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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第四章】蛇と女と救世主
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『Mobius Cross_メビウスクロス48:福業』

ガリア石になってしまう。

蛇術館の魔物達もびっくり←

しょうがないから宴する← 

そして救世主によって、仲間を救うための救世ムーブが炸裂する…

『Mobius Cross_メビウスクロス48:福業』



 蛇術館の魔物達は、なかばヤケになって宴に興じていた。

どうせもうすぐ破滅なら…という気持ちもあった。明日世界が終わるなら悔いの無いようにタイプ。

ヒュオラとヲロチも交え、他の使用人達に料理や酒を注がせながら。

もし私達が居なくなったら、皆此処を閉めて別の所で生きてゆけ、と冗談のように言い残しておく。

使用人達の中には、いつもの戯言の一環だろうと気にしない者もいれば、先の原因不明の天変地異による館半壊と関係があるのでは…と心配する者もいた。


 ちらかった宴の跡…泥のように眠る魔物たちの中で一番先に目覚めたのは、蟒蛇を自称しながら八口で酔い潰れた情けないヲロチだった。

寝ぼけて自分の状態を確認すると、横には眠りメリー。

なんか抱きかかえられてる…

チッと舌打ちしながらメリーの腕をほどき、身体を起こす。

ズクズクと痛むこめかみ…。


「ん…ん…水、水…。ちょっと〜誰か居る〜?」

とヲロチが使用人を呼ぶと…


「おはようございますヲロチさま。」

と低い声がした。


 はぇ?とそっちを見ると、救世主ランスが居座っていた。


「!!アンななななな!!!?何よ!ついに現れたわね!」

酔いが一発で冷めたヲロチ。跳び退いて髪蛇を光らせる。

するとその髪をするすると指で掬う男が背後に!


「まあ落ち着きなよヲロチちゃ〜ん。せっかく伸びた素敵なロングヘアーが台無しだぜ?」

 スクードだ!触られた所から魔力が抜ける?!蛇髪はおとなしくなってしまった…。


ヲロチは訊ねた。

「何故いきなりこんな所に…門番をどうしたのよ!」


すると、部屋の入り口横に立つ案内嬢が返答する。

「うぅ…ご、ごめんなさいヲロチちゃん…この人達、ナニもしないから中で待つ〜って止められなくって…;」


「もう先輩!なんの為の門番よ!」


「い、今蛇術館は玄関以外穴だらけよ…?;」


「ぎゅぬ…確かに…。。

何…あんた達…敵討ちに来たってわけ…?」

ヲロチの問いにランスが答える。

「は?安く見んなよ?

俺達は、助けてもらいに来たんだ。」


「…?どゆこと…?」


「んまぁなぁ…

情けない話…俺達の力じゃガリアをもとに戻すことはできなかった。

だからま、謝って償って、助けてもらおうと思ってな。」



…なんだコイツ…どういう神経でこんなことを宣うのか…ひょっとしてコイツらは甘ちゃんを通り越して愚鈍なのか…?

「信用できる訳は無いけど…まぁ、消すのが目的なら寝てる間にできた筈だしね…。

とりあえず、皆を起こしてもいいかしら…?」



 他の魔物達も、起きた途端この状況なので一発で酔いが冷めていった。

エリーだけは

「ケヘヘ…何言ってんのかわかんねぇや…助けて欲しけりゃ寝かせろ…zzz」

…一番大物かもしれない…。


 説明を聴いても全く信用できないメリー達。

「…ううう、うそつき…!な、仲間を討たれてそんなこと、言うわけない…!」


「お前メリー…だったか? 石にする奴だよな?…帰らねえよ。ガリアをもとに戻すまで。頼むよなんでもするから。」


「しし知らないわよ!だ第一、攻めてきたのは、そそそっちでしょ!じ、自業自得!せ、正当防衛!」


「それに関しては申し開きもない。ガリアの短気は俺に全責任がある。

喋れなくなったあいつの代わりに謝る。すまなかった…。」


「あ…謝ったって許さないわよ…。殺されかけたのよヒュオラは…!」


「ガリアなんて石にされたんだぜメリー…?…頼むよ。大切な仲間なんだ…。」


「…っ…め、目ぇ見て言いなさいよ!?」


「すまんそれは無理。」


「くっ…!やる気あんの?!…そ、それに…!わ、私

「メリー!代わろう…。感情的になるでない。」

シェリーがメリーの口を遮って入る。

「ランス、スクード。良いだろう。そこまで言うなら考えてやる。

当然ながら、我々に害なせばガリアは二度と戻らぬものと覚悟せよ。

そして我々を満足させねば交渉は不成立!満足したかどうかはこちらが決める!」


「おうそれでいいぜ。頑張るわ。

…シェリー、ゴルゴーンの中身だよな?オフはけっこう色っぽい声なんだな。」


「…い、色目を使うな気持ち悪い!貴様ゴルゴーンの正体が私であることは外では絶対に漏らすなよ?!!そんなことをすればガリアは二度と元には戻らんぞ!」


「勿論だぜ。ま、信用しろよ。なぁスクード?」

「ああ。三姉妹でメリーが頭、エリーが上半身、シェリーが足に化けるなんてよく考えたもんだ。

自慢したい気持ちもわかるが、今の姿の方が魅力的だぜ〜?」

ランスに増して軽薄な態度のスクードに、シェリーは不安になる。

「き、貴様本当に大丈夫か…!!誓え!口を縫うぞ!」


「安心しろって〜♪俺、口の硬さには自信しかないんだ♪」


締まりのない口に不安が増した…。


 正直ゴルゴーンの正体を公表されるのは、命を奪われる次に避けたい…!

…しかし、三姉妹の正体もメリーの秘技も割れている以上、今の蛇術館の戦力では到底この二人を打倒することはできないだろう…。

ガリアの件を餌に何処まで凌げるか…隙をついてヤるしかない…!まずはどうしよう…

シェリーが考えていると…


「うっし。じゃさっそく頑張らせて貰うわ。」

 ランスがそう言って、スクードを引き連れて部屋を出ようとする…!


「は?!?ちょ、ちょっと待て!!勝手に動くな!二人で行動などさせるか!」


「え?御主人様達のために壁直しに行くんだよ。

悪いがスクードとは一緒に行動させてもらうわ。」

「すまんね〜?俺寂しがり屋なんだ。」

「あとよ、飯は要らねえから先に伝えとくぜ?俺ら夜は、帰るから!」


シェリーは愕然とする。

「なっ…!?バリバリに警戒しておるではないか!!やる気あるのか貴様ら!?ガリアが戻らなくてもよいのか!!」


「戻してもらえるよう頑張るからよー。頼むぜ〜ほんとに。

あーそれと、災厄の危機を予知したら出動すっからそればっかりは。わりーな。」


「やりたい放題ッ!;?;」


「あ!あとよ…これ。」

 ランスはそう言ってメリーに、何かが入った袋をジャラリと渡した。

「あの彫刻達の作者はメリーだよな?遅くなったが、これ代金だ。」


メリーは驚いた。

見抜かれたこともそうだが、袋の中には輝く金貨がぎっしりだ。彫像何体分だろう…。メシア教会って儲かってんだなぁ…。



 そうしてランス達は、壊れた蛇術館の正面壁を、ヲロチとヒュオラ監視のもと、使用人達と共に修理する。

基本男手の無い蛇術館にとっては、この力強い男達の働きぶりは鮮烈だった。

宿敵のはずが、額に汗して真面目に働く姿に魔物達は困惑していたが、使用人達は大助かり。一部黄色い声援も飛ぶ。


 いつしか一緒に壁を直しながら、ヲロチはランスという男に疑問を呈した。

「…ねぇ。あんた達さ…どういう思考回路なの?あんた達ほどの強者が、わざわざ危険を冒して油断させようってわけじゃないでしょ?

ほんとにガリアを戻したいならさ、逆に脅すなり、主を一人人質にとるなりできた筈よね…?」


「…お前〜…性格わりーぞ?なんでそんなふうに考える?

こっちは言わば、ガリアを人質にとられてる状況なんだぜ。それ返して貰おうとすんのに、こっちが同じこと仕掛けてちゃダメだろ。

考えてみ?お前だって、例えばメリーが人質にされたら悲しいだろ?」

「いや別に… (真剣)」


「…。。

先走ったのはガリアだしな。俺らが責任とるのはあまり前だろ?」


「なんであんな奴のためにそこまで…。

甘ちゃんで身を滅ぼしなさい。救世主。」


「言ったろーが。大事な仲間なんだよ…。

そんでな?…その“甘み”がわかるお前らだからこそ、このやりかたをする価値があるんだ。

味わいも無くただ食ってかかる相手に、こんなMいやりかたはしない。

早い話がお前らをリスペクトしてるし、信じてる。

お前にもいつかわかるさ。」


「ふん…変態…」


そんな二人の会話を、ヒュオラも黙って聴いていた…。



 一方、使用人と喋りながら素材の運搬や水汲みなど肉体労働を積極的におこなっているスクード。

「いやぁ〜美女に囲まれながらする労働は楽しいなぁ♪

君もこういうのは俺に任せて休んでいいんだぜ?先輩ちゃん♪」


「え、いえ…。わたくしも主様のためにできることをしなければなりませんので…。」


「素敵な真心だ。そんな先輩ちゃんに訊きたいんだけどさ、主様って…どんな娘達?怖いこととかされないかい?」


 始めは答え渋っていたが、以前の案内で面識もあるし、もう隠すことも無い…。むしろ主達の無実…

いや無実では無いか…潔白…でもない…優しさ…いや…

とにかく何かを伝えたくて、先輩使用人は語った。

「そうですね…まず、侍女長のヒュオラ様は…、

見た目は可愛らしいですが、わたくし達使用人にとって姐のような存在です。

ちょっと辛口で、でもすごく頼りになって…誰よりも主様…特にメリー様を大切に想っておられます。」


「メリーか。あの娘はどんな娘なんだい?」


「メリー様は…、初見は一番怖いし、おどろおどろしい喋り方でしかも…その…///

へ、変な御方ですが…、慣れてくると芸術家肌なだけで、小間使いにも比較的優しかったり…ヒュオラ様を溺愛しておられます。

ただ、わたくし達の体型維持には一番拘られますね…っすぐバレるし…。

しかし、蛇術館の収入を担っておられる偉大な御方であることは間違いございません!」


「確かにね。メリーが三女かな?二女はあのエリーって娘かい?」


「はい。エリー様は…いつもぐうたらへらへらとして口もお行儀も悪いです…。

力が自慢で、時々腕相撲など所望されます…

エリー様片手対、わたくしたち全身しかも複数人で…!

…もちろん敵う筈も無く、5人いっぺんに巻き取られてご満悦…というのがいつものパターンです。

ヒュオラ様曰くそれも使用人の護身訓練の一環なのだとか…」


「…ハハン♪御主人様の鑑じゃないの♪で、次は?」


「長女のシェリー様は、お客様との交渉を担う威厳ある当主です。使用人達にも厳しくて、掃除が粗いとお仕置きされます…。

あのかたに逆らうのは…それこそエリー様くらいです。

でも、頼られたりモチアゲられたりするとごきげん良くされて、ご褒美をくださるような一面も。」


「なるほど…。ヲロチちゃんはどうだい?けっこうお転婆に見えるけど?」


「ヲロチちゃんは…一見生意気そうですけど、実は可愛いです。

始めは“食ってやる〜”とか意味不明なこと言ってましたが、ヒュオラ様に“勝手に食べたら溶かす。”と怒られてからはしぶしぶ…。

髪を短くしてからは特に健気に働いています。

ヒュオラ様とはすっかり仲良くなられて本当の姉妹のよう…

最近めきめき仕事ができるようになって私の立場がさらに危…

申し訳ございません忘れてください。」


「ふ〜ん…♪楽しい家族構成だ…♪

あと、もし知ってたら聞かせてほしい。

俺の仲間がメリーに石にされちまったんだが、戻す方法とか聞いたことないかい?」


「…は?…石?石像を創られたということでございますか??」


「あぁ〜ゴメンゴメン♪ちょいと洒落を効かせ過ぎた忘れてくれ♪ところで、最後に君のことをもっと聴きたいな?得意料理は?」


「う…わたくし…料理…に、苦手なんですよねぇ〜!

ヒュオラ様からは…“下の下というかマイナス。素材食べた方がマシ。”と…アハハ…」


「あぁそうかい♪個性があってカワイイじゃないの。」


「そ、それだけじゃないんです!掃除も下手で…できる仕事は案内や水汲み、薪割りくらいで…。。」

「どうりで!ナイスバディだと思ったぜ♪

…努力してるんだろ?その躰、磨かなきゃ出ないキレイさだ。」


「あ!わ、わかります…?!///

お、おほんっ…でも、後輩も先輩も、綺麗な娘ばっかりで…わたくしなどいつ捨てられるか…」


「その心配が君のキレイの秘訣かぁ…。

良いね。素材のままじゃ終わらない、キレイになろうとするその生き方が綺麗だ。

今度二人ででかけよう。料理が苦手なら飯屋に行けばいい。」


「っ///ご、ご冗談を…!小間使いがああああ逢い引きなど許されませんよ!

…でも…ありがとうございます。。少し自信が持てました…♪」


「ますますキレイになるねぇ♪

…よくわかったよ。居たい場所ってこったな…。

やっぱここで副業しようかなぁ?♪君とも一緒に居られるしね♪」


「アハハっ冗談ばっかり〜!

…お、おほん!すみません…;」



 そうして夕刻。

大活躍だったランス達は、蛇術館主達に聞きに来た。

「なぁ。ガリア戻してくれる気になったか?」


シェリーが答える。

「ふん。この程度で満足するわけがないであろう〜?まだまだ頑張ってもらわねば〜?」


ランスは肩を落とす…。

「そぉか〜…。。

じゃ!腹減ったから帰るわ!」


「?!本気?!…も、もっと真剣にやらぬか!!ガリアが戻らぬぞ!?」


「おう!また頑張るわ!明日もよろしくぅ!」


「な…!いったい何を考えている…」






 結局、コケにするだけして去って行った救世主…。

もはや仲間をもとに戻す気が無いのでは…目的は他にあるのでは…とさえ思えてくる。

…まさか…

「…あやつら…本当は気づいている…などということはあるまいな…




 …石化を解く手立てなど無いということに…!」






メリーが返答する。

「そ、それはないでしょ…;もしそうだったらただの異常者じゃない…。

…滅茶苦茶異常者か…。なんなのアイツら…」


エリーは呑気だ。

「ケッヘッヘ…♪考えたってわかんねぇだろぉ〜?おもしれぇからもっとこき使おうぜぇ?」


「うーぬ…逆に脅されているような状況だが…。まあ引き続き、万が一にも気づかれぬよう注意せよ…。」




 メリーはその夜、展示回廊へ足を運んだ。

美しい裸像の中に一つ、ガリアの像が置かれていた…。

「な!アイツらこんなとこに置いて…!私の作品たちが穢れるじゃない…!

くっそ…でっっかいわねなにこの筋肉…


へぇ…背中の筋肉が十字に割れてんのね…天然物にしては味な表現じゃない…


うわぁ〜手でっっか…血管太…女の子と全然違う…


なるほどねぇ〜……」

しこたま観察したあと、メリーは気づいた。

 ガリアの傍らに、以前持ち去られた傑作達が綺麗に返されていたことに。


「…なんなのよ…」


to be continued


石化を単なる状態異常と思っていますか?

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