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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第五章】Armageddon
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Mobius Cross_メビウスクロス55:最後の晩餐

ある時、

 ある王女が、かつての想い人と交した御守に亀裂が入るのを見た………


その時、

 ある少女が、曇風が運ぶ尋常ならざる血の匂いを感じた…


 ある女達が、慌て戻った従者から告知を受けた

Mobius Cross_メビウスクロス55:最後の晩餐






…死んでも諦めない…

…我ながら可笑しな祈りだと思う…

…死んだら等しく土に還るってのに…

…もし…

…もし生まれ変われるならば…








 もっと人が救える存在になりたい








!!









 敵の鎖を防ぎ 現れた!

マナ、

パーニャ、

ヒュオラ、

エリーにシェリー!


…ランスの目が一瞬子供のように煌めいた。

「…お前ら…!無事だったのか…!」


 マナがプンプンした。

「もうっ!人の心配ばっかりしないの!

人助けることばっかり考えて!ランスを助けたい人もいるんだよ!!」


 パーニャが自信たっぷりに応えた。

「…っよくわからないけど、恩人が悪いドラゴンに襲われてたら、普通助けるわ!」


 ヒュオラも気迫を込めて言った。

「蛇術館改め、蛇術組!助太刀します!」



「ありがとよ…!死ぬほど元気出たぜ…!

…メリーッ!!居るか!?」


 「…こ、こっちに居るわよ〜…!;」

…入口の外から情けないメリーの声が聞こえた!


「…よし…!!」

そう言ってアルムゲインを見るランスだが…

邪悪で狡猾な災厄の皇は、既に目を固く閉じていた…!

あれはまさか…


『…我の予知に一部の隙も無い…!』


…くっそ…!コイツはどこまで…


『貴様らに一縷の望みも無い…!』


鎖を暴れさせ、助け入った者達も振りほどかれる!


『もはや我に…一片の油断も無い…!!』


 アルムゲインが口を大きく開けると、喉奥から朱い輝きが膨れ上がっている…!

もうランスを取り込むことを諦め、ヲロチの能力で全てを焼き払う気だ…!


「火炎!?ヒュオラァ!なんとかしろ!」

エリーが警報を発するが…


「よせッ…!爆発するだけだ!」

シェリーが止める!




 …くそ…!!


俺がガリアなら…!どんな攻撃も拳で砕いてみせるのに…!


俺がスクードなら…!どんな攻撃も盾で防いでみせるのに…!


やめてくれ…そこまでしなくていい…!

やめてくれ…俺なんかに…!

やめてくれ…俺を…

買い被るのは…

もう…


「…やめてくれッ!!俺の命ならくれてやる!こいつらだけは…ッ!!」

ランスの叫びもかき消して、アルムゲインの口から放たれた大火炎は…



ゴオオオオオオオオッ!!!!!!!!



と、

教会の屋根を突き抜け、直天の黒い雲を突き破っていった…!






 アルムゲインが足を滑らせたのだ!

足元を走った、光る油によって…!


『ナニ!?!』




「弱気なこと言わないでくださいっ!!

世界を救って帰るんです!!」

「シャハネさん…!?


まさか…あんたがまた家を空けるなんて…」



「…戒を破ってすみません。

“あの子”に説き伏せられちゃいました…。


だからここで決めましょう…!

ランス様と…ランス様を慕い、残った者…


消えていった者…!


皆の力で、この災厄を…


(めっ)しますよ…!!」






 アルムゲインを縫うように趨る閃光の小十字と無限の鎖!


「!趨れ✝クロス✝!」



「!縛れ∞メビウス∞!」


ギ シ ィ …!!




 ルナ、見参!

メビウスクロスの鎖が、アルムゲインを縛り、礼拝堂の中心に架けた!


『カ…?!バカな…

何だ…コレは…!!

ガリアに…救世主に匹敵する我が力が…動けんだと…?!!』


「…メシア教会からここまでの柱…、それにこの魔神教会全ての柱を渡して造った鎖の無限牢獄…!

{✝∞メビウス∞封魔殿(パラデモニウム)∞✝}ッ…!!

お前はもう動けない!!」

ギリギリだけど!



『ク…、なァめェるゥなアアアアアアア…!!!!』


ギシギシンゴゴと教会全体が悲鳴を上げる…!



最中ランスが叫んだ!

「皆目え閉じろぉッ!!!」



 そしてランスは、前方に手を構えた。


先の“2本指を立てる”ポーズ。

その人差し指と中指を追うように、小指をふわりと立てた。


_…許叡解錠…_





___ドックン…!!!___






「…すまねえなギルト…こんな形になっちまって…

…ッ起きな!!…最後の晩餐だぜ!!」



 アルムゲインの中に溶け、肉体も精神も支配された中、

ギルトは魂で感じ取った。


それは…

生まれた時から…いや…

生まれる遙か前からランスの魂に課せられた…




 世界で最も純原な罪の匂い。




「「…ウゥオオオオオオオオッッ!!」」


咆哮と共に目を剥き暴走するギルト!



「今だッ!メリーーーッ!!!」


「ックアッ!!!」

 先輩後輩案内嬢によって抱え出され、目隠しを取り去ったメリーの眩い蛇眼光が、災厄の体とギルトを照らす…!



…ゴチ…

ガチ…ビキ…



ギルトの翼から、アルムゲインの体まで…徐々に石化していく…



バッ…

ダダダ…!

 直後、ランスは疲れも忘れて走り出した。アルムゲインの胸の前に掲げられた、彼女を目指して…


「ッルナベレッター!!」


臍ノ尾の口に手を突っ込み、がしりとルナベレッタの右手を掴み出す…!


強く引っ張る…!




 …しかし…彼女の体は同化したギルトの翼部分がほぼアルムゲインと溶け合っており抜き出すことができなかった…


「ぐ…そんな…!」

ランスがその悲劇を悟った瞬間、ルナベレッタが優しく微笑み…

「…悲しまないで…?」

そう言ってランスの頬を抱き寄せ、そっと唇を重ねた。

「…愛しておりました。さよなら…」



ランスが静かに涙を流しながらルナベレッタの頬を触り返すと…

その肌は、もう、石だった。


…自分のこととなるとすぐ諦めやがって…。

…わかってる…。

ルナベレッタの石化を解くことは、災厄の封印を解くことと同義。

いわば永遠の牢獄に囚われたようなもの…。

…それでもいつか…

…それでも安らかに…

我が…最愛の…




 ______ゾゾ…______




…その時、誰もが感じた…。


心の臓まで石化する直前。アルムゲインの体から…その邪悪な存在感だけが抜け堕ち…


ランスに宿るのを…。




 (『…クハハハ…。

まさか暴走した魔神の力が我の制御を上回るとは…


…元罪…


最初の人間でもないお前が…そんなモノを背負わされていようとは…故に救世主と云うわけだ…なんという皮肉…


素晴らしい。

完敗だ。


おかげで…

地上最強の、“アルムゲインという肉体”を失ってしまったよ…。

…なので…


 おめでとうランス。

お前は、この魔皇に選ばれた…!

現状最も強きその力…存分に振るわせてもらう…』)



「…これが…災厄の王の…正体…。

精神を乗っ取り…体を乗り換えていく…不死の…魔皇…」


(『フハハハハ…!そういうことだ。

仮にお前の力を討ち敗る者が現れても…、そいつを乗っ取ってthe endだ。

結局、救世主の活躍など無駄よ…。

如何なる者も我を…滅びを止めることなど不可能なのだ。


ッフハハハハハハハ

 「…絶望自慢は聞き飽きたぜ…魔皇」

ハ?』)


「…許叡封錠」

 ランスが、指3本を立てるポーズから、再び小指を折りたたみ発動する

許叡のシン。

それは自身の心に…、魂に鍵をかける力。

内からも外からも…神の如き力を持った悪魔ですら、それを暴くことはできない…。


「俺の中で眠れ。永遠に…」


邪悪な気配は閉じて消えた。


ランスは、2本指を立てた手を天に擡げ、皆に伝えた。



魔皇の敗北である。






 こうして世界は、大きな平和を手にした。


犠牲はあった。

それを尊いと感じるか、空しいと感じるか、悲しいと感じるかは其々だが…

少なくとも彼らは、悲しみだけに明け暮れて、日々を…その精神を贖罪に囚われ続けることはしない。


…そんなことをしたら“彼女”はすぐまた自分を責めてしまうから…。



 だから彼らは、今自分達に許された小さな平和を享受することに全力なのだ。


__それから幾らか後__

_メシア教会にて_

ランス、ルナ、マナ、シャハネの4人が晩餐を囲んでいた。


「うんまっ!♪この料理なに?!

ランス料理もできんの?!♪」


「薄切りのパンとチーズ重ねまくってミルクとソースかけて窯で焼いただけだ。

こんなの料理って言わねーよ。」


「んんっ♪ランス様は時々思いつきでお料理なさいますけど、どれも何故か美味しいんですよー!」


「僕…この料理が今まで出会ったのの中で1番かも…!」


「…でもこれさ、お肉入れたらもっと美味しいんじゃない?」


「バーカそんなことしたらアイツが食わなくなるだろーが。

ガーリックビネガー豆で我慢しろ。」


「あゴメン…。

…ベル…お腹空かせてないかなぁ…」


「石は腹減らねーだろ。

心配しなくてもああなったら俺達より不滅だよ…。」


「妾、ベルとまたお喋りしたいよぉ…」


「無理言ってんじゃねーよ。

死んで土になった人間も、

石になって死んだ人間も、

喋れねーの。皆そうだろ。

…だから生きてるうちに愛し合っとくんだよ…。」

 ランスは、しきりに言うようにしていた。

ルナベレッタはもう逝ったもんだと思え。

石になった人間は戻らないのだ。と…。

シャハネさんは、ただランスの考えを尊重していた…。


「…」

「…」


「あーそら見ろ!場がしみったれちまったじゃねーか!

マナの送別会も兼ねてんだから明るく喋れよ!」


「ぶー!やーだー!

会いたい会いたい会いたい!

喋りたい一緒にお風呂入りたい一緒に寝たい、さみしーさみしーさみしーいー!!」


悼んでいるのか燥いでいるのか…。

そんなマナに、呆れ笑いしながらルナは言った。

「まあまあマナ…今度一緒にベルさんに御参(会い)に行こうよ。」


ちなみにルナが一番泣きはらしていたのはナイショだ。



「…ぅん…

…ルナともまたお別れ…?

寂しいよぉ…

今晩一緒に寝よ…??」


「だ、ダメだよっ!///第一、夜のうちに出発するんでしょ?マホに怒られるよ!」

「コラコラっ!///

ここは男女ひとつ屋根の下の修道院なのですから、慎みを持って頂かないと…!

さ、もういい時間ですよ!

久しぶりに皆でお風呂に入りましょう?♪」


…慎みとは…。



 「じゃーねーまたね〜♪」

「グッバイマナ。愛してるぜ。」

「えへへ〜妾も〜♪」

「…。」

「…お前嫉妬(ジェラ)ってんのか…? (笑)」

「うぅ…申し訳ありませんっ!///修業が足りないっ…!」

「ウッフッフ♪ルナさんかわいい♡」



そうしてマナも故郷へ帰っていった。


 その夜、ふとランスは、ルナを修練場に呼び出した。


「なんだか懐かしい感じがしますね…

こうしてお相手してもらうのも…。」

しみじみと言うルナに対して、ランスは淡々と、アディメンドクロスを出現させ構えた。


…あれ…?聖鎗使うことなんてあったかな…?


「全力じゃ生温い…

殺す気で来い。

俺もそのつもりでいく…」


「え…?

な…なにを物騒な…」


ブヒュンッ


「!っっぶね…!」

凄まじい足薙ぎをギリギリ掠り傷で躱したルナ!


「お。よく避けたな。

普通に落とす気だったんだがな。」


 ルナは戸惑いを隠せないようだが、ランスは鎗と言葉で迫り続けた。

「おいいつまで戸惑ってやがる。覚悟決めてかかってこい。

お前をそんな腑抜けに育てた覚えはねえぞ。」


ルナは土まみれで転げまわりながら間一髪で躱すが、ランスの攻撃には確かな殺気が感じられた。


「…こ、こんなの訓練じゃありません…!

何故貴方と僕がこんな…命がけみたいな…!

まさか…魔皇に浸食されて…?!」


「ハハッ!!それも考えたんだけどよ…。

操られてる演技とか…さむ過ぎてダメだったわ (笑)」


「…ッならどうして…!?」


「だからこれは俺の意志だぜ。

今は冗談でも、いつこんな時が来るかわからない。

その前に、お前の命がけの本気を見ときたい。

俺の命を奪いに来い。

結果お前が死んだらその程度の男だったってことで諦める。

だがお前が勝つなら…

俺は、魔皇を連れたまま安心して去ることができる。」



「…!!」

ルナは必死に言い返そうとした。


しかし言葉は出てこなかった。

ランスの覚悟がひしひしと伝わってくるからだ。

例え納得できなくても…

 こたえねばならない…この覚悟には。


「…覚悟は決まったか…?

ならいつまで手持ち無沙汰してやがる。

全力で超えにきな…!」


ルナの両手が輝く!

「…メビウスクロス…!」



…そうだ。それでいい…

ランスは祈った。


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