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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第五章】Armageddon
64/66

Mobius Cross_メビウスクロス54.666:最後の災厄

Mobius Cross_メビウスクロス54.666:最後の災厄と



 ドスッ



 ルナベレッタの左腕が、ギルトの爪が、魔皇(アルムゲイン)の心臓に突き刺さる!




『ッガハッ…!!』



…おお…




……これは……





………流石に駄目だな………






…………もう…諦める他ない…………







………残念だ……まあ…









だが










『…対価としては良いか…!!』



グパヌッ






 …なんだ…

なんだこれは…

…いつの間にか


 腹の疵が治って …


…周囲の鎖も…麺すするみたいに…

ルナベレッタとギルトが…腹に喰われて…!


!!


「…ウオオオオオオオ!!!」

…動け俺の体ッ!!


 ランスは力を振り絞って走った。

ギルトの爪が、アルムゲインの腹に呑み込まれながらもヤツの胸を裂き心の臓を露わにしてくれた。

まだ救える筈だ…!

この聖鎗で…!!



 ビタッ…!!!



 グパッと臍ノ尾を胸の前で開くアルムゲイン。そこには…ルナベレッタの頭が見えていた。


「ッ!!…の…野郎…ッッ!!」


『馬鹿め。』



 …アルムゲインの背から翼が生える…。


灰色の肉瘤から鎖を垂らした憎ったらしい翼…

罪深いほどよく似合う…。

アルムゲインはその鎖を何本か胸に巻きつけ、鎖帷子のようにガードを成した。



___ドクン___


『…貴様が女を害せない奴でよかった。

“不死”の我が身とはいえ、貴様の聖鎗は食らうなと、“予知”で見たんだ。』



 ランスはガクリと膝をついた。


 アルムゲインの後ろ足も治っていく。

『…フゥ…それにしても残念だ…

ランス……隙を見て食らう……その時の為、“超再生”はとっておきたかった。。』


__ドクン__


 ギルトの…アルムゲインの翼が膨れ上がる。

『…なるほど読めたぞ。此れは罪を喰らう悪魔か。

我はこう見えて罪を感じる(タチ)だからな。…良いチカラだ。』




「…てめえ…どんだけ神を憎めばそれだけのチカラ…」


『神に愛された貴様には解らんさ…』


 アルムゲインの巨大な手がランスを包み閉じていく…



…ズン




 ランスは捕まらなかった!上に躱して聖鎗でアルムゲインの顎を穿き、即座に距離を取る!


『ッ貴様…!!

もういいだろ!絶望したんだろ!!』


 ランスは足腰さえおぼつかないが…

その背には翼が輝く…!

「…したと思ったんだけどな…

絶望くらいで諦めてたら救世主なんてやってられねーよ…

…てゆーか聖鎗頭に刺されてなんで生きてんだよ…」


『自慢ではないが我は脳が小さい。』


「絶望自慢は聞き飽きたぜッ!!

失うモノが無くなって…なお生きてる人間が、どれだけ強いか教えてやるよ…!!」




 そこからどのくらい闘っていただろう…。


精も根も尽き果てて、肉体も羽も傷つき続けた…


 それでもランスは闘った。


 魔皇は戸惑っていた。絶望に突き落として尚 足掻くこの救世主(おとこ)が、どんな最後の切り札を隠しているか警戒した。

神具を用いた秘奥義は?

命を代償にした力の覚醒は?

ところがランスが放つのは…、熟練された“人の技”…


泥臭く、

躱しざまに、受け流しざまに、

挑発し、不意打ち、逃げ打ち、騙し打ち…


だのに


鎖を弾き、指を落とし、尾を切りつけ、巨大な頭を幾度も穿いた。



 災厄の子でなかったなら………


アルムゲインでなかったなら………


…人の技でこの有様…


…恐るべき、神の子…。



 しかし形勢は変わらない。

むしろどんどん傾いていく。自然な方へ。強大な闇が、小さな光を覆っていくように。


 それでも消えない一点の光に業を煮やしたか、魔皇は問うた。

『何故そこまで戦える…』


絞り出すようにランスは答えた。

「…てめえ…ぶっ殺す…為だよ」


『我を倒した先に何がある…』


「…結構平和に…なんだろ。バレてんだよ…災厄の出血大サービス野郎が」


『故に負けない。

…どの道惨めに滅びる…』


「…は…人類ナメんなよ?」


『貴様は識っているだろう…』


「…てめえ…知らねえのか? (笑) 予知なんて…アテにならねえんだぜ…?」


『まさか気づかぬ貴様ではないだろう? 仮に貴様が勝利して人類が繁栄したとしても、人類が楽園に辿り着く事などない…貴様が理想を実現したとしても、貴様の望む未来は無い。貴様という存在は無駄…寧ろ邪魔だ…』


「…チッ……てめえマジで…ムカつくな」


『苛立つのは図星を突かれているからだ…』


「…さすが災厄皇…初めてかもしれねぇ…滅茶苦茶キライだわ」


『なら我の方が寛大だな。我は貴様が嫌いではない…』


「……まぁ変な話、唯一無二の…仲かもな……俺と真っ向から否定し合う奴なんて_」



 そしてランスが、悟ったように問いをもらす。

「…なぁ…一つ…答えろ…

てめえは……何だ…?」



…救世主が何を今更…

『神を憎む者…奴が造った全てを破壊する存在…。

運命に聞けばわかるだろう』


「…その雑な答は識ってるよ…

…わからねえんだ…何でてめえだけ…そんなに…」



『フハハ! …冥土の土産に……_

力も、邪悪も…是が非でも滅ぼす為、此処に在るのだろうよ。』

確信した勝利に弛みかけた口を引き締め直し、魔皇はそう答えた。

最後の救世主にだけは、一切の油断が命取りであると予感が告げるのだ。

『お喋りは終わりだ。諦めて食われろ』


 再び巨大な鎖が2本、ランスを捕えようと襲いかかった。



「…イヤだね。」

 答えると同時に、ランスは正面からの鎖を流し受け、背後からの鎖を防いで反動でアルムゲインへと飛んだ。大顎の噛みつきを力一杯の羽ばたきで躱しざまに鼻に一撃。反動で斜め下に飛び、跳ね返りざまに足の指を斬り付けてまた距離を取る。

まだ諦めていない…。


…下手糞。捕まえることに関しちゃアイツの方がまだ上手い…などと皮肉を思いながら。


しかし翼も酷使が過ぎた。少し休ませるついでに羽ばたきを止め、落下するついでに鎖を躱して見事着地(床を転がって不時着)した。


頭を穿いて死なない相手にこんな反撃をして何の意味があるのか…

哀れにすら映る救世主の姿。

誰も居ないが、もし見ていたら誰もが思うだろう_…もういい…_と。



『…何故…どうやったらそこまで足掻ける…』


「…知るか…俺に訊くな…

俺の魂か…運命にでも聞いてみてくれ…」


『もういいだろ…

最後の慈悲だ…この女と共に、我の中で眠りにつけ…救世主…。』


「…イヤだね。

ベルは…俺が…幸せにする…

そして…

…一緒の土に…還るんだ…

てめえを倒し…平和になった世界で…」


 ボロボロになっても…勝敗が決しても…ランスの目と鎗の輝きだけは失せることがなかった。



__ドクン…__


『……負けだ…。

流石の我も、精神だけはお前に勝っている自信が無い…。

…敬意を表して、踊り食いを諦めよう…。』

 アルムゲインは羽の鎖の先についた爪でランスを狙う。


胸に巻き付けた1本を残した他7本。

出せる全てを、ランスを穿くために構える…



 『憶えておこう。お前という男がいたことを。』




 「…やめろ…。

てめえのエデンになんか…


…即抜けてやる…」




 『さらば救世主』


to be continue




never give up

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