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第13話 ご指名入りました。

本日3話目になります。



次の朝、近所の喫茶店のモーニングで済ませると、食い扶持が増えて寒くなった懐を温めるべくお仕事を探しにギルドに向かったのだが、普段の喧騒とは違って朝っぱらから飲んだくれるハンター達でギルド併設の酒場が溢れていた。


「街の外でのハンター活動自粛?」


「はい。今この街に先日のスタンピードの鎮圧にいらしていた貴族様がいらっしゃっていてその警備の関係で武装したハンターに街の中だけでなく街の外もウロウロしてほしくないとのお達しでして。」


もう何度も同じ説明を繰り返しているんだろう。ややうんざりした雰囲気を醸し出しつつ慣れた感じでギルド職員が答えてくれた。それでこんなにハンター達が仕事にあぶれて朝から飲んだくれていたのか。


「幸い先日のスタンピード騒ぎで小金を稼いだハンター達が多いので今は大きな問題にはなっていないのですが、スタンピードで武器屋防具を壊してしまって修理に出したり買い替えたりして散財してしまった一部のハンターたちは困っているみたいです。そういった方に、なるべく街中の依頼を斡旋しているのですが、何分街中の仕事は安いかキツイか汚いのが多いので中々受けてもらえずにお互いに困った状態となってます。」


どうやらここで飲んだくれているのは、まだ懐に余裕があるマシなハンター達だったらしい。かくいう俺もまあ一週間や一か月くらいなら何とかなるが、かといってリストラされたお父さん宜しく家に帰って昼間っからゴロゴロするのもなぁ。もちろん独りだったらそれも有りなのだが、流石に昨日会ったばかりのお嬢さんの前で、昨日の今日で仕事にあぶれましたといって帰るのは気まずいし、何とか避けたいものだ。暇をつぶすための公園のベンチも無いし。


そんな訳で久しぶりに趣味と実益を兼ねてジャンク屋の片付け依頼を受けることにした。


「おお、丁度いいところに。実はおめーさんに指名依頼をしようかと思っていたところなんだよ。」


ギルドに出されていた片付け仕事の依頼書を持っていつものジャンク屋に着くと、普段は無愛想なジャンク屋のオヤジが、無駄にニコニコしながらモミ手でもしそうな勢いで話しかけてきた。正直不気味である。


「え、俺なんかに指名依頼? なーんか穏やかじゃないですね。」


「いや、なに、大したことじゃねえんだが、今この街にスタンピードの件でお貴族様が来ていることはおめーも知っているだろう? 実はこの街のお偉いさん経由でそのお貴族様から機械部品の調達依頼が出回っていてな。ここのリストにある型番の部材を互換品でもいいんで調達できないかって話だ。」


そう言ってお貴族様から依頼されている部品リストをこちらに向けて見せてきた。


「あー、どれもこれもが軍用に転換できるパーツばっかりですねって、何この値段」


リストにあったのはどれも軍用の火器管制装置や制御機構、通信機などに転用できるパーツばっかりでそこに記載されていた買い取り価格が何と市場価格の10倍と来ている。


「な。このジャンクが宝の山になる千載一遇のチャンス到来ってなもんだ。この山の中からリストにあるパーツを探しだすことさえできれば、一攫千金間違いなし。おめーを指名してまで何とかしたくなるだろう?どうだ、7:3で?」


「え、俺7割?やるやる。」


「逆だわ。お前が3だ。」


「馬鹿言え。結構種類があるがこれらをこのジャンクヤードから見つけるとなると一苦労どころかまず無理だろう?しかも見つかったとしても動くかどうか。ダメなら修理も必要になって来るし。そうなると4:6だな。」


「おいおい、そりゃーぼり過ぎだろ。6:4」


「ないな。修理するしない込みで一律5:5」


「ちっ、今日の所は仕方がないか。じゃあさっさと初めて俺のためにバンバン見つけてじゃんじゃん稼いでくれ」


なんか調子がいいこと言っているし俺だけ働いて分け前が5:5ってのもひどい話だが、ここのオーナーはこのオッサンだし、ここは俺も稼がせてもらうとしよう。不要もとい扶養家族も増えたことだし。


ここでチートを発揮するのは、皆さんもうすっかりお忘れかもしれませんが、DLCの”僕執事”システム。個体名”アレス”である。

元々の魔装体の持ち主の仕事であった傭兵仕事の中で潜入工作員としてお仕事として重要施設の破壊工作を行ったり一点突破で逃走したりするために各種機材を現地調達して”えーチーム”的に”ぎっくりどっきりメカ”を作るため各種ユニットやらモジュールやら規格ものの軍用システムに転用可能な民生品がどんなものに使われているかとか何が代わりに使えるかとかの互換品リストを網羅したデータベースをなぜか持っていて、型番をもとにガラクタの中から互換部品を見つけられるという優れものだった。


ここにもう一人のチートである”みさちゃん”を投入する。闇精霊のみさちゃんの能力をもってすればガラクタの山だろうと物理障壁だろうとスポスポである。なので視覚共有した状態で瓦礫の山の中に入り込んでもらうことで山と積まれたガラクタの奥の方まで見通せるのだ。


この二人を組み合わせることで、山と積まれたガラクタをかき分けることなく、部材リストから使えそうなパーツが含まれていそうなジャンクに当りを付けたら、みさちゃんに潜り込んでもらうことで、パーツがあるか?あれば状態はどんなか?をまるでファイバースコープを使うみたいな感覚で内部の様子を見て確認できちゃうわけだ。


『はあ、お嬢様ともあろうものがまさかの残飯あさりとは。ああ、嘆かわしい。』


ああ、イケメン風執事がなんか言っているぞ。


「おいおい、何言っているんだ。トレジャーハンドだろうが。どこからどう見ても歴史的に価値のあるオーパーツの発掘作業だろうが。」


『ななな、なんと。ただのジャンクあさりをまさかの発掘作業とは、何たる妄言。爺は、悲しい。シクシク』


またこいつシクシク言っているし。しかも無駄に3Dモデルの口から吹き出し出てるし。


「大体これお前に実装された機能だろう?だから、ジャンクあさりはお前の天職ってことだな。」


『ガーン』


また、ガーンて口で言っているよ。しかもセリフをバックに背負っているし。あ、落ちた。

品質向上のための不具合情報の送信許可メッセージが出たけど、これ何処に送るんだ?

今更アプデも入らんだろう。はい、”キャンセル”ポチっとな。



あれから2週間ほどジャンクヤード通いを続けているのだが、いうほど金にならなかった。

何故かって?単純な話、ジャンクの中にそれほどお宝が眠っていなかっただけだ。

みさちゃんとあかりちゃんにまで協力してもらってジャンクの中を漁りまくったんだけど街頭品リストにある部品がそれほど出てこなかった。それでもギリギリ100枚に到達しないくらいの金貨を手に入れることが出来た。お貴族様々である。


当然、働かずして同じだけの枚数の金貨をジャンク屋のおやじも手に入れているわけで、笑いが止まらないようだった。

もっとも、おやじの機嫌がいいお陰でギルドに出していた片付けの依頼にも気前よく依頼料を払ってくれたので、それも併せての小遣い稼ぎにはなった。

ただ、ほかのハンター達が仕事にあぶれて飲んだくれている中で毎日依頼料を稼いでいる俺のことを何人ものハンターが睨んでいた。うらやましいなら自分たちもやればいいのに。

特にガルムの奴がひどくて、視線でこちらを殺すくらいの勢いで睨んでいた。

どうやら手持ちの金が底をついたようで、泣く泣く下水道の清掃仕事を受けていたようで、周囲のハンターからは臭いのなんのと文句を言われるのを握りこぶしをプルプルさせながら耐えていた。

その横で涼しい顔して3倍近い依頼料を受け取っている俺を見れば、それはそんな風に殺気にまみれた視線で睨んできたくもなるってのも仕方がないと思うんだけど、正直臭いからこっち見ないでほしい。


まあ、この時の逆恨みで面倒ごとを押し付けられることをまだ知らなかったのだが。

この後あんなことになると、もし知っていたら2,3発はぶん殴っていただろうけど。



ありがとうございました。

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