『Mobius Cross_メビウスクロス35:古代の遺産』
本体と離れた心臓を探す…それはロマン。ルナベレッタ、ギルト、頑張る。
☆登場人物 (この回に出ないのもいます)
·ルナ:主人公の少年。かわいいだけじゃない!!
·マナ:車輪靴を履いて舞う様に闘う異国人。ずっと元気。
·マホ:双剣で舞う様に闘う異国人。普段は、ぽや〜ん。
·ルナベレッタ:通称ベル。囚われてたシスター。自分を責め過ぎる癖がある。
·魔神ギルト:ルナベレッタの一部に宿り、罪を喰って力を増す鎖翼の異形。
·シャレス:マナとマホを迎えに来た異国人。世話係。
『Mobius Cross_メビウスクロス35:古代の遺産』
ルナ達と離れ、スピニクスの心臓入りカノプスの壺を探すルナベレッタとギルト。
「「さあ…聞かせろ化け物…!」」
ギルトの翼は皮膜が張るように変化していく!
見た目は…鎖のピアスをつけまくった象の耳と言ったところか。
ルナベレッタとギルトは耳に全神経を集中する…。
ドクン
ドクン
「「…捉えた!!行くぞルナベレッタ!」」
ギルトとルナベレッタは音のする方向へ遺跡の壁をぶち破りながら進んだ。
ドゴンガラガラ
バキャンガラガラ
幸いにも目的地は近かった。
鼓動が反響するその部屋は、広けた神殿のような造り。壁画や石の祭壇に大小様々な宝や装飾品が納められていた。
「「ここは…宝物殿か?
!!…面白そうな物があるな…」」
「ギルト様!あれを!」
動物の顔をモチーフにした巨像のような壺が並んでいる。
その中の一つ。
もはや通常の聴覚でもはっきりと捉えることができる。
心臓のカノプス壺!
ギルトは鎖を構えた。
「「ヘッヘッヘ…ルナベレッタァ…。
遺跡の宝物殿に押し入って破壊工作なんざ、まるで墓荒らしだな…!」」
「つ、罪深いことを言わないで下さい…。」
「「ククク…魂さえ奪われ、躯を弄ばれる哀れな獣よ…」」
「魔神の力で…」
「「その魂に…」」
「浄罪を!」「「業砕を!」」
ガッシャーン!ガラガラ…
巨大な鎖を鞭のように撓らせ壺を叩き割るとその中から、およそこの世の生物の物とは思えないような巨大な心臓が出てきた。
表皮は乾いて黒グロとしているが、脈打つと血管がマグマのように朱く浮き出る。
「「チッ。丈夫な壺め。
さあ選べよルナベレッタ。
串刺しか?それとも叩き潰すか?!
オイなに顔隠してやがる!
お前の好きな血管の総本山だろ??」」
「うにゅぅ…私はグロテスクなのは苦手です!」
ちなみにルナベレッタのフェティはすじだ。血管や筋肉ならまだしも、心筋は専門外である。
「…早く、体から取り出されて苦しむこの心の臓を楽にしてあげてください…」
「「よぅし!じゃあ望み通り…八つ裂きダァーッ!!!」」
ギルト鎖の波状攻撃を仕掛けた…!
すると、
ジュルルッバチンッ!
心臓の太い血管たちが伸び、ギルトの鎖たちを巻き取った!?
そして心臓はドドムッと跳躍し、その血管の先から朱い砂を撒き散らしてきた!
咄嗟にギルトの翼がルナベレッタを庇う!
ジュジュゥ〜…!
「アッ…!!」
「「チイッ…!!」」
砂を浴びた所から湯気が立ち、ギルトの肌が僅かに爛れる!
「「クッ…!化け物は心臓まで化け物ってことか!
マズイぞ…ルナ…!」」
…
一方ルナ達はスピニクスからの命がけの逃走劇を繰り広げていた。
ルナのデュアルクロスがあるぶん牽制にはなるが、マナとマホを守りつつスピニクスの足から逃げることなどとてもできず、戦線はミイラの間からさほど移動してない。
とにかく生き延び、ルナベレッタ達がスピニクスの心臓を破壊してくれるのを待つばかりだ!
しかし色々な場合を想定しておく必要がある。
ルナはあくまで冷静だった。
そもそも心臓を抜いて動いている時点で、心臓を破壊して止まるかどうかは未知数なのだ。
焦ってリスクを冒すことはしない。
心臓を破壊したルナベレッタが戻ってきた時、スピニクスが止まっているなら良し、止まっていないなら多少骨は折れるが、ルナベレッタと協力し、スピニクスを動けなくなるまで切り刻むだけだ!
さあ!どっちでも来い…!
「「おいー!!ルナー!!」」
!!暗闇の向こうからギルトの声!戻ってきた!
…スピニクスは…?!
…動いている!くそっ…!
「「すまん気をつけろー!!
心臓がそっちに逃げたぞー!!」」
?!?
先に現れたのは跳ね転がる心臓だった!
心臓はマホ、マナ、ルナを跳び越すと、
スピニクスが仮面の口を開き、その中へズヌっと入って行った…。
それを追って火傷したギルトとボロボロのルナベレッタが姿を現す。
「ごめんなさい…!
心臓自体がかなり強力な魔物で…
なんとか逃さないようこちらに追い立てましたが、滅するに至りませんでした!」
突然のことで少し呆気にとられていたルナだが、すぐに冷静な分析を見せる。
「い、いや!無事で良かったです!
何よりベルさん達と合流しつつ、心臓の場所はわかっている…状況は有利です…!」
ドクンッ
おや…?スピニクスの様子が…
「グァオォォオオオッ!!!」
スピニクスが咆哮すると、牙、爪、目の部分に輝くオーラが灯った…!
牙と爪に至ってはオーラが刃となって伸びる。
…まるでルナのデュアルクロス…イヤな予感がした…。
ビュンと駆け出すスピニクス!速い…!!
バヂンッ!!
スピニクスの右爪をルナ、左爪をギルトが受けるが、ギルトの鎖は切り裂かれ、デュアルクロスの光の刃はオーラの爪とかち合ってそのまま勢いで全員ふっ飛ばされた。
受け身を取りすぐに体勢を立て直すルナ達だが…
やばい…。状況…有利じゃないかも…。
「心臓が戻るだけであんな力が覚醒めるなんて!」
ずるい!ルナ魂の叫び。
「心臓は魂の宿る場所…差し詰め、魂の刃と言った所でございますね…。
こうなったら予も手伝うしか!姉さん一人で走れますか?」
「ううん…妾もやる!あのドラ猫に一泡吹かせてやる!」
するとギルトが意外な提案をした。
「「…いや!マナとマホはこのまま、
俺達が開けた穴を通ってどんつきの部屋まで行け。」」
「!…でも、逃げてばっかりじゃあ…!」
反論しようとしたマナだが、
「「煩い時間が惜しい!行け!!俺を信じろ!!」」
ギルトの恫喝からは魂の叫びを感じる。
姉弟は黙って頷いた。
姉弟は一目散に、先程カノプスの壺があった部屋まで走ってきた。
「…なに…?ここ…」
「…宝物殿でしょうか…?遺跡〜ってかんじですね…」
二人は辺りを見回す…
そして1枚の壁画を発見する。
「姉さんコレ…!!」
「こんなことって…!」
描かれていたのはスピニクスのような魔獣…、
それと対峙する一人の戦士…頭が鳥の形なので神の類いだろう。
二人の視線は壁画に釘付けになった…
正確には、戦士が装備しているかのように壁画に供えられた、一対の劔と靴に…!
「これって…!車輪靴?!」
「家宝の劔…?!」
マナとマホが持っていた物とは装飾や造形が少し異なるが明らかに同質の雰囲気を醸す古代の遺産。
古の文明が、古の人々がどのような思いで、どのような目的でこれを遺したのかはわからない。
二人は一瞬躊躇うが…
姉弟は目を見合わせて互いを勇気づけるように強く頷いた。
今に遺された物は、今を生きる者達がその使い道を決める!
生きるため…そして仲間を守るため…!
生にしがみつくが如く、その遺産を掴み取った…!!
「 「廻れッ!!」 」
to be continued
宝物殿に伝説のアイテム…それはロマン。
マナ、マホ、頑張れ!!




