Mobius Cross_メビウスクロス53.666:決戦へ
Mobius Cross_メビウスクロス53.666:決戦へ
二人の救世主を前に、災厄の皇アルムゲインが言った。
『人間が世界を平和になど出来るわけがないだろう。する必要すら無い…』
ボゴゴンッ!!
ガリアとスクードが消えた!それほどのスピードで移動し、アルムゲインを左右から挟み打つ!
しかしアルムゲインの、爬虫+猛禽の眼は、それを見切る動体視力を持ち、俊敏なジャンプでこれを躱した!
「さっきから聞いてりゃ…!」
スクードの盾を台にしてガリアが跳ぶ!
「貴様、人間をナメ過ぎだぞ…!」
ガリアが拳を放つ!
それを鶏冠の盾で受けるアルムゲイン!絶望的な強度だがミシッと手応えがある!
さらに、負傷した手を気にせずラッシュで畳み掛けるガリア!
「貴様にはわかるまい!人間の持つ力も!愛も!信じぬく強さもッ!」
地面に叩きつけられるアルムゲイン!
「…まあ…後半二つは俺の苦手分野だがな。」
『…ックハハ!同時に非力で!憎み!疑う!貴様は知っているのではないか?』
アルムゲインは体勢を立て直すとガリアに向かって仕返しとばかりに顎、腕でラッシュを返した!そして尾のハンマーをくらわせふき飛ばす!
ザザザザーッと地に両足を突き立て踏ん張るガリア。
バコォンッ!とアルムゲインを盾で殴り弾き飛ばすスクード!
「ナメるなよ俺を?ガリアを!」
弾き飛ばされたアルムゲインを今度はガリアが殴り飛ばす!
「わかった上で成し遂げられると言っている!平和を!」
『グッ…!愚かな…』
…成程強い…何が人間だ…これではまるで…_
鶏冠がビキビキと悲鳴を上げ…
バキャァンッ!!
スクードの打ち返しで鶏冠が砕ける!
さらに殴り返すガリア!
『楽園に焦がれて地獄に堕ちろ!』
ふっ飛んできたアルムゲインは瞬時に首を翻し、ガリアの腕に巨大な顎で食らいつく!
ガリアを持ち上げ、ゴリゴリとその腕を噛み潰す…!
「ッ…スクード!!!」
ガリアはその瞬間、服の内側に縫い付けた小袋の中から何かを取り出す。
それは
神石の欠片
キカアアアアアーーーーーッッ!!!!!
音がする程の光!!
能力の強さに応じて光を生ずる神石の作用により、ガリアの肉体から放たれるその轟光がアルムゲインの瞳孔を穿いた!
『グヌゥァァァーーッ!!!』
グギンッ!
さらにガリアは、アルムゲインの歯を横から殴って砕き、自身の片腕を犠牲にしながらも地に降り立った!
次の一撃に全てをかける…!!相手の視力が回復するその前に……!
グパヌッ
予め光を防いでいたスクードは、光が止むと同時に目を開けた。ガリアと渾身の一撃を合わせるために。
しかし…
そこにガリアの姿は無かった…。
「な…!?嘘だろ?ガリア…」
有るのは、腹から出した第二の尾をグプグプとしまい込む巨獣の姿のみ…
『クアアア〜〜ッ…!!!!』
アルムゲインの体が…筋肉がさらに膨張する…!!
『馬鹿め…!力の救世主が策に溺れたなっ!!』
スクードは戸惑いながらも即座に距離を取る。が…
…神石は切り札だった…紛れも無い。奴の目は確かに潰れた…!だが…
『…クク、解らんだろ?我より無知な救世主よ。
我は視覚以外の感覚を用意していたのだ。
おかげで欲しかった救世主の力を手に入れることができた…。
次は貴様だ…!』
「フーゥ…!こりゃマズイな…!」
流石に洒落にならない状況。
ガリアに匹敵するパワーを持つ魔獣に、ガリアのパワーが上乗せされた…?そんなのありか。
逆にジェミンアイギスなら…一握勝てる可能性がある…
が、今は、いけるかもだとか弔い合戦だとかそういう時じゃない…
ここで冷静さを欠いたら世界が終わる自信がある。
ランスが来るまでは…逃げ回ってでも自重しなければ…
あえて敵愾心を顔に貼り付けて思考するスクードに、アルムゲインは綽々と語りかけた。
『…どうした?盾の救世主。貴様なら、そうだな…逃げか…?時間稼ぎか?食われないよう立ち回る気だな…??
そうだなぁ…クハハ!…貴様は冷静だ…どうしようか…?フハハ…!
…冥土の土産に教えてやる…
我の能力は熱感知…!
目が眩む今でも、周囲の状況が手に取るようにわかる…。
貴様の青ざめた顔も…
死角に隠れたつもりの…逃げ遅れた民衆の影も…!!』
「何…?!」
『さて、女…子供…どっちにしようか?
…救世主スクードなら…女だな…!!』
アルムゲインが瓦礫と化した商店めがけて走っていく…!
「んのヤロッ!!!」
スクードは即座に全速力で追う!
アルムゲインは前方の瓦礫に向けて臍ノ尾を伸ばす! 女を喰らう…いや、女を捕らえようとでもいうのか! さらに後方のスクードに向けてはハンマーの尾を振るう!
地面に当たればどこまで消し飛ぶか…その分、ジェミンアイギスで迎え撃てば相当な威力が反射されるだろう…だがこの狡猾な皇が、そんな下手を打つとは思えない。
何より…
それでは女を救うことはできない…!
スクードは尾槌の一撃を斜め後ろに弾いき、衝撃を逃がす。アルムゲインの尾は引っ張られたように軋み、踵はザザンと地に食い込みブレーキがかかる。スクードはさらにその尾を脇に掴み取って思いっきり引っ張った!
しかしアルムゲインの力は凄まじく、臍ノ尾も伸縮性に優れた網のようなもの…バクンッと瓦礫ごと女を飲み込んでしまった_
_かに思われたその時!
「イ、イヤアアーーッ!!」
ザクッ!
『…ヌッ!?』
なんの奇跡か臍ノ尾はギリッギリの所で届かず、女は手に持っていた薪割り用の斧で切りつけた…!
「あ、あぶな!!エリー様との訓練(?)が活きたわ…?!」
バッゴォーン!!!とジェミンアイギスで殴りつけ、アルムゲインを遠ざけるスクード!
「…先輩ちゃん?!何故ここに…!」
蛇術館案内嬢の一人がそこに居た。
「ご、ごめんなさい…!貴方の声が聞こえて…逃げなきゃって思うのに私…!」
「フ嬉っしいねッ!でも逃げな!足…速いだろう?
あんたが無事で良かったよ…。」
「…。どうか…どうかどうかご無事で…!!」
先輩案内嬢は素晴らしい俊足で逃げていった…。
「よお!災厄皇さんよ!女を見る目あるねぇ!俺と趣味が合いそうだっ!
しかもその腹の口…他と比べて随分ヤワみたいじゃねえの…!」
『ク…ククク…弱点でも暴いたつもりか…?』
「ああ!十分だね!か弱い女の子にしてやられるなんざ、あんたにゃお似合いだぜ!」
『フハハ!強がりはよせ…。
弱点がバレたのはどちらなのか…教えてやる!』
アルムゲインはいきなり尾のハンマーを地面に打ち込んだ!
凄まじい衝撃に大地が揺れ、地割れが起こる!
その烈断に、先輩案内嬢が飲み込まれそうになる…!
「!?しつこい男は、嫌われるぜッ…!!」
ドンッとスクードが超跳躍!先輩案内嬢を抱き掬う。
…しかしその、空中、両手が塞がった状態を待っていたのだ…
邪悪な知性が、その状況を作り出すことに成功してしまった。
臍ノ尾を最大まで広げ、呑み込もうと飛んでくる…
「ケガしませんように…。」
スクードはそう呟いて、先輩案内嬢を放り投げた…。
…できるだけ平地に…地面と平行になるように…でも…当たりどころ次第だな…
結局…大事な人も自分自身も守れねーってか…?
そりゃねーぜ…。
そう思いながらスクードは、臍ノ尾に覆われてしまった。
救世主の力を持ってしても、抜け出すことは叶いそうにない…。
次第に、意識まで分解されていくような…。
しかし、さっきつけられたほんの僅かな傷…それが一瞬、神をも逃さぬ臍ノ尾の蠕動運動を鈍らせた…
「…潮時だな…!…ランス…
あばよ…ッ!!」
スクードは力を振り絞って、ジェミンアイギス同士を打ち付けた……!!
to be continued
 




