『Mobius Cross_メビウスクロス32:マナシス』
マナを救おうと懸命の救命活動を続ける一行の前に現れた“ヤツ”
決闘開始!
☆登場人物 (この回に出ないのもいます)
·ルナ:主人公の少年。かわいいだけじゃない!
·マナ:車輪靴を履いて舞う様に闘う異国人。普段は、元気。
·マホ:双剣で舞う様に闘う異国人。普段は、ぽや〜ん。
·ルナベレッタ:通称ベル。囚われてたシスター。自分を責め過ぎる癖がある。
·魔神ギルト:ルナベレッタの一部に宿り、罪を喰って力を増す鎖翼の異形。
·シャレス:マナとマホを迎えに来た異国人。世話係。
『Mobius Cross_メビウスクロス32:マナシス』
ギルトがある者の気配を察知した。
この部屋…ミイラの間はそれなりの広さで、入口や廊下も広く、天井は高い。
チャリオットなどが行き交う為か遺跡全体が間取り広く造られている。
そしてミイラの間の遺跡奥へと続く出口もまた巨大…
まるで冥府へ続く門のようなその暗闇から、足音を鳴らしてそいつは再び現れた。
雑兵とも神官とも違った端正な装飾…
ゆったりとしていながらも隙きの無い身のこなし…
腹に空いた穴…!
隊長ミイラ…!
ルナとルナベレッタがマナの蘇生に集中する中、ギルトは言った。
「「…ヤツは手強い。そして狡猾だ。どんな手を隠しているか知れない。
やれるか…?マホ。」」
「勿論…
…ここが、予の頑張りどころですから」
マホが一歩前に出る。
両手にチェインソードを持ち、剣先を下げて自然体で構える。
隊長ミイラも劔を構える。
戦場では遺体などを拉致するため片手持ちだったが、今は双剣の出で立ち。
これがヤツ本来のスタイルなのだろう。
奇しくも双剣の両雄が対峙する構図。
互いにゆっくり歩み寄る。
間合いに入る直前、剣先をカシュー…と石床につけるマホ。
ソードより体が僅かに先行する…
それがマホ流テイクバック!
いきなり歩幅を増やし間合いを詰めたかと思うと、唸るチェインソードで床を擦りながら薙ぎ払う!
隊長ミイラが跳んで躱しざまに体重を乗せた一振りを放つ!
マホは瞬時に身を捻り、もう一本のチェインソードを逆手に擦り上げそれを受ける!
ギンッと火花が散ったかと思うとミイラの劔は真っ二つに折れ飛んだ。
隊長ミイラは受け身で転がりながら折れた劔をマホに投げつけ、側転しながら巧みに散乱していた別の剣を拾う。
マホは投げられた劔を弾きながら走り寄る。
隊長ミイラも連続側転から着地で沈み込んだかと思えば反動を利用してマホに向かって跳ね返る。
また打ち合いになるか!?と思われたが今度は違った。
凄まじい斬撃の応酬ながら互いに全ての攻撃を躱している!
薄暗い中、二人の双剣が閃いては絡み合い、しかし決して交わる事なく刹那の幾何学を幾重にも描き出す。回避と攻撃が一体となった剣術同士の闘いは華麗な演舞のようだ。
「「…すげえ…」」
不意打ちを警戒し闘いを見つめるギルトから声が漏れた。
自身やルナベレッタとは縁遠い驚異的な技と技の競り合い。
チェインソードは触れただけで並の剣なら両断できる。
シンがある分マホが有利に思えるが…
下手に攻めたり受けに回ったりすれば忽ち隙を突かれるであろう。
隊長ミイラの鋭い動きがそれを物語っていた。
…どこかで虚を突かなければ…
ギルトの鎖が1本1本、まるで蛇が頭を上げるように動く。
鎖の尖端には肉の瘤が出現し、鋭い爪が生えた。
複数の鎖を矢で狙うがごとく構える。すると、
「ギルト様、ここは予がやりますー!」
とマホが闘いながら声を上げた。
隊長ミイラと少し距離を取る。
「「…なんだって…?!」」
「ここは予一人に任せてください!」
「「血迷ったか?」」
マホは首を横にブルッと振った。
「姉さんがこんなに世話になったんだから…
オトシマエ?はキョーダイである予がつけるべきです!」
まさか…普段は穏やかで、意外と冷静なマホが…
「「おい…お前柄にも無く頭に血が登ってるんじゃあねーか…?」」
マホはフフと笑い、答えた。
「…やですねぇギルト様〜…
怒ってナイわけナイじゃないですかぁ…!!」
「「…馬鹿が。もう知らん。」」
「…恩に着ます〜♪」
「「…俺に手を出させたらお前の責任だ!
そしてお前が死んだら…マナの責任にしてやる!」」
「!…肝に銘じますー!!」
マホは気持ちの勢いがつき、隊長ミイラに言った。
「と言う訳で隊長さん?
予は貴方にもっとよゆーで勝たないといけなくなりました!
歯車をアげるので覚悟して下さい〜!」
チェインソードを先程よりさらに勢いよく振り抜き、床との摩擦で回転を加速させるマホ!
律儀に待ってくれていた隊長ミイラも再び劔を構える。
走り寄る両者!
ガガッ!バキキンッ!!
隊長の双剣が両断されカランカランと飛び散る。
誤ってチェインソードと打ち合った…?
隊長は素早く跳び退き、剣を補充する。
距離を詰めるマホの動きに合わせ剣を振るう!
ガガッ!バキキンッ!!
また砕ける隊長の剣!
偶然ではない…マホの剣が明らかに速くなっている!そのスイングスピードが格段に…!
マホのシンで進化したチェインソード。
その回転する鋸刃は切り裂くだけではない。
地面に食い込ませれば刃の回転がそのまま移動力になる。
今繰り出している速き斬撃はその逆輸入…
つまりマホは、剣を振るう瞬間床や周りの台座にわざと刃を当て、スイングを加速させているのだ。
その斬撃は人知を超えて速く、隊長ミイラの持つ剣は次々破壊されていく!
堪らず後ろに大きく跳び退く!
その先には他のミイラの残骸や武器が散乱している。
「いいですよ好きなだけ補充して下さい…ぜんっぶ叩き切りますから。」
マホはそう言ったが隊長が拾ったのは剣ではなかった。
切り捨てられたミイラ達の腕!足!残骸をマホに向かってぶちまける!
さらにそれに紛れて自分の腹の穴に手を突っ込み蛇を抜き出して投げつけた!
間髪入れず剣も取り、マホが投擲物に対応する隙を狙い走り出す!
ズバババッ
マホは投擲を全て片手で切り払い、言った。
「攻撃に集中しすぎですよ〜。」
グラッ
隊長がバランスを崩す!
踏み出した片足が足首まで割けていた…!
まだマホは間合いの外だと言うのに…!
隊長の後ろでキュルキュルと回るマホの家宝の劔…
そう、マホは、
隊長が焦って投擲に転じた直後チェインソードの片割れを地面に疾走らせた。
マホの手を離れてもチェインソードは、ほんの暫く回り続け、シンの恩恵が消えると元の姿に戻る。
マホはそのほんの一瞬を攻撃に活かすことを狙っていたのだ。
膝をつく隊長。
今度はその片腕を切り飛ばすマホ!
隊長の右手は劔を握ったまま宙を舞った。
隊長が残った左腕で剣を振るう。
が、マホは軽く避けカウンタースイングを合わせる。
チェインソードは弧を描き、床、台座と掠り疾走って隊長ミイラの首をツォンッと切り飛ばした…!
ビタッと動きが止まる隊長!
勝負あり!
…しかしミイラがこれでは死なないことをマホは知っている。
回るチェインソードの切っ先をミイラの胸に突きつけトドメをさそうとする。
カラン…
隊長は左手に持った剣を落とした。
まだ何かするか…?!マホは一瞬警戒した。
…しかし、首無しの隊長ミイラは動かない。
それどころか、空になったその左手は柔らかく開かれ、自身の胸に置かれた…
手首から切れた右腕は、チェインソードを止めようとするでもなく、マホの顔に向かって差し伸べられている…
それはまるで…王にひれ伏すかのようなポーズだった。
一際謎多きこのミイラ。
技の冴え、智略の冴え、そして最期に見せる武人の振る舞い。
彼もかつては、王を守る誇り高き衛士だったのかも知れない。
「…おやすみ…」
マホはその心臓を静かに穿き、隊長ミイラはグシャリと崩れ落ちた。
(やった…!マホ!)
ルナ達は、救命行動にすっかり慣れ、意識はいつの間にかマホの決闘に注がれていた。
目線をマホに向けたまま、幾度となく繰り返してきた人工呼吸をしようと唇をつけると…
ぷーー…っっとルナの口の中に息が吹き込まれてきた!
ぎょっとするルナ!
下を見ると…
「…ねぇ…いつまでキスしてるの…?///」
わっ!
マナが息を吹き返した!
顔色も良くなってる!良すぎると言ってもいい…!
ルナは途端に目が潤み、思わずぎゅっとマナを抱きしめた。
ルナベレッタも涙を流しながら二人を抱きしめた。
劔を拾い、まだ見張りを続けるマホの背中は震え、グスグスと音が聞こえる。
「「役立たずめ。見張り代われ。」」
涙を瞬かせて くるっと振り返り、駆け寄って3人に抱きついたマホ。
マナに頬擦りして一番泣いていた。
to be continued
マナが助かってよかった。めでたしめでたし。
などと…
敵の本拠地に乗り込んどいてこれで終わりと思うべからず…




