第28話 このチャンスに面倒ごとをお金に換えてしまおう。
賞金は、パウエル大佐から渡されたのだが、引き渡しの場には当然ながら街の長であるキルクの姿はなかった。
本来なら街からの依頼の支払いなのだからキルク男爵様自ら手渡す位の事はすべきなのだろうが、本当に成功するとは思っていなかったらしく大盤振る舞いし過ぎてだいぶ懐に響いたらしい。
結果手に入ったのが壊れたMA2台分だけだが、収支的にはトントンかやや黒字になるらしい。そうでなかったらもっと支払いを渋っただろう。
意外だったのが、見届け人としてあのガイラ騎士伯が同席したことだ。
「さっきは済まなかったな。ついヒートアップしちまった。前回のスタンピードでMAを破損させて焦ってたんだろうな。」
賞金を渡し終わったパウエル大佐がさっさと引き上げてガイラ騎士伯と二人残された時はパウエル大佐は忙しいのかと思ったが、空気を読んだのかそうするように言われていたのか、こういう訳だったのね。
しかし、残ったガイラ騎士伯がまさか謝って来るとは思わなかったよ。むしろまた絡まれるかと思ってたからビックリした。意外といいやつだなこいつ。
そんなガイラ騎士伯にはおっちゃんがご褒美をあげよう。
「ガイラ騎士伯、MAの修理工場に興味ありますよね。」
そうひそひそと声を抑えて耳元でささやく。厳つい騎士伯とのカップリングなんて誰得だとか、思ってませんよ。
「なんだと?」
「できれば、この街の奴らに聞かれないところでお話しできないかと。」
「わ、わかった。街の奴らには秘密なのだな。ただ、エルカ様には、お伝えしたいのだが。」
「ああ、そうですね。エルカ様にご相談いただく分には問題ないかと。」
そう。この機会に、スタンピードの後始末で出向していた時にキヌタシティーの郊外で見つけたMAの地下修理工場跡を売り払うことにした。
エルカ様とこのガイラ騎士伯ならそうそう悪いようにはしないだろうと一応信用することにしたのだ。
先ほどの詫びとして熟成肉を出す高級なレストランで晩御飯を奢るということにして、この場はいったん解散とした。しかし昼に食べてたのに晩飯も肉食べるのかよ。
その日の晩に指定されたレストランに行ったら個室に通されたんだけど開けてビックリ、エルカ様も一緒だったよ。
「私がこの肉を食べられる機会を逃すわけないだろう。」
だそうだ。
個室に入って席に着いたタイミングで、キヌタシティーの郊外で見つけた地下倉庫の話を切り出す。倉庫の中にどんなものがあったかは、持ち出していたタブレット端末に倉庫の在庫の棚卸リストが入っていたのでそれを見せながら説明する。
「なんだこれは?」
リストの説明の前にタブレット端末に食いついちゃったよ。そういえば見たことないけどお貴族様でも持っていないの?
タブレットの説明を始めると話が先に進まなくなりそうなのだが、
「同じようなものが倉庫の中に何枚もありましたよ?」
と言ったら一旦落ち着いたようだ。ちょっと目玉が飛び出そうなくらい開いていたが。
そんなやり取りも交えつつリストの中身を確認してもらうのだが、そのリストにあるものが今の在庫と一致しているかは未確認なので保証できないとは言っておいた。
なので急遽ガイラ騎士伯と騎士伯分のMAの整備を担当している整備班長タキタの二人で教えてあげた地下修理工場の現場を確認することになり、翌日にはガイラ騎士伯にドナドナされてキヌタシティーまで軍用車で連れていかれたよ。とほほ。
地下倉庫の中身は整備班長のタキタに喜びの舞いを躍らせるくらいに充実していたようだ。エルカ様や騎士ガイラの乗っているMA用の保守部品だけでなく作業用のハンガーまでが揃っていたようだ。
「これで、ガイラのMAは直せるしエルカ様のMAもバッチリ新品同様に整備できそうだぜ。」
二人そろって各一台づつ確保した新品のタブレット端末にさっそく倉庫のストック品リスト情報をダウンロードして今は在庫の棚卸をしている。
「これだけの物が揃っているのはいいのだが揃い過ぎていて正直値段が付けられねぇ。」
棚卸したリストをもとに見積もって売却費用を産出してもらっているのだが、どうやらいろいろ揃い過ぎていて値がつけられないくらいの価値があるようだ。まあ、MA持っていない俺にとっては、そこまでの価値があるか疑問なのだが。
「いくらMAを持っていないと言ってもこれだけのパーツがそろっていればスクラッチで一台組みあがるのにな。」
「いやいや、個人でMA持ちなんて厄介ごとの匂いしかしないから。早く厄介払いして山吹色の輝きに変えちゃった方が安心だ。」
「ただ、これだけの品だ。金に換えても、額が額だからそれはそれで災いを招く恐れがあるだろう。」
「まあねぇ。ただ、近いうちにあの街を出ていくつもりだから大ぴらに広まらなければ何とかなるよ。きっと」
「ん、なんだ?お前ハンボーホの街を出ていくのか?」
「まあな。色々あってね。もうすでに家も引き払ったし。」
結局帰りの車の中で、スタンピードで駆り出されている内に家に別の男を連れ込まれた話をさせられたよ。タキタ班長には笑われるし最悪だ。ガイラには同情されてこちらへの当りが柔らかくなったのもなんかちょっと複雑だ。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えつつ帰ってきたのだが、地下倉庫の中身を確認したエルカ様も買い取りに乗り気な様子なのだがやはり問題になるのは、想定以上になる費用のようだ。
正直ボチボチ暮らしていけるならそこまでの大金はいらないんだけれど。
「エルカ様には、前回のスタンピードといい今回の紛争といい、だいぶ助けられているので日頃の感謝を込めてのお礼でよいのですが。」
「本音は?」
「や、あんなもの個人で持っていても脅されたり命を狙われたりする未来が見えるので体の良い厄介払いですね。」
「本音ぇー、もうちょっと隠せ。」
「へへ、スミマセン。」
しかし話し合いは平行線だ。でも本当、エルカ様に話を持って行って正解だったな。こっちはそこまでこの地下施設の価値を理解できていなかったのだから適当に値付けして巻き上げてしまえばいいものを。
「そういえば、おまえ街を出てくんだってな。」
いい加減、結論が見えない話し合いに飽きたのかタキタ班長がニヤニヤしながら微妙な話題を振ってきやがった。
「む、そうなのか?」
「ええ、まあ、ちょっとありまして。なので何処か辺鄙なところでもいいので暮らしやすそうな町にこじんまりとした家を土地付きで頂くでもいいですよ。」
「おいおい、土地付きの家だとあのモコ湖の別荘地の豪華な別荘でもお釣りが来るくらいにしないといけないんだぞ。」
モコ湖の別荘の事は知らないけど、多分、貴族の間では有名な高級リゾート地なのだろう。
「土地か。そうだな。ユージは遺跡の探索に興味があるみたいだし丁度いいだろう。私の領地の西に未探索の遺跡があるからその遺跡と周囲の土地の権利を下賜してやろう。これならもしかしたらこの地下倉庫以上の価値あるものが見るかるかもしれないしな。にやり」
にやりって何だよ。自分でにやりとかいう人初めて見たよ。何だ未開拓の遺跡ってヤベーやつじゃんか。絶対やべーやつじゃんか。
「ああ、あそこですか。なるほど、あそこならいいかもしれませんね。」
何処のことか分かったらしく、ガイラもタキタも揃ってニヤニヤしやがって。こっち見んなよ。
なんか漫然としているうちに話が進んでいって、結局エルカ様の領地の西にある未開拓の遺跡とその周辺の土地を頂けることになった。
まあ、未開の遺跡なんて面白そうだからそれはそれで、結果良しなんだけど。
キヌタシティーの地下倉庫の引き渡しに関する話し合いも済んだことで、紛争の状況に関する聞き取りも完了ということでようやく解放となった。
ハンボーホ領主のキルク男爵が、やれ”俺のMAがー”とか、まだブツブツ文句を言っていたらしいのだが、エルカ様が力で黙らせたらしい。エルカ様御一行は、もうこの件を終わりにして、さっさと地下倉庫の確保に向かうために明後日にはハンボーホの街を出てキヌタシティーに向かうらしい。
「エルカ様が一応釘を刺していたが、キルクの奴がまだ燻っているらしいからお前も我々がいる間にさっさと街から離れた方がいいだろう。下賜する遺跡の情報も渡さないとだからキヌタシティーまで一緒に乗っていくか?」
騎士ガイラがわざわざ俺が止まっている宿までやってきてキヌタシティーまで一緒に行こうと誘ってくれた。あの飛空母艦に乗せてくれるらしい。大変ありがたい。
「出発は明後日だ。明後日の朝にまた迎えに来るからそれまでに必要な準備をしておけよ。ああ、移動の時に支度金として幾ばくか用意した金を渡すから遺跡発掘の準備は、キヌタシティーに着いてからにして今日、明日はなるべくおとなしくしておいた方がいいかもな。」
そう言い残してガイラはいったん帰っていった。ああ、分かりましたよ。キルクの奴が何か仕掛けて来そうなのですね。はい。宿で大人しくしておきます。




