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第7話 再起動してください。

どうしてこうなった?

なぜかイケメン執事が仲間にしてほしそうにこっちを見ている。


『お帰りなさいませ。お嬢様』


お帰りじゃねえし、お嬢様でもねえし。


『おや、バイタルが優れませんね。男性ホルモンの比率が高くなっております。また筋肉増強剤を飲用し過ぎましたか?』


ちげえし。飲んでねえし。男性ホルモン高くて正常だっちゅーの。


『と言いますか、ついに男性化してしまいましたね。だからあれほど東プロイセン製のドーピング薬はおやめ下さいと注意いたしましたのに。爺は悲しいです。しくしく』


誰が爺だ。お前20代前半の外見のくせして。しかも”しくしく”口で言ってるし。乙女的には需要があるのか?


『ふむ。おふざけはこのくらいで。そろそろこの状態をご説明いただけませんかね。貴方はどこのどなたでお嬢様はどうなってしまったのかを。』


お前、気付いているじゃんか。

仕方がないので現状を説明する。多分お前が言うお嬢様はもうこの世にいないことも含め。


『なるほど。お嬢様はもういらっしゃらないのですね。では貴方様を新たな主としてこのDLC”僕執事”システム、全力でサポートさせていただきます。』


『では主様、新しい名前を付けてください。』


はぁ、執事ね。名前はセバスチャンか?


『はぁ?セバスチャン?そんな下品でくだらないシステム名と一緒にしないでください。』

『わたくしは、由緒正しき執事フレームワーク、スチュアートより作成されたDLCの”僕執事”システム。個体名”アレス”とお呼びください。』


スチュアートもセバスチャンも大して変わらねーよ。しかもアレスって個体名?

スチュアートどこ行った。しかも名前つけイベントだったはずなのに自分から名乗りやがった。


本当、ドウシテコウナッタ?


********************************


周囲の警戒をみさちゃんとあかりちゃんに任せて土魔法で囲んだ部屋の中にインベントリから取り出したソファーに横になる。

意識を魔装体のシステムに向けると自然と目の前にコマンドウィンドウが現れた。


 UーBOOT> RESTART


システムのリスタートの実行を意識してコマンドプロンプトに向けると自動でRESTARTコマンドが入力され視界が一旦暗転するがすぐにコマンドウィンドウが表示されU-BOOTが再起動する。


”ぴろりーん”

”CYBORG”


うはー、なんかスプラッシュ画面ビミョー。CYBORG OS?魔装体のOS”CYBORG”っていうのか。

そこはかとなくバッタモン臭が漂う名前だったが、そんな心配は杞憂に終わったらしくOS事態は無事に起動した。


『初期設定を開始してください。』

『性別を選んでください。』

『ネットワークアカウントを設定してください。』

『ネットーワークが見つかりません。スタンドアローンで継続します。』

『デフォルトの動作モードを選択してください。』

『1.一般人 2.一般兵 3.特務兵 4.達人』


なんか変な選択肢の入力を迫られたが、初期の選択項目の入力が終わっていよいよOS起動中となった。

よしよし。計画通りにOS起動できればこれで普通に歩いたり走ったり出来そうだ。


『保存されたユーザーコンフィギュレーションが見つかりました。保存されたユーザーコンフィギュレーションで設定を復旧します。』


え、まてまて。確か今のご時世、新規の魔装体は作れないのでリサイクルだって言っていたけど前任者の設定とかで復帰されるのはちょっとやだな。


『サブCPUモジュールが見つかりました。サブCPUモジュールを起動します。』

『サブCPUで待機中のDLC”僕執事”を起動します。』


”ぼくしつじー”


『お帰りなさいませ。お嬢様』


そうして冒頭の状況となったのだ。


********************************


仕方がないので、現状の説明とお互いの認識合わせを ほどほどに進めることにした。


こいつの知識と拡張メモリー上に残っていた情報を総合すると”お嬢様”は、企業連合体に属する傭兵だったようでこの魔装体も戦闘用の高性能な物を使っていたようだ。

そこに怪しげなサブCPUやら拡張メモリーやらを追加して魔改造して使っていたらしい。そこに東プロイセンのドーピング薬をキメて敵対していたユーラシア連邦軍相手にブイブイ言わせていたようだ。

そんな時に援助という名目で不意打ち的に紅旗民民共和国が参戦。1ユニットあたり$50と一番安いユニットであることを生かして大量の民兵を投入してきた。”戦いは数だよ。”とは良く言ったものだ。


『お嬢様らしいと言えばお嬢様らしい最後でしたね。漢前な方でしたから。』


『それではこれからは、貴方の事をお嬢様とおよびすれば?』


こいつ、いつかぐーで殴ってやる。


『私は仮想現実世界にVR投影されただけの情報体ですので物理は効きませんが。あー…プツン』


サブCPUごとシャットダウンしてやった。まったく無駄に時間を食ってしまった。せっかく起動したOSの機能やらOSの制御下での魔装体の実力とやらを確認しないといけないのに。


OSの制御下にある魔装体の性能はかなりの物だった。ごめんよ”CYBORG”OS。バッタモンとか言って。君は優秀だ。

今まで低消費モードにしても生身の体との出力差でギクシャクしていたのが嘘みたいにスムーズに出力調整出来て自然に歩けるようになっただけでなく前世の時の全力戦闘で使っていたくらいの強度で【身体強化】を掛けた状態まで魔装体の出力制御がシームレスに追従する。


再起動して全力を出せるようになった魔装体の動作を試しながら、調子に乗ってあちこち回っていたらいつの間にか廃墟となった隣町まで来ていた。


”ピギャー”


廃墟の陰から飛び出したホーンラビットが角を突き立ててきたが、慌てず左に受け流しつつグーで殴る。


”ピギャ”


うん。一撃でした。こっちの世界でも弱キャラだったようで。それに【索敵】で隠れていても丸分かりだったし。

廃墟の町を軽く一周する間に出てきたもう一匹のホーンラビットも殴って倒し両方とも血抜きをしておく。


一通りの身体機能は試すことが出来たので、先ほど倒した2匹のホーンラビットを持っていた棒の両端に括り付け天秤棒の様に担いで帰路に着く。せっかく担いできたクーラーボックスでは小さすぎてホーンラビットは入らなかったのでまったくの無駄になってしまった。シクシク。


ホーンラビットを担いでえっちらおっちら歩いて結界まで戻ってきたのだがここで問題が発生した。

今までは、俺の周りをふよふよと浮かびながら付いてきていたみさちゃんとあかりちゃんの二人が、中級精霊に進化したばかりの不安定な状態では周辺魔素濃度が低くなる魔素除けの結界の中に入りたく無いと言い出したのだ。


「主様、仕方がないので体が安定するまで暫くは街の外に居ることにします。でも主様と離れるのは悲しくなりますのでなるべく会いに来てくださいね。」


なぜか俺から魔素を供給するだけではだめで、周辺の魔素濃度が高い環境下で体が安定するまで暫く漂っている必要があるとのことだ。

やむを得ないが一旦離れ離れになる事になってしまった。寂しいので毎日外に通うことにしよう。

手を振って二人と別れ街の入り口に向かって歩いていく。せっかくOSが正常に起動して魔装体が十全にコントロールできるようになったのに心にぽっかり穴が開いたようで隙間風がぴゅーぴゅーである。


それでもとぼとぼと歩き続け、相変わらず人気のない3番出口のゲートをくぐり一人しかいない職員さんに戻ったことを伝える。まずは、荷物になって仕方がないので棒に括り付けてぶら下げているホーンラビットを売りに一旦街中のギルドに戻ることにした。

今でもインベントリを使えば手ぶらで移動できるのだが、この世界での魔法やスキルの取り扱いが今一つ把握できていない現状で無駄に手の内をさらして悪い人に目を付けられても面倒であるため仕方なく重たい荷物を担いでえっちらおっちらギルドまで戻ってきた。

まあ、帰りもバスだけど。ホーンラビットをぶら下げたままバスに乗ったら、周囲の同乗者の視線が刺さっていたのは気付かないふりをした。


「おうおう、チョロチョロ隠れまわっていれば良かったのにノコノコ出てきやがって。タクシー代払いやがれこ.ぞ.う.」


ギルドに入った途端、併設している酒場から千鳥足で誰か近寄ってきた。そういえば、居たなこいつ。赤ら顔でギルドに併設された酒場でご機嫌だったんだからそのままご機嫌で酔い潰れていればいいものを。

ん、なんか目線が俺じゃなくて前後にぶら下がっているホーンラビットに釘付けだな。


「えーと、少年そのぶら下げているホーンラビットはどうしたので?」


口調が急に改まりやがった。なんだこいつ、気持ち悪い。でもまあ行儀よく質問してきたからちゃんと答えてやろう。俺大人だし。


「こう、ぴよーって出てきたからグーで殴った。」


「グーで殴った?銃でなく?」


うん。その通りだ。銃なんて持ってないし そもそも銃では殴らんやろ。ていうかホーンラビットごときでわざわざ銃使うのか?

銃のことはあとでいいや。重たいのでさっさと売り払いたい。


「ギルドで買い取ってほしいんだけど どうすればいい?」


「あ、あぁ買い取りか。買い取りは向こう側のカウンターだな。です。」


「ありがとう。」


うん。ちゃんとありがとうが言える俺って大人だし。しかし言葉遣いが、おかしなことになっていてとても気持ちが悪い。

ガイアとそのパーティーメンバーと思われる野郎どもだけでなくギルドの酒場で飲んでいた面々の視線を集めながら買い取りカウンターにえっちらおっちら歩いていく。


「おう。聞いてたぜ。買い取りだな。そこにおいてくれ。」


買い取りカウンターにいたギルド職員のおっちゃんに言われた通りにホーンラビットを買い取りカウンターに置く。


「うん、傷もないし良い状態だな。これなら銀貨10枚で解体手数料と税金引いて銀貨8枚だな。それでいいか?」


銀貨8枚が高いのか安いのか判らないのでとりあえず頷いておく。しかし物扱いの俺らが何で税金払わないといけないのかね。理不尽だ。


「あいよ。じゃあこの引換券を持って受付に行けば換金できるから。毎度あり。」


受付で無事に銀貨8枚を受け取って帰路に就く。一日の売り上げとしては高い方なのかな?ジャンク屋の雑用も一日銀貨8枚だからホーンラビット2匹でジャンク屋の日給分だな。一日集中して狩りをすればもう何匹か確保できるだろう。ただ、ジャンク屋は発掘した物が売れるとインセンティブ出るからどっちが儲かるかは運しだいだな。

換金率の高い魔物を効率よく狩れる狩場があれば食料調達は安定して稼げそうだ。

問題は倒した魔物をどうやってハンターギルドまで運んでくるかなのだが。


限りあるジャンクの修理だけでなく魔物討伐でも問題なく食べていけそうな手ごたえを感じつつようやく第一目標のOSの起動も出来たことだし乗っ取りから始まった2度目の異世界転生だけどこれで一息付けそうだ。


そう思って機嫌よく帰路に就くころには、あの厄介そうな執事のことをきれいさっぱり忘れている俺だった。


お読みいただきありがとうございました。

本編は、これで第一章完となります。

閑話を2話程入れて第二章開始となります。


引き続きよろしくお願いいたします。


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