『Mobius Cross_メビウスクロス41:討つべし!救世主!』
蛇術館に召喚されたヲロチ。力も性格も火器取扱注意な彼女だが、侍女長ヒュオラが火元責任者となって無事鎮火させられた。ヲロチの見習いメイド生活が始まる。
☆登場人物 (この回に出ないのもいます)
·ランス:主人公の救世主。銀髪のイケメンちょっとツン。
·ガリア:拳の救世主。巨漢でクールな力持ち。ちょいコワ男前。
·スクード:盾の救世主。長身軽口兄貴。女性に甘いハンサム。
·シャハネさん:美人のお姉さん。一緒にお風呂に入ってくれる(洗礼)。
·シェリー:蛇術館当主魔蛇三姉妹が長女。下半身が無数の蛇。頭脳主義。
·エリー:次女。両腕が大蛇。腕力主義。
·メリー:三女。顔が蛇の奇才彫刻家。美女趣味。三姉妹合体变化で鎧の巨漢ゴルゴーン彫伯爵の完成。
·ヒュオラ:蛇術館の侍女長。メガツインテールで毒を吐く妖女。
·ヲロチ:蛇術館に召喚された東方の魔物(?)ヤマタテールで火を吐く妖女。
『Mobius Cross_メビウスクロス41:討つべし!救世主!』
蛇術館では、新たな従者?ヲロチが
姐従者であるヒュオラに負けじと頑張っていた。
しかしこのヒュオラ、一緒に働いてみると凄まじく仕事ができるのだ。
不得手という不得手が見つからない。…強いて失敗を挙げるとすれば、こないだくしゃみで壁を溶かしてた事くらいか…。
ヲロチが問いかけた。
「…あんた、仕事出来過ぎなのよ。。
小さいクセにさ、なんでなの?」
「多分、キャリアの差。
私、召喚されて永いし、メリー様にこの形にしてもらってからずっとこの仕事と、後輩の子たちに教えるのやってる。」
「形に…してもらう…?
え、ひょっとしてあれ…?
主メリーに触りまくられてたやつ?
気持ち悪くないの?」
「好きな人に触られるのは気持ちいい。
好きじゃない人に触られるのは気持ち悪い。
好きじゃないのに触ってくる人は1番気持ち悪い…!
あ…。ヲロチに無くて私にあるもの、わかった。」
「…何よ…?」
「主を想う気持ち。」
「…。それはまあ…。
気持ちはあとから付いてくるとか言ってたクセに…。。」
「だと思ってたけど、よく考えたら私は気持ちが先だった。ごめん。
でも、得意な仕事みつけてがんばって、先に自分を好きになれば、きっと相手のことも好きになる。」
「…ふ…そんななりで、人の仕事尽く上回りながら言われてもね…。」
そんなヲロチの朝の仕事は食事当番。
ヒュオラに教わりながら、他の調理係の使用人達に愛でられながら。
…ここの人間共は魔物に対して畏怖の念が欠如しているから腹立たしい。
贄の分際で…。
「…ん〜。ヲロチの料理結構美味しいんじゃない?」
ボロボロとこぼして口に締まりのないメリーには好評のようだ。
「クッチャ…クッチャ…はぁ?フツーだろぉ。てかメリーは食に興味無ぇだろぉ?」
…クチャクチャと汚らしいエリーには通用しなかった…。
コイツには、いつかせめて美味いと言わせてやる…。
「ゲーーーップ…普通だな。
東方の魔物だろう?東方料理か何か出来なかったのか?」
ゲップが卑しいシェリーの嫌味は芯を食ってくるから鬱陶しい…。
コイツはいつか屈服させてやる…。
ヒュオラは意外にも慰めてくれる。
「ヲロチがんばってた。
手先も要領も悪くないからキャリアでなんとかなる。
新人の出来としては下の上くらい。」
…慰めに毒が混入している…
「ぅ五月蝿いわね…!
我は魔物よりもっと神的な存在なの (多分)!
料理は作られる側で、作る側なんてやったこと…」
「言い訳してるとうまくならない…。」
ヒュオラが哀れみの表情で言った。
「ぎゅぬぬ…!
ていうか、主達の願いは何よ??
まさかお手伝いさせるために我を呼び醒ましたわけじゃないでしょ?!」
「屠らねばならぬ…奴らが居る…。」
シェリーがそう言うと場が若干殺気立った。
「救世主を名乗る三人。ランス、スクード、ガリア。」
メリーがそう言って、数枚のスケッチを見せた。
それを見ながらヲロチは言った。
「ふーん…。救世主ねぇ…。
正義の味方って奴?気に入らないわね。」
「正義…?クフフ…違うわ。
どクズよ、どクズ!私達が引くくらいの!」
メリーの言葉にヲロチは耳を疑った。
「嘘でしょ…主達を超えるクズなんて…この世に居るわけ…」
「この人達…
蛇術館の玄関を壊し、
屋敷の使用人を次々と毒牙にかけ、
食物を貪り、
メリー様の傑作を奪って、
代金と称して端金1枚棄てて去っていった…
最低最悪の男達…!」
ヒュオラさえも憤怒する。
「…そ、そんな…そんな絵に描いたような悪業…。祟り神もびっくりね…。
OK。我が消してあげる。
こういう、荒くれ者のクセに持て囃される輩、我だいっ嫌いなの…!」
ヲロチもヤる気になるが、エリーが忠告する。
「ケッヘヘ…やめとけ。
ヒュオラに勝てねえテメェじゃ勝てねえよ…。
毒も効かねえし腕力もぶっ壊れ。
直に会えばわかると思うが、ありゃあオリンプス神とかそれに近い水準の力を持ってる。」
「は?…甘く見ないでくれる?
ヒュオラとは相性が悪いだけよ。
本気でヤれば神にだって負けないわ。」
「エリーの言うことは聴いておいた方がいいわよ〜?こと戦力分析においてはね〜。
例え必殺の技を持ってたとしても…
隙が無いのよ。一瞬たりともね〜。」
「…愉快な寝言ね主メリー。
聴き流してあげるから食後のお昼寝にいってらっしゃい。」
メリーは本当に眠かったのでお昼寝に行った。
さて、昼食調理のあとは風呂焚き準備。
楽勝過ぎて時間が余りそう。
ヲロチはお出かけすることにした。
蛇術館の魔物達は、一部を隠せば人と区別がつかなくなり、時折街に繰り出すこともある。
それはヲロチも例外ではない。
髪は後ろで束ね、髪先を隠すためにヒュオラのフリルの布袋を拝借した。
八股の尻尾はスカートを少し長めの物にして仕舞い込めばいい。
ヲロチには火炎毒以外にも特殊能力がある。
広範囲熱感知。
最大まで広げれば、周囲の建物の構造や生物の形まで正確に知ることができる、
視覚を超越した第六感。
さて探そう…
索敵しやすそうなのは、長髪か巨漢…!
ヲロチが目を閉じて鼻から息を深く吸い、集中した時だった…
?!…なんだこれは…!?
…熱い…!!
常軌を逸した熱エネルギーを持つ人型の生命体がポツンと…
この形は…ヤツらのうちの一人…
巨漢、ガリア…!!
…近い!
ヲロチは、すぐさま近づき、建物に隠れながらガリアを目視で確認した。
間違いない。メリー絵上手。
直に会えば判る…確かに。
あれは殴り合って勝てる生き物じゃない…。
よし。狙撃にしよう!
ヲロチは髪の布袋を素早く取り去り、八股の蛇髪から濃縮された火球を八発、天に向けて放った!
火球は空に消えたかと思うと、高速で下降!
ガリアを取り囲むように地面に打ち込まれた!
ガリアがハッと気付いた次の瞬間…
! ! !
!ゴゴウッ!
! ! !
火柱が立ち上りガリアを包む!
逃れること叶わず、どんな生物も数秒で骨まで焼却!
救世主、1名脱落!
to be continued
見習いメイド生活しようよ…




