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第18話 大発見

土砂で埋もれていた地下への階段は、【土魔法】と【錬金術】の組み合わせで壁際を固めながら【インベントリ】に土砂を詰め込んでどかすことで地下室入り口までを確保した。


地下室への入り口は横にスライドするタイプの扉だった。土砂で埋もれていた地下室の扉なので当然自動で開くとは思っていなかったがそもそも動力が無い手動のスライドドアだった。

ガタピシ言わせながら、何とか左右に扉をスライドさせギリギリ一人分の隙間をねじ開けると ところどころ崩れている通路が伸びているのだが、その奥は暗くてどうなっているかよく判らない。目に魔力を集めて【暗視】のスキルを発動してもよいんだけど。


「あかりちゃん、よろしく。」


「お任せください。主様。【ライト】」


せっかく光の精霊さんが仲間にいるんだからお願いするよね。


「あー、でも崩れるかもしれないから一人で奥に行かないようにね。」


「主様、精霊なので崩れても潰れませんし抜け出せますよ。」


そうだった。みさちゃんやあかりちゃんは精霊だからその気になれば壁抜けスポスポだし地下室で天井が崩落してもすり抜け出来ちゃうから生き埋めにはならないんだよな。


「...」


おっと、またあかりちゃんだけが活躍したからみさちゃんが微妙な感じだ。


「じゃ、じゃあ、みさちゃんは、一緒にこの部屋の中を調べてみようか?」


「...うん」


地下室の扉の正面は通路の先は結構広い大部屋になっている様なのだが、入ってすぐの通路だと思っていた左右は部屋になっていた。


「カシャ」


一瞬迷って、とりあえず左側の部屋の入り口の取っ手を回して入り口のドアを開ける。あかりちゃんが灯してくれた大部屋の灯りが届いていないようで部屋の中は薄暗く、結局【暗視】スキルを起動して中に入った。


事務所だったのだろうか。さほど広くない部屋の中には4つのスチールデスクの島が2つ並び、壁一面にはスチールラックで埋め尽くされていた。なんか中小企業の事務室みたいだな。スチールラックの上半分はガラスの扉が付いた棚でバインダーが詰め込まれている。下半分は3段の引き出しでまんま会社の事務所だ。


「FWW-233整備マニュアル、AA-4000シリーズ整備マニュアル、HH社汎用部品リスト、JISハンドブックミスリル鋼?...ここは何かの整備工場だったのかな?」


スチールラックに入れられているバインダーの背表紙に書かれた題目をななめ読みしていく。この世界の規格団体、JISだったんだ。

何となくだけど【異世界言語】スキルが働いている気がする。確かに文字が、街で見かけた共通語文字とは違っている。

バインダーは紙製っぽいので何となく触らずにおく。取り出して崩れちゃったら困るし。

なので、RPGの勇者よろしくラックの下半分の引き出しやらスチールデスクの袖机の引き出しやらを開けて中を漁ると奥の島の机の引き出しからB5サイズ位のガラス製の板みたいなものが出てきた。

こりゃーあれだろ。iP*d。裏っ返しても残念ながら果物のマークは無いけれど。


「えーっと、電源はどこだ?」


側面のスイッチやホームボタンも触ってみたが当然ウンスンである。うーん、仕方がない。アイツを召喚するか。


「セバスチャン、召喚」


『だから、セバスチャン言うな―』


「お、来た来た。」


そう、皆さんもうお忘れかもしれないですが、ダウンロード・コンテンツの”僕執事”ですね。


「セバス、これの使い方教えて」


『アレスだ。セバス言うなし。』


「まあまあ、硬いこと言うなよ。で、どうやって充電するの?」


『じゅうでんとは?』


「え、あー電気じゃないか。充魔?たぶん動力源が空っぽで動かないんだよ。」


『魔注の方法ですか?机の上にあるMuの上に載せておけばワイヤレスで魔注されませんか?』


「まちゅー?Mu?」


『魔素注入です。』


やっぱり魔力で動くのか。しかしMuってQiの親戚か?


「ここに載せても多分魔素供給されていないから充電...じゃなくてまちゅーされないぞ?」


『そうなりますと、人力でしょうか?』


「あー、やっぱそうなるか。とりあえず後回しだな。みさちゃん、次行こうか?」


「うん。」


なんか、デスクの下とかキャビネットの裏とかマニアックな所を探索していたみさちゃんに声をかける。おや、みさちゃんが右手と左手の上に何か浮かべている。


「見つけた。」


「お、やったな、みさちゃん。お宝発見だな。」


「ん。」


「え、預かっとけって?分かった。インベントリのみさちゃんの宝箱ディレクトリに入れておくね。」


どうやら机の下あたりに落ちていた当時の硬貨を見つけたようだ。さっき見つけたcPadと一緒にインベントリに放り込む。cPad?Cyborg OSのタブレット端末だからcPadだよ。今命名したんだよ。安易だって?いいじゃん。誰も知らないし。


ざっくり見回した事務室Aを切り上げて隣りの事務室Bと思わしき部屋に入る。

こちらの部屋は先ほどの事務室Aと違って薄ぼんやりと明るいのだが、どうやらこっちはロッカールームの様だ。

この部屋のロッカーも一通りRPGの勇者システムをしてみたが、どのロッカーも中身空っぽで何も収穫がなかった。一か所だけ天井の灯りが精霊灯だったので中の精霊を解放しておいた。少しだけ魔力を分けてあげたら自力で外に飛んで行っちゃった。まあ、何事もなく解放出来て良かった良かった。


「さて、じゃあ本命の大部屋見てみようか?」


「うー」


こっちの部屋は、ほんとに何もなかった。みさちゃんも何にも見つけられなかったみたいで不満気だ。


「あかりちゃん。お待たせ。何か面白そうなもの、あった?」


「ああ、主様。大きな人形が何体か置いてありました。」


「大きな人形?」


あかりちゃんに連れられて大部屋をのぞいてみて驚いた。入り口と左右の事務室A,Bは、中二階にあって大部屋は一段低くなっていて、天井まで20mくらいの高さがある。ホワイト*ースのカタパルトデッキな感じといえば伝わるだろうか?デッキ部分は正方形でそこそこ広いけど。しかもそこには魔導鎧が何体か立っていたり横たわっているじゃないか。多分あれ魔導鎧だよな。


どうやらここは魔導鎧の整備工場の様だ。一部が破壊されていたり、分解されたりした魔導鎧が何体かおかれているし事務室の下や奥の倉庫には腕やら足やらのアッセンブリパーツが保管されている。

で、一番奥がどうやら搬入口だったようなのだが、昇降用のエレベーターがあったであろう場所は残念ながら崩壊して土砂と瓦礫で埋められてしまっている。


『あれは、企業連邦の中型魔導鎧ですね。奥にある3台は、重駆逐鎧ですね。』


「おおう、アレンまだ起動していたのか。」


『アレスです。お嬢様。何度言えば分かるのですか。この頭はポンコツですか。ポンコツですね。まったく。』


「まったくだ。余計なDLCに容量を取られて物覚えが悪くなっているから口が悪い粗悪なDLCは削除しよう。そうしよう。」


『おおっと、残念ながら私はCバスのEMS領域に常駐していますからコンベンショナルメモリーには影響しませんよ。』


こいつ、わけわからない説明で俺を煙に巻こうとしていやがる。AIのくせにこざかしい。


しかし、破損しているとはいえ魔導鎧とその部品か。こりゃ、お貴族様案件だな。俺みたいな一般市民以下のお人形が欲張ると碌なことがないだろう。ここいらの部品一式には手を付けずに譲渡しよう。そうしよう。


大部屋の奥までぐるっと見て回ったが、やはり魔導鎧関連は個人で同行するには、ちょっと大げさすぎる気がするので見て回るだけだ。

おや、あの隅の方で瓦礫に押しつぶされそうになっているドローンみたいな機械がある。何だろう。


「アレク*、なにこれ、検索して」


『お嬢様、流石にそれはNGです。敵に回してはいけないところから怒られます。』


「じゃあ、お尻的な方は?」


『それはもっとまずいです。訴えられて破産します。』


うん、確かに拙いな。


「気を付けまーす。で、あれなに?」


キノコの傘のような飛行ユニットに真ん中から柄の様な機銃がぶら下がっている。まるでハスの名前が付けられた見た目テラフォーミング中の木星の衛星で使われていた飛行タイプの戦闘マシーンのようだ。


『あれは周辺警備用のAIドローンですね。初期はAIユニットの代わりに精霊を閉じ込めたユニットを使用して自立戦闘させようとして開発が進められていたのですが、精霊をコントロールすることが出来ずに制御系をAIにして警備用として限定的に使用されていました。』


うん。いいね。これなら持って行っちゃってもバレないかな?

土砂に押された時にドッキングユニットから落ちちゃって所々壊れちゃっていそうだけどこれなら直せるかな。ドッキングステーションを持って行くとそこだけすっぽりと抜けた感じになって流石に何かがあったのがバレそうだよな。だからドッキングステーションは、無くても大丈夫かな。


とりあえずそこにあった損傷の少なそうな4台分のドローンと細かい部品をインベントリに仕舞って破損がひどい2台は放置した。

うん、ここには最初から2台しかなかった。ドッキングユニットは8台分あるけど。どっか偵察中に崩落に巻き込まれちゃったに違いない。うん。後の2台も見当たらないし。


一通り見回してめぼしいものを回収、といってもタブレット1台とドローン4台、あとはみさちゃんの戦利品の硬貨が4枚(あれからもう2枚出てきた)を戦利品として撤収することにした。

きれいに片付けた入り口部分の土砂も一旦戻したあと、さも一人で頑張って掘りました的な状態に掘りなおしたあと、穴の入り口に蓋をして見つからない様に誤魔化しておく。んー、でもこれどうやって見つけたのかって突っ込まれたら言い訳できないな。

仕方がないので、土砂で埋もれている搬入用エレベータの所に人一人が通りそうな大きさで竪に穴を掘っておく。丁度地表部分の周囲に丈の高い草が生えているし、足元に空いている穴に気が付かずに落っこちたことにしよう。

で、落ちた穴からは登れなかったので反対側にあった扉の外を掘り進んで脱出したと。よし、完璧なアリバイ工作だな。


あとは、この場所の情報を折を見てお貴族様に売り込んで幾ばくかの報奨金を貰おう。うん、魔導鎧なんてただの雑魚ハンターには荷が重すぎる。


なんだかんだで時間がたっていたみたいで日が傾き始めている。さっさと帰って今日のノルマをハンターギルドに納品しないとだが、今帰ると丁度、受付が混む時間になりそうで少し憂鬱になりながらその日は帰路に就いた。


「ユージさん、本日の報酬、銀貨54枚と銅貨40枚になります。」


うん。今日は一日遊んでいたから報酬はイマイチだけど仕方がないね。


「あと、ハンボーホから電報が届いてます。」


おや、電報?なんじゃらほい。


『オカネオクレ、ミリエラ』


「...はぁー」


またか。先週も送ったんだけどな。ミリエラさんいつの間にやら活動的になったみたいで、良かったのか悪かったのか。

仕方がないので電報を渡してきた受付嬢のリサさんにお願いしてミリエラさんのカードに金貨10枚ほどを振り込んでもらう。

おかしいなー。たしか2か月分前払いで金貨60枚ほど渡してあったはずなのに全部使い込んだのか?

一体、何をやらかしたんだ、あの娘は。


キヌタシティーに来て丁度一か月になる。我々出向組の頑張りもあるが、現地ハンターも負けじと討伐数を増やし、お互い切磋琢磨した結果、周辺の雑魚魔物の数がだいぶ落ち着いてきて凡そスタンピート前の水準に戻りつつある。

こうなると、我々出向組もそろそろお役御免な雰囲気が出てくる。

そんなことを考えながら本日の戦利品を乗せた浮遊台車を引きつれてハンターギルドに帰ってきた。


「おう、ユージか。今日もご苦労さん。」


今日は、台車の上の戦利品があるのでギルド裏にある搬入口から入って受付と納品をする。


「おやっさん、ただいま。これ今日の分のオーク4頭とこっちはゴブリンの魔石7個ね。」


「おう、じゃあ納品登録するからギルドカードを」


「はい。よろしく。」


お約束通り、オークはお肉が取れるから丸ごと納品でゴブリンは素材として使えるものが無いので討伐証明用の魔石を納品となる。流石に右耳ではなかったのでそこは助かった。


「おし、オークが4頭、ゴブリンの魔石7個だな。いつも通りオークの状態は良いから一頭当たり銀貨20枚ってとこだな。全部引き取りでいいのか?」


「はい。それでお願いします。」


「ほれ、カードはいったん返すな。それじゃあ査定しておくから終わったら報酬はいつも通り受付で受け取ってくれ。」


「わかりました。」


ここキヌタシティーでは、ずっと宿屋暮らしだから自分で討伐したお肉を持ち帰って料理とかしないので解体含めて全部お任せだ。

渡されたギルドカードを受け取ったら奥の通路を通ってギルドの受付側で査定が終了したと呼び出されるまで一休みだな。

まあ、今日は受付が混む前に戻ってこられたので比較的早く呼び出された。


「ユージさん、本日もお疲れ様でした。まずは、ギルドカードをお預かりしますね。」


「はい。」


「本日の討伐数はゴブリンの魔石7個で銀貨49枚,オーク4頭になりますので銀貨80枚。手数料2割を引きましてこちらが討伐報酬、銀貨103枚と銅貨20枚になります。お支払いは現金にしますか?」


流石に銀貨100枚をジャラジャラしたくないが、端数の銀貨3枚と銅貨20枚だとちょっと心もとないかな。今、手持ちの現金どれくらいあったかな。まあ、この街もそこそこギルドカード払いが出来るからあんまり現金を持ち歩かなくても大丈夫なんだけど。


「あー、銀貨100枚分をカードにチャージで、端数分を現金で」


「では銀貨100枚分をチャージして、はいカードをお返ししますね。あと現金は、銀貨3枚と銅貨20枚ですね。ご確認ください。」


今日も切れ者受付嬢のリサさんが、てきぱきと支払処理をしてカードと現金を用意してくれる。


「あー、あと、ちょっと言いにくいのですが、ハンボーホからまた電報が届いてますよ。」


「アハハ、アリガトウゴザイマス?」


『オカネ20マイ、ミリエラ』


「...」


仕方が無いのでとりあえず金貨20枚をミリエラの口座に振り込んだ。ここ一月で金貨50枚か。こっちで稼いだ分が半分以上飛ぶ事になるが、仕方ないね。


「金貨20枚、オネガイシマス」


「承りました。」


リサさんが、なんか残念なものを見る目でこちらを見てくる。たまたまなのだが、ミリエラからのお金の無心が来るのが、リサさんが受け付け処理をしている時ばっかりだったんだよね。


「はい。まいどあり。」


「こちらこそ。あ、そうだ、ユージさん。ユージさんを含めた出向されているメンバーの皆さんにお伝えしたいことがありますので明日の朝9時までにギルドにお越しいただきたいのですが、大丈夫でしょうか?」


おや、何か連絡事項があるのかな?しかし出向組ご指定で集合してのお話ということは、いよいよ出向終了かな。


「大丈夫ですよ。明日の朝9時までのギルド集合ですね。」


「はい、ええっと、ユージさんは参加可能と。では明日9時にお待ちしております。」


「はいはい。じゃあまた明日ね。」


そう言ってギルドを後にする。やれやれ、ようやく最初の街ハンボーホに帰れるのか。まあ、こっちの世界で覚醒してからそれほど立っていないからあんまり家に帰る感じはしないのだが。


お読みいただきありがとうございました。

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