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第5話 出口騒動

あれから一か月ほどジャンク屋に通った。


結局廃車の残骸は手が出ないので手前までジャンクの山を崩したら次のヤードに移って5か所くらいを片付けた。もっとも奥に廃車が積まれたままなんだけどね。

これだけやって売れたのが、業務用の大型冷蔵庫と期限切れで廃棄されたっぽい発煙筒みたいなもの。この発煙筒モドキ、魔方陣が刻まれた魔道具だったんだけど魔改造して一発だけファイアーボールが打てる様にしてみた。

頑張れば何発か打てるようにもできたんだけど筐体の強度が怪しかったので単発の使い切りとした。暴発したとかクレーム付けられても困るし。

この使い捨てファイアーボール発射筒は一応武器の扱いでそこそこのお値段が付いた。まあ使い捨てなのでそこそこだったけど。

あとは、なぜか出てきた魔導バイク。これをこっそり錬金スキルを使って歪みを直したり結構手をかけてレストアしたら好事家の貴族の目に留まったらしく、いいお値段でのお買い上げとなったらしい。


これで何とかためたお金で買ったのが、謎金属を削りだして作った大ぶりなナイフとこれも謎のセラミックっぽい板を急所に貼り付けただけの服。

あとはそれっぽい靴と手袋になぜかマントを装備している。

メインの武器なんか、ジャンクから出てきたクッソ硬い棒である。

その結果、受付してくれたハンターギルドの受付嬢には白い目で見られたが、毛皮をなるべく傷つけずに狩りをするのに最適なんだけど?と言ったらため息をつかれた。周りのハンターは、ゲラゲラ笑っていたし。

肉を狩るなら普通はライフルっぽい魔導銃を使うんだそうだ。それで武器屋に剣や槍が無かったのか。まあいいけど。

それに背負子に着けたクーラーボックスと藪漕ぎ用の鉈モドキをぶら下げるので、いったいいつの時代の野蛮人だ?とギルド内は大うけだった。まあいいけど。


一通りの武器と防具を装備することで、ようやく街の周囲に張られている魔素を排除する結界の外側に出る許可が下りた。

ようやく出られる結界の外は、そこそこの魔素があることを期待している。

ちょっと浮かれている気持ちが伝わったのか一緒にいるみさちゃんもあかりちゃんも楽しそうだ。


ギルドの前から乗合バスに乗って結界出口に向かうのだが、ギルド内にいた何人かがニヤニヤしながら付いてきた。どうやら、面倒なことになりそうだ。


今回の目的は2つある。まあ一つは当然ハンターのお仕事である食肉の確保なのだが、今日のメインは魔装体の再起動だ。思い出してほしい。魔装体を起動したときのuーbootのエラーメッセージを。


『周辺魔素濃度が規定濃度に到達しておりません。現在の内蔵魔素コンバータの変換効率ではマナの供給が不足しOSの初期起動に失敗する可能性があります。』

『外部ジェネレータに接続するか周辺魔素濃度を上昇させ十分な魔素を供給するなどで起動に必要なマナの供給量を確保してください。』


そう。結界の外には、周辺魔素がそれなりの濃度で存在していて、その濃度がu-bootに規定された周辺魔素濃度の要求を満たすことが出来れば、OSまで立ち上がるのではないかと期待できるのだ。OSさえ起動してしまえばもっと色々できるようになることが期待できる。

少なくともパワーシーケンスがより高度に制御されるようになって、今よりだいぶ出力を絞ることで生体部分とのバランスが取れ、普段からちゃんと歩けるようになるのではないかと期待している。

まあ結界の外で再起動だからリスクも高いんだけどね。少なくともこんなお供を連れた状態ではやりたくない。どうすっかなー。


街からの出口は北門を1番として時計回りに2番、3番と番号が振られていて8番出口まである。1番出口からは北の街道が領都まで伸びている。

2番出口は1番出口のすぐ傍にある貴族様用の通用門がある。これも出た先で北の街道につながっている。

3番出口は2時の方向に有って昔は隣町につながっていたらしいが今は廃れて人気がないので怪しいことを試すには都合がよいのだが、当然ギルドから付いてきた連中にとっても都合が良いことになる。


予定通りに1番出口方面から来てギルド前を通って3番出口方面に抜けていく巡回バスに乗り込んだものの、仕方がないので目的にしていた不人気な3番出口があるバス停はスルーして次のハイリスク・ハイリターンな4番出口もスルー。

3つ目の初心者に人気の入門編の5番出口でバスを降りる。当然ベテランを気取った奴らもここで降りるので周囲の初心者から胡乱げな目で見られているが、彼らはまったく気にしていないようだ。


「ちっ」


「けっ」


「また初心者狩りかよ」


どうやら前科者でやらかしてることも知れ渡っているようだが、ここに通うレベルのハンターではそれ以上強くは出られないのだろうか。


「あの見かけねー顔の初心者丸出し装備の奴が今回のターゲットかよ。」


「可愛そうに…」


はい。初心者丸出し君です。とりあえず何も知らないふりをして5番出口の手続き窓口に進んでみましょう。


「登録証を提示してください。」


「はい、どうぞ。」


「Gランクハンターのユージレンさんですね。今回が初めての街外活動で間違いありませんか?」


「はい。」


「武器は…棒、ですか?」


「棒術を修めていますので。」


「…判りました。ええっと、あれは気付いていますか?」


「あれって、金魚のンコですかね。ギルドを出るところからあからさまにニヤニヤしながら付いてくるので正直困っています。」


「あー、ギルドから?絡まれたりした?」


「残念ながら今のところは装備を笑われたくらいですかね。100%絡まれるって判っているので、さっさと手を出してくれたほうがむしろ楽なんですけどね。」


「外に出た人目につかなくなった所でだろうね。向こうも受付に並んでるけどどうする?」


「窓口で時間稼げますかね?その隙に今日は出直すふりして別の出口にでも行ってみます。」


「一つ戻ったところは強いやつが近くで出るからあんまりお勧めできないんだけど。」


「二つ戻った不人気出口に行ってみようかと。ほとんど獲物がいないとかで 最初なんでまずは外の空気に触れるだけでいいかと思っているので丁度いいかと。」


うん。嘘は言っていない。今日は外の空気に触れるのが目的だし。


「あー、判った。じゃあ手続きしないでカード返すね。あとは、あいつらの足止めか。あそこの窓口担当は…キッカさんね。」


そういうとここの窓口担当のお兄さんは耳に着けていたインカムっぽい何かのスイッチを押した。


『あー業務連絡、キッカさん次のパーティ引き止めで』


「これで良しと。窓口でいちゃもん付けて引き止めるからその隙に戻ってね。」


「ありがとうございます?…いちゃもんですか。」


返却されたハンター証を受け取りながら礼を言う。どうやらここで撒けそうだ。


「あー、俺たちがなにしたって言うんだよ」


と、後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。


「貴方、Dランクのガルムさんね。チョーッと事情を聴きたいから事務所の中まで来てほしいんだけど。」


おやおや、連行ですね。お気の毒に。しかしDランクかよ。あんなベテラン感出していたのにDランクとはとんだ見掛け倒しだな。

キッカさんの受付で手間取っているうちに元の巡回バス乗り場の方にすたすた歩いていく。なんか後ろの方で騒いているがほっとけばよいだろう。丁度出発しようとしていたバスが出口巡回ではなく街中に戻るバスだったがそれに飛び乗った。これで街に戻るていに見えれば良いか。

5番出口でガルムに付けたマーキングが【探知】のスキルの範囲外に出て外れる前に二つ進んだバス停でさっさと下りた。バス停前に出ていた屋台で買った串焼きをかじりながら時刻表で次のバスを確認すると、1時間後のようだ。

勝ったなと思いつつ歩きで今来た道を5番出口の方に戻る。【探知】のスキルを使ってこの後あいつらがどこに向かうかを見極めてからこの後の行動を決めることにする。まったく迷惑な話だ。

暫くすると急にこっちに向かって移動し始めた。身体強化でも使いながら走っているのか?

不人気スポットである3番出口に向かう道への交差点近辺でバス通りから離れて様子をうかがう。もう間もなく通り過ぎるはずである。


おや、厳ついオッサンらがぎゅうぎゅうに詰まった状態で小型の自動車が走っていく。どうやらタクシーを使って追いかけているようだ。キッカさんの足止めは振り切ったのか。しかしタクシー代使ってまで追いかけてこんな貧乏そうな若造から元採れると思っているのかね。

念のため【隠蔽】に【気配遮断】を掛けた状態で【探知】の範囲外に彼らが出るまで待機した。


やれやれだぜ。


ようやく邪魔者が撒けたようなので浮かれてポーズをとりながら決め台詞を口にする。

やべぇ、もう帰りたくなってきた。


誰かに見られていないかキョロキョロしながら恥かしさに身もだえして 当初の目的地である不人気3番出口へ向かって【身体強化】を使って逃げるように走り出すのだった。


よろしくお願いします。

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