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第27話 お昼ご飯くらい、ゆっくり味わいながら食べたいよね。

「ようやく戻ってきたか。」


次の日、仕方がないので何度か通った軍司令部に出かけて受付で名前を告げるとアポなしにも関わらすにすぐにパウエル大佐のもとに通された。


「言っていたように隣の街でほとぼりを冷ましてましたので。」


最初の一言が夜遊びして朝帰りした息子を迎えたおやじのようであったのでついつい言い訳じみた事を返す。


「そこまで気を使わなくても大丈夫だろうに。」


「何処かで情報が洩れて逆恨みされた挙句に命を狙われる未来なんて嫌ですから。」


「うーむ、そんなものか。」


「まあ、情報が漏れないとは思っていませんがね。」


「む、それはこの軍司令部に内通者がいると言いたいのか?」


「さあ?」


秘密なんてどこからか漏れるものだ。このタイミングでこれだけここに出入りしていたらどうしたってこいつがやったんじゃね?となるから、バレないなんてことは無いだろう。

少なくとも裏の情報屋辺りにある程度の金を払えば手に入れられる程度の情報だろう。面倒なのでそこまで親切丁寧には説明しないけど。


「まあいい。それより当事者である君の口から直接説明が利きたいとエルカ様が待っていらっしゃる。今からすぐに会議の手配をするから悪いが少し時間をくれ。」


「えー、面倒ごとはごめんですよ。そもそも、そんなことにならないためにラッセン中尉を同行させたはずなのに。」


「そういうなよ。ラッセンの報告は既にしているんだがどうしてもって言ってきかないんだよ。」


パウエル大佐から中間管理職の悲哀が漂っている。元社畜としてはこういうの弱いんだよな。


「単にお肉を食べたいだけの言い訳ならよいんですが、勝手なことして貴重なMAを破壊しやがってとか難癖付けられませんよね?」


「まさか。そんな無茶は言わないお方だ。」


「ならいいんですけど。」


エルカ様とは、停泊していた飛空母艦の指揮官でしかも魔導鎧のパイロットだそうだ。指揮官なのに指揮しないで魔導鎧で出動しちゃって大丈夫なのか心配になるが、母艦の艦長は別にいるらしい。

お貴族様に関する説明を聞きながら待合室のようなところに案内された。


「今から説明のための会議のメンバーを召喚するからこの部屋で待っていてくれ。」


「どれくらい待たされそうですかね。昼飯抜きとか嫌なんですけど。」


朝、宿泊していた宿を出てまっすぐここに来たのでまだ午前10時過ぎといったところだが、今から急にお貴族様御一行のスケジュールを伺って時間調整しているとしたらいつ始まるか判らんしな。


「うむ、確認しないとだがほかにしないといけないことも無いしそんなに時間は取らせないよ。」


”……”


優雅な手つきで音を立てずにナイフとフォークで厚切りのステーキ肉を切る音が響く。え、急に何を言っているか判らないって。大丈夫、俺も分かっていないから。


「わざわざ報告のために出頭してもらったのだが、我々だけすまんな。今日は昼食の時位しか時間が取れなくて。」


いえいえ構いませんよ。昼食抜きは嫌だとは言ったが、同席しての食事はもっと嫌だ。気を使い過ぎてどうせ味わって食べることもできないだろうし。

それにケツカッチンなら昼食が終わるタイミングで、必ず解放されるはずだ。その後、ゆっくり昼食を取れれば、万事OKである。


こちらへと報告を促すと、もぐもぐと優雅に続きを食べ始めたので、最初の攻撃内容を一通り説明し終えるタイミングで丁度食べ終わったようで、これまた優雅にナプキンで口を拭くと質問タイムとなった。


「では、最初の攻撃でパイロット2名を射殺したと判断した理由を説明してほしいのだが。」


「はい。正確には、到着したMAから降車したパイロットと同じ服装をした2名を狙撃したとなります。パイロットと同じ服装の2名がMAの操縦席に座って何か操作をして居た状況を見ても間違いないかと。整備兵は作業着姿なので一目瞭然であり、整備員でもない一般兵ではMA自体にむやみに近寄ることも許されていないと思います。」


「うむ。その判断は、まあ間違いないだろう。では、パイロットを2名とも射殺したとなるとその後にわざわざMAを破壊する必要はなかったのではないか?」


「ならなぜ、その時点でMAへの攻撃を止めなかった。そうすれば無傷で一台、MAが手に入ったものを」


おおっと、報告していたエルカ様の隣りに座って肉を食べていたオッサンが騒ぎ出した。確かエルカ様の部下でMAのパイロットのガイラ騎士伯とか言ったかな。


「そうだ。少なくとも1台は無傷で我々が手に入れることが出来たものを無駄に破壊しおって。どうしてくれる。」


こっちは誰だっけ?ハンボーホの街の偉い人だったような。


「代わりのパイロットが居たら拙いかと思いまして。1台だけでも脅威ですし。なので確実に動かせない様に破壊しておかないとと思いまして。」


ああ、面倒くさい。もしパイロットを撃っただけだとなると、MAの撃墜記録にならないとか死亡が確認できないとかなんとか言って報奨金出さないだろう。


「そうだな。だが、脚部を破壊して倒すのはやりすぎだったのではないか?破壊するにしてもコックピット付近に留めておけば、その他のパーツ類の流用もできただろうに。」


ああ、そういえば部下の機体は、前回のスタンピードで腕が壊れちゃったって話だったか。でもヤリタ軍のMAだとそもそも戦闘用の機体でないしその部品だとあんたの機体には流用できないんじゃないかな。


「MAのパーツはそんなに簡単に取り換えが利くものなのでしょうか?スタンピード時に見たエルカ様のMAとはだいぶ形が違っていましたが。」


キヌタシティーに出張に行っていたときに写真やら動画やら街頭で、エルカ様の戦闘シーンがやたら流れていたからな。


「む。そうなのか?どうなんだ?」


横の二人がやいのやいのと文句を言っているのを横目で嫌そうに見ていたエルカ様が後ろに控えていた部下に聞いている。


「は。鹵獲して解析したヤリタ軍のMAですが、構造的に土木作業用の建機として発掘された機体に近いとの報告が上がっており、どうやら戦闘用ではなく工兵隊の作業用で使われていた機体の様で、残念ながらこちらで所有している機体への部品流用は出来ない模様です。」


「そう言うことらしい。まあ、諦めて次に期待するんだな。」


「は。エルカ様がそういうなら。」


どうやらエルカ様の鶴の一声で、ガイラは引いたらしい。


「だが、もう少しやりようがあったろうに。せっかくわが街でMAを所有するチャンスを潰しおって。貴様は命令違反で投獄してやる。」


うわー、酷いなこれ。あのギルド長と同じ匂いがする。


「軍からの依頼は、敵の撤退を促すことと魔導戦車やMAの撃墜であって敵機の鹵獲ではないし、そもそも俺は軍属でもないから命令違反にはならないと思いますよ。」


「うるさい。うるさい。無礼者が。人形のくせに私に口答えするな。」


おおっと。魔装体を人形呼ばわりしたぞこいつ。軍人さんには、魔装体多いのに大丈夫か?今の一言で室温が5℃ほどさがって、反対に緊張度がグッと高まったが。


まあ、お貴族様は生身にこだわりがあって義手・義足の様に体の一部でも魔装体化すると立場が弱くなって、体の一部でも換装すると地位をはく奪されるらしいから自然とそう言った差別意識が産まれるんだろうな。


「そこまでだ。キルク男爵。実際、MA2台とも倒したのにすぐに撤退には至らなかったのだろう。ならば中途半端に壊しただけだとそのまま進軍を続けてハンボーホの街にも被害が及んでいた可能性は高かろう。」


「しかし」


「くどいぞ。そもそも依頼通りに撃墜してきたのに命令違反の冤罪を被せるなどしたら、今後街からの依頼をハンター達が受けなくなってもよいのか?」


「ぐぬぬ」


何がぐぬぬだよ。まったく酷いトップだよな。

こんな奴が、街を収めているからハンターギルドもあんななのかねぇ。

まあ、エルカ様が一喝してくれたし、どうせこの街ともこれでおさらばするつもりだったから賞金さえ払ってもらえればどうでもいいけど。


ひと悶着あったが、その後の質問も無く時間も迫っていたので報告会は終了し無事解放となった。


報奨金も撤退の成功報酬金貨1000枚とMA2台分の1000枚にトラック1台分の計2100枚に加え狙撃報酬の2000枚を加えた4100枚が満額支払われた。まあ、4発目で撃った軽戦車分が入っていないけどあれは損傷を与えたかどうか怪しかったからな。


それに、倒れたMA2台と燃えたトラック1台はその場に放置されていたらしいが、あの軽戦車は、その場に止まることなく他の戦車と一緒に撤退したようだし仕方がないかと思う。


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