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第2話 憑依...解説回

憑依したらしい。

転生でも転移でもなく。他人の体を乗っ取った状態。


担当管理官のマリッサさんによると魔装体の換装手術中に1分ほど脳波が停止していたそうだ。

もしかしたらそのタイミングで元のユージレン君は亡くなりその後釜としてその体を俺の魂が乗っ取ってしまったのだろう。

判らないことは考えても判らないし、起こってしまったことは悔やんでも仕方がない。元の体の持ち主だったユージレン君には申し訳ないがこの新しい世界で生きていくことにさせてもらおう。


担当のマリッサさんによるとこの世界は元々魔法科学が発達した文明が栄えていたのだそうだ。

そんな進んだ魔法文明の世界だったが、国際的な投資会社の経営破綻が引き金となって発生した世界恐慌の影響で各企業が経営再建策と称して実施した大規模なリストラと当時の人気政治家主導で進められたアウトソーシングを加速する派遣労働者法による技術者のアウトソーシングが進むと、その後を追うように出てきた物言う株主による大手企業の効率化推進での社員総プロマネ化により実ワークの下請け・孫請けへの丸投げからの外部委託が日常化した結果、過度な要求仕様に耐えざるをえない開発現場の疲弊で新たな技術開発が停滞していき徐々に衰退へと移行していったのだそうだ。


そんな停滞した空気を払拭すべく発生した数百年前の抗争地帯での地域紛争がそこかしこで発生したことが止めとなり、一気に文明が後退し衰退の一途をたどっているポストアポカリプスな世界が、今のこの世界だった。

気が付くと暴走した戦闘魔導機や野生化した生物魔導兵器が世界中を闊歩し、人類は各地に点在する結界に守られた都市や町に閉じ込められて生きていた。

旧文明時代に作られたそれらの都市は、結界発生装置による都市結界の残滓で外部の魔素を遮断しているため周辺魔素を動力源としている魔導機械やら魔素濃度が薄い場所を嫌う魔獣や魔物から守られている。

だが、一歩町から足を踏み出せばそこは危険な魔導機械やら魔物やらが跋扈する死と隣り合わせの世界が広がっている。

人類はあちこちに点在する結界内に閉じ込められ滅亡を待つだけの存在となり下がっているのだ。

実際には人類側にも魔導機械や魔獣に対抗するための兵器が残っておりリスクはあるものの都市間の移動もある程度は可能となっているそうだ。


ここは旧文明時代の軍の基地の周辺に築かれた都市内にある軍病院の病院棟に隣接している魔装体換装センターで 前線で傷ついた怪我人が軍病院に担ぎ込まれるのだが、手足がなかったり中身が出ちゃっているなどの重傷者がこちらの魔装体換装センター送りとなり、半自動で魔力を使って動作する機械の体である魔装体への換装措置が取られていた施設だとマリッサさんが説明してくれた。


「今回ユージレンさんの魔装体率は57%となってます。今回の様に頭部を含む魔装体化の場合、一時的な記憶の混濁が往々にして発生しますので何も心配いりませんよ。それよりも魔装体化してしまったため今までの一級市民の地位は剥奪されます。また、魔装体化率が48%を越えましたのでユージレンさんのお立場は、人ではなく自律機械となります事ご了承ください。」


少しだけ残っているユージレンの記憶によれば、ユージレン君の今までの階級は一級市民、と言えば聞こえは良いが要するに平民だったのだが、魔装体と生身の比率が57%なので人ではなくモノとして扱われるのだそうだ。魔装体率が48%までは三級市民で市民税こそかかるが社会保障が受けられるらしい。内容はショボいけど。

で、48%を越えたらモノ扱いだ。まあ、お人形さんなので市民税かからなくなるけど。

あとは、生身の低所得者層からなる二級市民のほかになんと各都市を統治している特権階級の貴族がいるらしい。


今回ユージレン君の怪我は仕事中に発生した爆発事故が原因なので入院保障は出るらしいので退院するまでは保障されるが市民でなくなったため元の職場には戻れないらしい。困ったものだ。

で、どうするかと言えば魔装体で強化された力を使った肉体労働に従事するかスラムの住人に落ち着くかのどちらかもしくは両方だそうだ。

それでも軍事目的で発達した戦闘力の高い魔装体に換装されて かつその魔装体を制御するOSが正常に起動した場合ならば、即戦力として貴族に属する軍の魔装部隊に採用されることもあるそうだ。


まあ、OSの起動に失敗した俺には関係ない話なのだが。


そうなると一番まともそうなのが、魔装体の戦闘力を行かしてのハンターだそうでハンターギルドに登録して町の外での食料採取や旧文明のお宝発掘を生業とする仕事になる。冒険者だなこりゃ。

町の外は野生化した獣やら魔素で変化した魔獣やら暴走した旧文明の戦闘機械が跋扈している危険地帯だそうで そんな町の外に出て食肉用に獣を狩ったり旧文明の遺品を探したりするのがハンターのお仕事になる。

そんな物騒な世の中なのに町中は獣の心配をしなくてよいのは、町には結界が張られているので獣も魔獣も入れない。というか結界が残っているところに町が残っているのが実際の状況なのだが。

戦闘機械は基本じっとしているか決まった範囲をウロウロするだけなのであまり町を脅かすことは無いのだが、討伐に失敗したハンターを追いかけてきたりすることがある。戦闘機械や強い魔獣は結界を越えてくるので町の安全も絶対ではないがそんなことは滅多に起こらないので まあ町中はおおむね安全と言うことで。


「ユージレン様。以上が簡単ではありますが状況の説明となります。この後ですが、ユージレン様にはリハビリ病棟に移ったいただき、魔装体で日常生活を送れる様になり次第、退院となります。退院までのリハビリの期間は半年以内を見込んでおります。」


まあ、平たく言うと半年以内に出ていけ。退院後はハンターで稼いで生活しろってことらしい。やれやれ、せっかく文明が進んでそうな世界に生まれ変わったのに、また冒険者かよ。まあ良いけど。


そんなこんなでリハビリ初めて1ヶ月たったけどどうにも生身の体と魔装体とで力の差が大きすぎてバランスが上手く取れずヨタヨタと歩くだけでも精一杯だ。

今の体は、左半身が魔装体で右半身が生身で残っている状況なので魔装体と生身のバランスが取れないと歩くのも厳しい状況になる。

これが全身魔装体とかなら魔装体の制御に慣れるだけである程度自然な動作が出来るようになるのだが。


魔装体側の出力調整が強と並しか調整ができず、左半分の魔装体と比較して右半身の生身の体がひ弱すぎて出力バランスが取れないのが原因で これはOSを起動できなかった事の弊害らしい。

OSが動いていれば魔装体側でもっと滑らかな出力調整が出来て生身に合わせたレベルまで出力を絞れるらしい。仕方がないので最近は生身の方の出力を上げるための筋トレが主な日課となっているのだが、元々ユージレン君はインドア派らしくなかなか身につかない。こっそり魔法で生身の体に【身体強化】をかけてようやくバランスがとれるといった感じである。


今日もトレーニングルームで生身の部分の筋トレを終えたあと、リハビリ病棟から入院病棟と暇つぶしの散歩がてら徘徊するのがここ2-3日のマイブームになっている。その前は、食堂のメニュー端から端まで全部制覇だったんだけどデザートメニューだけが妙に多くて未だ継続中である。まさかデザートメニューに”くるみゆべし”があるとは思わなかったが。

そのおやつメニュー全制覇チャレンジ中に聞いたのだが、このディストピア感あふれる文明が衰退している異世界の病院にも幽霊騒動があるそうだ。

曰く、夜中誰もいない部屋の灯りがぼうっと明るくなるのが窓から見えるとか地下一階の廊下の突き当りにある誰もいないはずの休憩室に動く影であるとか。流石に学校の七不思議ではないので音楽室でピアノを弾くベートーベンの肖像画の話は無かったが。


しかし本当に幽霊いるのかね、この世界。


なんでも最近ホットな不思議現象は地下室に続く廊下の突き当りに漂う黒いもやもやした影を見たとか見ないとか。まさか、まっく〇く〇すけか?

ということでやってまいりました地下一階。お約束通りの霊安室になっている部屋の前を通り過ぎ、廊下の突き当りが、なぜか薄暗い休憩室になっている。こんなところ誰も使わんだろう。ちっとも休まらないぞ。


”ウオオオンー”


「ひいい」


自称休憩室にある自販機的な何かのコンプレッサーが急に動きだいたので思わず変な声が出てしまった。これでも前の世界でゾンビだのスケルトンだのレイスだのリッチだのとアンデットは一通り倒してきているのだがそれでもビビってしまうほど何か出てきそうな雰囲気である。

一方で自分の中のもと修理工のユージレン君の記憶が、この自販機の不調を訴えている。魔力を動力源とした魔導自販機のようなのだが、魔素を伝える配管の何処かから魔力が漏れてるために動作音が大きくなっており今にも壊れそうだというのだ。

なので【身体強化】を目にかけて魔力の流れが見えるようにしてみると確かに自販機の裏から魔素が流れ出している。


”にゅるん”


「!?」


自販機の裏から漏れ出してる魔力の周りに何かが漂っているようだ。やっぱり、〇っくろくろ〇けか?


”しゅるん”



おや?”幽霊の正体見たり枯れ尾花”とはよく言ったものだ。

正体が判ってしまえばなんてことはない。


しかしこの世界にもいるんだな闇の精霊。


お読みいただきありがとうございました。

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