィスマンを見る。


「言い逃れは出来ないよ、ラヴィ」


 アナスタシオスは冷たく言う。


「全て、ミステールから聞いている。君がレンコに協力していたこと」


 ラヴィスマンはため息混じりに言う。


「確かに、ミステールの坊やと【博愛の聖女】を引き合わせたのは我じゃ。彼と二人きりで話をしたいと申したから、そうしたに過ぎぬ」

「それ以外はしていないと?」

「他には……他国の者と仲良うしたいと申された故、多少助言はしたが……それが何の罪になる?」


 ラヴィスマンは首を傾げる。


「【博愛の聖女】は少し前まで、友人を作れずにおった。我は彼女を不憫に思い、協力をしただけじゃ。それがまさか──」


 ラヴィスマンはレンコをちらりと見る。

 レンコはラヴィスマンを睨みつけている。


「こんなことになるとはのう……」


 ラヴィスマンはとぼけた顔でそう言った。


「ふざけんなあっ! このジジイっ!」


 レンコはきーきーと叫びながら、ラヴィスマンを罵倒し始めた。

 アナスタシオスはレンコを無視して続ける。


「ラヴィ……正直に話してくれ。僕達は全てわかっている」


 アナスタシオスは真っ直ぐラヴィスマンを見つめる。

 すると、ラヴィスマンは眩しそうに目を細めた。


「嘘の証言をした者は皆《《聖国出身の者だった》》。レンコは君の協力を得ていたとしか考えられないんだよ」

「我は確かに聖国の出身じゃが……一国民が国民を動かせる力はないぞ」

「君が王族だったなら?」

「だとしても、じゃ。聖国の一王子に、国民を動かすことは出来ぬ」

「聖国は宗教色の強い国。教祖たる王の言うことは全て聞く──」


 アナスタシオスはラヴィスマンを指差した。


「──そうだろう? 聖国の《《王》》、ラヴィスマン・ホーリー・アガペー」


 ホール内にどよめく。


「王……だって!?」


 アデヤが目を見開いて、ラヴィスマンを見つめる。

 ラヴィスマンは微笑みを消し、じっとアナスタシオスの顔を見つめていた。


「た、確かに、私が聖国を調べたところ、現聖国王の名は、ラヴィスマン・ホーリー・アガペーでした……。シオ殿、その方が聖国王だと言うんですか!?」


 ゼニファーも何も聞かされていなかった。


「ゼニファーから、現聖国王の名前を聞いて、とても驚いたよ。ラヴィと同じ名前だったから」


 実際、聖国王の名を聞いて驚いたのはクロードである。

 何しろ、【キュリオシティラブ】のオープニングムービーで出てくるラヴィスマンの名前と、全く同じだったのだから。


「……何を言い出すのかと思えば」


 ラヴィスマンは嘲笑う。


「ファーストネームが同じじゃから同一人物じゃと?」

「ミドルネームまで同じなのはなかなか思い切るよね」

「我のミドルネームまで教えた覚えはないが」

「アナスタシアは知っていたようだけど?」


 ラヴィスマンは片手で顔を押さえ、アナスタシアの名前を呼ぶ。

 しかし、直ぐに気持ち切り替えて、顔を上げた。


「そもそも、聖国王がこれほど若い訳なかろう。父王は高齢じゃが、健在じゃ。王位継承もまだしておらん」

「そうだね。ゼニファーに調べて貰ったところ、現聖国王には《《子供すらいなかった》》よ。じゃあ、君は一体、何者なんだ?」


 ラヴィスマンは閉口した。

 アナスタシオスは知っている──自分一人だけの力では絶対に辿り着けなかった真相を。


「ラヴィ、君は……現聖国王の分身──『クローン』なんだろう?」


 ラヴィスマンの顔がこわばった。


「シオ殿、『クローン』とは一体……?」


 ゼニファーは聞きなれない単語に眉を顰めながらそう尋ねた。


「人間にはDNAっていう唯一無二の遺伝子があるんだ。それから細胞を培養して〝もう一人の自分〟を作り出す……それが『クローン』だよ」


──兄さん、凄い……。

 クロードは驚く。

──おれが言ったことを、まるで自分が知っていたかのように堂々と話している……!

 クロードは前世の記憶があるからと、クローン技術についてアナスタシオスに軽く説明した。

「でぃーえぬえー? いでんし? サイボーをバイヨー?」とアホみたいに全てを聞き返していたアナスタシオスが懐かしく思える。

 アナスタシオスは何とかセリフを頭に叩き込み、今に至る。


「なんと恐ろしい話だ……」


 アデヤが話を聞いて慄いている。


「それでその……『クローン』とやらは存在しているのか?」

「あったんだよね、シルフィト」


 アナスタシオスはクロードの横にいたシルフィトに顔を向けた。

 シルフィトに視線が集まると、彼は一歩前に出た。


「う、うん。賢国では密かにクローン技術の研究が進められていた」


 ホール内が再び騒めいた。

 クローンについての話が出て来たのは、シルフィトからだった。

 シルフィトはゼニファーから、【博愛の聖女】や聖国について、知っていることはないかと聞かれたという。

 そのとき、『クローン技術』のことを思い出した。


「クローンの研究は倫理的観点から禁止されて、とっくに打ち切られているんだ。研究資料は賢国の保管庫で、厳重に保管されていたんだけど……」


 シルフィトは少しだけ俯く。


「二十五年前、そのクローンの研究資料が、何者かによって、保管庫から盗まれてしまった」

「それがどうした?」


 ラヴィスマンは鼻で笑う。


「研究は途中で打ち切られたんじゃろう? なれば、そのクローンとやらの生成は、まだ確立していないということじゃ。我が聖国王のクローンだと言うのは、ちと無理があるのう」

「聖国は医療の国でもある。クローンの研究が賢国並みに進んでいてもおかしくはない。二つの国の研究結果を統合させ、聖国はクローン技術を完成させたんじゃないか」


 アナスタシオスは淡々と問い詰める。


「聖国王──君のオリジナルは自身のクローンの作り出した。そして、キュリオ学園に潜入させた」

「一体、何のためにそこまで……?」


 ゼニファーは浮かんだ疑問を口にする。


「……ラヴィ、君は僕に初恋の話をしてくれたね」


 アナスタシオスはそう問いかけた。

 ラヴィスマンは何も答えなず、ただ恨むような目でアナスタシオスを見ている。


「初恋を……もう一度、実らせるためだったんだろう?」


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