Mobius Cross_メビウスクロス52.666: 子
Mobius Cross_メビウスクロス52.666:
災厄の子
魔物の母エティダナが懐妊を告げて数週間後、真夜中の蛇術館。
「マザー食欲戻ったね〜。お腹もパンパン。
…まだ産まないの?」
ヒュオラは古い食器を下げながら、そうマザー·エティダナに訊いた。
【焦らないのォ〜♪こういうのは呼吸が大事なのよォ〜??
赤ちゃんと私の、初めての共同作業なんだからァ〜♪】
「…産卵ってそうゆうもの…??」
【さあねェ〜??わかんな〜い♡】
…今まで何匹も産んできてる筈なのに…まったく…
ヒュオラは呆れて母の間をあとにした。
…
【ウフフ…赤ちゃんは本当に食いしん坊ねェ〜…??
あなたは、どんな災厄に育つのかしら…?】
『災厄の子』
母の間に謎の声が響いた。
エティダナは驚いて辺りを見渡すが、誰も居ない。
『…生まれてから災厄になるのではない…
生まれる時には…いや…
生まれる遙か前から…我は災厄の子。
きっとずっと探していたんだ…
宿してくれたことに感謝するよ…お袋様…。』
エティダナは震えた。
その声は、自身の腹を震わせて伝わってくるのだ。
【まさか…赤ちゃん…??
お腹の中で…卵の中で…喋ってるの…??】
『卵の殻などとうに喰い尽くした…。もっと欲しいんだ。もっと…』
【あらまあ〜♡待っててね食いしん坊ちゃん??私がんばるわァ〜♪】
『…感謝するお袋様。もっと…もっと…
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、【え…?】もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、…』
【え…え…?】
『もっと貰う。お袋様…
お前の全てを。』
【ハッ…ハア…ッ!!】
吸い取られる…!?腹の中から
血が、肉が、
命が吸い取られてゆく…!
『フハハ…悪く思うな。お袋様。』
背の羽根はみるみる枯れ萎み、末端から痩せていくエティダナ。
【ハァッ…ハァッ…
フフフ…♪アハハハァッ…!!
いいわ!!最ッ悪ッ…!!悪い子…!悪い子ねェッ…!!
私の…赤…ひゃん…っ…♡っ…】
舌も首も窶れ、骨と皮だけになり、痙攣しながら腹だけが膨れ蠕き…
『その赤ちゃんというのだけやめてくれ…此の名は…』
次第に骨も溶け、母の躯は一つ残らず子の臍の緒に呑まれて消えた…。
太陽も月も最も遠く、星の光も雲で遮られたこの地この刻…ソレは生まれる。
『災厄の子 アルムゲイン』
[第五章:Armageddon]
暗闇に光る眼。生まれたてのソレは…4本足の蛇のような生命体だった。
to be continued
ここまでお読み頂き、有難うございます。
災厄の子の名前はAから始まるのを子自身が名付けました。
神の子の名前はJから始まるのにしようとした所をイレギュラーでLから始まるのになって、聖母が名付けました。




