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第4話 退院

「なんか取り付かれているらしいわよ?」


「背後霊?背後霊なの?」


「水子らしいわよ。あんな草しか食べなさそうなとぼけた顔をしているくせにヤルことはやっていたのかしらね。」


霊感おばさんに肩に乗せたみさちゃんを見られて以来、外野がやや騒がしいがそんなこんなで充実した?リハビリ生活を送っていたのだが生身の肉体強化の方は一向に進まず、筋力のバランスは悪いままだ。

だが、だいぶ慣れてきてゆっくりなら杖なしでも歩けるようになったのでそろそろ退院ということになった。決して悪霊に取りつかれたヤバいやつを追い出しにかかったわけではない…はずである。


”あかり”ちゃん、あの電球の中で消えかかっていた光の精霊、と命名されたあの精霊は無事に元気を取り戻した。元々の性格なのか、自我が確立する前に封じられたのか分からないがだいぶのんびりとした性格の様で朝ごはん代わりに光属性の魔力を吸い込むと日中、日差しが出ている間は、


「ほへー」


「ふにゃー」


とか言いながら窓辺か外の植木の葉っぱの上で日向ぼっこをしながら漂って夕方になると晩御飯代わりにまた光の魔力を吸い込むと夜の間は霧散している。

霧散していると暗がりの中でも魔力を消費しないらしい。明るいと魔力を消費してしまうみさちゃんよりも燃費効率がよさそうだ。


ただ、あれから少し大変だった。調べてみたら部屋の灯りには旧文明時代のものが使われており、というかこの建物自体が旧魔法文明の遺産だった、その発光の原理は光精霊式の精霊灯のほかに魔石発光とその他謎の発光素材の大きく3種類があった。

大半は、魔物由来らしい謎の発光素材に魔力を供給すると光る有機ELタイプで手術室のあれみたいな光量が必要とか紫外線消毒用とか特殊な用途には魔石を使った魔道具が使われていた。

ただ、リハビリの散歩と称してこの病院内を隅から隅まで歩き回ってみたところ、あの地下一階の消えない電球などの様に、この病院の灯りの中にはそれなりの数の光精霊が閉じ込められていた。

みさちゃんにお願いしてリハビリ棟と入院病棟の光精霊式の電球は全部探してもらって解放したのだが、元の性格がのんびり屋さんであった”あかり”ちゃん以外は、閉じ込められていた事に対する怒りで我を忘れて激怒していたり、孤独感からか寂しさで狂気に飲まれていたりして電球から解放したとたんに暴れだし残っていた魔力を使い果たして文字通り霧散して消えてしまった。

その際に、激しく点滅したりラップ音が響き渡ったりしたので一時期七不思議が八不思議かと言われたのだが、みさちゃんもあかりちゃんも助け出しちゃったので彼女達が引き起こしていた話は消えてまた新たな七不思議として収束していくのではないかと思う。


退院となったのは良いのだが、魔装体となって市民でなくなったために死亡扱いで所持品などは処分されちゃっていたし元の家もとっくに解約されているので戻れない。

幸いにして、一応は事故の被害者ということで”退院したらあと知らねー”とはならず 落ち着き先として下級区で外観の汚いマンションの見た目に反して割と小奇麗なリフォーム済みの1LDKの部屋が用意されていた。

驚いたことに、当面の間は家賃は事故を起こした施設を管理していたお役所が持ってくれるらしい。住は満たされたのであとは”衣”と”食”である。だが食に関しては、ビミョーかもしれない。

マンションの向かいの雑居ビルの一階がどうやら麺処のようなのだが、何となく嗅いだことがある匂いがしている。何だよ謎にくラーメン醤油風味って。あと、カレーとシーフードがあるのか。なんか味が想像できるんだが、この世界の謎にくって本当に謎なんだよな。


出来ることなら怪しさ満点の謎にくは避けたい。そのためにも先立つものが必要ということで今日はハンターギルドに登録に来ている。テンプレ通りの新人いびりなどなく無事に登録を完了できた。なのでさっそく掲示板で受ける依頼を吟味しているのだが、所詮登録したてのGランク冒険者...ではなくハンターか。

Gランク・ハンターが受けられる依頼は、荷物運びやら掃除やらの街中で受けられるお使いクエストという名の肉体労働ばかりだ。

一つ上のFランク・クエストにあるのは、街を出たところでの獣相手の食料採取や過去の文明時代のお宝採取などの二択なのだが、武器も防具も無い状態では街の外の依頼は受けさせられないと採取依頼は却下された。

仕方がないのでお使い依頼の中からマシそうなものを選んでいる。


依頼 :ジャンクヤード整理の補助

内容 :ジャンクヤードを整理する作業の手伝い要員を募集、経験者優遇、特殊技能手当あり

場所 :9番街外周ヤード

依頼主:田中金属回収


うん、産廃業者の廃棄作業だな。ほぼ肉体労働だろうけど壊れかけの旧文明の機械に触れる機会が出来る。元のユージレン君の修理知識が役に立つかもしれないし怪しい魔道具や魔方陣に出会えるかもしれないので好奇心に負けてこれを受けてみることにした。


「はい。ジャンクヤード整理の補助依頼ですね。場所はここにあるように9番街の外周近辺になります。」


街の外と中を隔てる外壁沿いに位置するそこは、いわゆるスラムに当たる0番街に片足を突っ込んだような治安的にだいぶ怪しい場所だが街中なので受理された。危険度で言ったら ここいらの街の外周周辺よりも近場なら街の外の方が幾分安全な気もするのだが。

未だにバランスの悪い体を引きずって歩くと時間がかかりすぎるので街中を巡回してるバスに乗って近くまで行く。いまは無職なのでバス代もケチりたいのだが仕方がない。今日は面接で終わりとかだろうか。なるはやで現金収入が欲しいのだが。


「今日から働ける?ここの倉庫に積んであるジャンク品を使えそうなものともう使えなさそうなものとに分けてほしいんだけど。」


どうやら無事採用の様でほっとしています。今まで修理を請け負っていた話をしたのでジャンクの分類をした後、出来る範囲での修理作業の順番でヤードの中のジャンクの山を整理していくこととなった。

しかし元々は廃車処理工場だったのか奥の方には大きな車の残骸のようなものが積まれているんだけど。あんな大きなものどうやって引っ張り出せばいいんだよ。


まあ、あとのことはあとで考えればよいか。とりあえずは手前の物から。これは何ですかね。ラックマウントサーバー?こっちはコピー機か。オフィス用品ですかね。しかし使えるのやら使えないのやら、判断に困ります。仕方がないので自分で直せそうか直せないけど使えるかも?とこれは流石にゴミだろうの3パターンに分類した。

直せそうなものは魔石で出来た魔方陣魔法ベースの魔道具類かな。魔石を複数使って魔導回路を構成しているものも切れた配線を直せば動きそうなものは直せそうに入れている。こっちの集積魔導回路ベースのICやLSIっぽい電子機器みたいなものは多分無理。ただ、まだ魔力が通るから故障個所が特定出来て代わりの部品があればその部分の交換で直りそうではある。ただ直して動かせてもラックマウントサーバーとかなにに使うんだって話だよね。動いているシステムの交換部品用とかなら可能性はあるかも。あと残りはダメなやつ。割れていたり焦げていたりで物理的に破損している。そういうものは廃棄で。


「どうだ。進んでるか?」


夕方になってジャンク屋のおやじが覗きに来た。


「一応、直せそうなものと動きそうなものとダメそうなものに分けたんだけど。」


しかし徒労感が凄い。一日やってヤードの山が5メートルも崩せてないし。


「あー、丁寧すぎるぞ。もっとおおざっぱでいいんだよ。基準は、売れるか売れないかだな。」


なるほどね。せっかく手間をかけて直しても売れなければ無駄ってことで。しかし売れ筋が判らんな。


「高く売れるのは、武器だな。次に乗り物。あとは携行できる小物かな。まあどれもまともなものはここまで流れてこないけどな。」


そりゃそうだ。武器なんかそれっぽいものも含めて一つも見ていないぞ。


「じゃあ、奥の車のスクラップまでは大体廃棄ですかね。」


「ああ、そうだな。この辺のあんまり売れなさそうな小物は、直せるなら直して持って帰ってもいいぞ。」


うーん、使えそうなのは冷蔵の魔道具?クーラーボックスみたいな物くらいだけど今の部屋、エアコンも冷蔵庫も一通り完備されてたんだよな。使うとしたら今後街の外に肉を取りに行くときかな。それもアイテムボックスに入れれば必要ないんだけどこの世界のアイテムボックスの価値がまだ判らないからちょっと怖いんだよね。ということでクーラーボックスは採用で。


とりあえず本日はお試しで日給の銀貨8枚を貰う。今後は、日給銀貨8枚+出来高制で直したものが売れたら販売価格の10パーセントバックとなった。


こんな状況だが、この街で暮らしていけるのだろうか?


まだまだ、続けて行きますので応援よろしくお願いします。

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