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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第四章】蛇と女と救世主
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『Mobius Cross_メビウスクロス50:模索』

石化は解けない

『Mobius Cross_メビウスクロス50:模索』



 邪眼光が制御不能となり、ヒュオラが石になってしまった。

錯乱したメリーだが、ランスのおかげで落ち着きを取り戻した。

髪を束ねる際に使っていた帯で目元を塞ぎ、ランスに手を引かれて皆のもとにやってきた。


 経緯を聞いて一番動揺したのはシェリーだった。

(まずい…石化が解除できないことが知れた…何よりそれを隠して こき使っていたことが知れた…。終わった…。)

冷や汗シェリー。


ランスにはお見通し。

「シェリー…そのことはあとでいい。今は石化を解く方法をみんなで探すぞ?」


(終わる…あとで…。)


 ランスはなんとか知恵を縒ろうとするが、メシア教会でできることはほぼほぼガリアで試したので、専門家?たる蛇術組の意見が欲しかった。

しかし…


エリーやメリーの意見を聞くと

「端っこのほう折ったら痛さで起きねぇか〜??」

「ッあんたの指折るわよ!!?」


「じゃあ…かち割ってみっかぁ??」

「じゃあ…でなんでそこ行くの!!?」


「中からポロっと出てこねぇかなぁと…

…そうか…!

一回喰って、腹で溶かして尻から出せば戻んじゃねえかぁ??」

「…そうか…!の入り口からなんでその出口行くの!!?」


…こんな調子なので参考にならない。頼りになりそうなのは…


「…なぁシェリー。お前はどうだ?」

「ひっ…う、うぅ…ど、どうしようか…」


歯切れの悪いシェリーに、ランスは肩を並べて語りかけた。

「…シェリー、安心しろって。隠してたことは咎めたりしねえよ…。」


ギク…見抜かれてる…とシェリー。

「…ほ、本当なのか…?」


スクードが援護する。

「ん大丈夫さ。ランスの旦那は約束を守らなかったことは無いんだ。」


「逆に信憑性が削がれた気がする…」

尚も疑り深いシェリー。


 するとランス、塑創のシンで十字鎗を出現させ、それをシェリーに突き出した!

引きつるシェリー

「ヒィッ!…わ、わかっている!考える!考えているから…!」


 ランス、今度は何を思ったか、シェリーの手をとり、その鎗を手渡して握らせてしまった。

「?!…」


「俺の武器。担保に持っとけ。

今俺達にはお前の力が要る。

魔物と魔術の知識、卓越した頭脳を持つお前の力が…。頼む。」


「…フフ、そ、そこまで言われたら致しかたあるまい??」

なんだかんだ頼られると気分が良いシェリー。

安心したら急にアイデアが湧いてきた!

「そうか…!まずは一つ…

メリーよ!ヒュオラに口づけするのだ!」

「っ望む所だけど!なんで??」


ランスがハッとして発言する!

「そうか!呪いを解くにはキス…一理あるぜこりゃあ!!」


ヲロチが若干引く。

「案外乙女チック…」


「う…煩い!///」

 実はロマンチストなシェリーの発案で、一同はアトリエへ移動した。


「じゃ、じゃあ…イクわよ…!」

 目隠しメリーは石になったヒュオラに抱きつき顔を近づけた。

舌をチロチロと出し入れし、シューシューと鼻息が荒い…。


…んムチュウ…唇が硬い。

…んちゅ…レロレロ…ハんむ…がぽ…モゴ…


「おぉおいメリー!食ってる!食いそうだぞ!?」

ランスが止めた。


「ハッ!いけないいけない!無意識にエリーの案2を実行してしまうところだった…」


 ヒュオラ像はヨダレでツヤツヤとしただけで戻る様子は無い…。


「フム…駄目か…。案ずるな。まだまだ策は有る。

次に可能性が高いのは…涙だ!」


「乙女の涙ってやつか!?」


「うわ出た…乙女チックシェリー…」


「や、喧しい!///違う!現に可能性が高いのだ!

ほらッ、涙も蛇眼光と同じく目から出る物であろう?」


これは今度こそイケるか?と期待されたが、結果は涎と同じだった。


「ムウ…こうなったら…

分泌物を片っ端から試すぞ!救世主どもは一旦帰れ!

妹の痴態を見たいと言うなら話は別だが。」


「見たいか見たくないかで言えば見たいが、メリーの心情に配慮して帰るわ。

じゃいったん鎗返してくれ。」


「な…!?」


「大丈夫だって。帰る時と、災厄が出た時だけだ。

明日もちゃんと預けるよ。」


「ぜ、絶対ぞ!? 1度鎗を握らせたくらいで、私を手玉に取ったと思うなよ!!」


「はいはい。」



 その夜の蛇術館アトリエは凄絶悲惨だったらしい。ヲロチと、母の間に身を隠すマザーすらなんとなく食欲不振になった。

それでも石化は解けなかった。


 次の日ランス達がやってくると、今度は解毒薬を作ろう!という話になっていた。

なんでも、石化の魔眼は神による呪いなのだが、その本質は蛇に因んだ毒に近い物である…という仮説を立てたんだそうだ。シェリーが。

方法としては、メリーが蛇眼光をまた制御するか、蛇眼光で石化しない生物を見つけ出し、弱めの石化毒に晒す。

その生物には、石化毒に対する抗体ができ、その血液を塗布ないし摂取することで石化が解けるかも、という理屈らしい。


 メリーは、部屋に入れられた生物を片っ端から蛇眼光にさらし、石化させないよう制御できないか、または石化しない生物はいないかを懸命に模索した。

ランス達は動物を手に入れる係として働いた。

石化させてしまった動物は、アトリエの扉のすぐ外に置いておく。

そうすれば、ランス達が新しく仕入れてきた動物と交換されるという流れだ。

…蛇術館には様々な動物達の石像が日に日に増えていく…。すまない実験動物達。お前達の犠牲は無駄にしない…。




 それが作業と化し始めた頃、不意にメリーに呼ばれたランス。

「おう。どうした。お疲れか。」


「…ランス…こんなことでほんとに…なんとかなる…?」


「弱気になるんじゃねえ…。自分にできることをするしかねえんだ。ヒュオラのためにも。」


「…わかってる…。

でもね?…」


「おい。」


「でも…」


「おい。その先は言うな。」



「…慣れ始めてる…私がいる…。

ヒュオラのいない生活に…

戻って欲しいって…戻ったら良いなって…そう思ってるのは、確か…。だけど…

私がこれなら、他の奴らはもっとだと思う…。あんたも…そうなんじゃない…?」


「俺は諦めねえ。」


「だから私も諦めたわけじゃないって…。

でも…このままヒュオラが戻らないなら…戻らないなりの生活をしなきゃいけない…。

私達は長生きだから…そんなふうに…考えちゃうこともある…。」


ランスは浅くて長い溜め息をついてから言った。

「…誰しもいつかは、必ず自分の前から居なくなる…。

お前の考え方も…それはそれで偉いとは思う…。」


 そうしてゴソゴソと、懐から何かを取り出し、メリーの目隠し帯の上に取り付けるランス。


戸惑うメリーをよそにランスが気を込めると…


パアッとメリーの目隠しが光る。そして…


「!…う、嘘…。目が…視える…?目隠しの下からランスが視える…!?」


「それな、俺の与恵のシンって能力で、土から作った透視グッズだ。蛇眼光まで透さなくて良かったぜ。石んなるかと思った。」

ランスは笑いながらそう言った。


「ランス…あんた…」


「それと、もう一つ…」

ランスは今度は、鉄の円盤の下に車輪がいくつもついたようなグッズを持ってきた。


「何それ?」


「これをこうしてっと…」

 ランスはヒュオラ像を持ち上げその円盤の上に固定した。

「これでお前でも動かせるだろ?お前魔物のくせに腕力ねーからな。プレゼントだよ。」


キュルキュル…キュルキュル…


「ああ…動く…!ヒュオラが動くわ…!これでもっと…一緒に居られる…」

メリーは冷たいヒュオラを抱きしめ、目隠しを濡らして言った。

「ズルいわ…人には諦めるなって言っといて…こんな…あり…がと…」


「諦めろとは言ってねえよ。

…じゃな。今日は帰るわ。あんま無理すんなよ。」




 ランス達が去ったあと、メリーは一人…

いや、ヒュオラに話しかけていた。


「ヒュオラ…あんたがこの先どんな姿でも…私の愛は永遠だから…

一緒に寝よ?

ご飯も食べよ?あーんしたげる。食べるのは私だけどね?

一緒にお散歩して…

お昼寝して…

制作も…見守っててね…?

それから…それから…」


目隠しがぐしょぐしょに濡れて気持ちわるい…。裸眼なら、涙が涸れれば終わりなのに…。



to be continued


ほんとに解けないじゃん


あれ?解けた所を見た気がする?預言者気取りも大概にするんだな(スミマセンスミマセンスミマセンスミマセン;)

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