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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第三章】砂漠と骸と魂の都
36/66

『Mobius Cross_メビウスクロス31:生成と蘇生』

ヒロインやヒーローがさ、敵に攫われてさ、洗脳される展開あるじゃん?好き(直球)


☆登場人物 (適当に抜粋)

·ルナ:主人公の少年。かわいいだけじゃない!

·マナ:車輪靴を履いて舞う様に闘う異国人。普段は、元気。

·マホ:双剣で舞う様に闘う異国人。普段は、ぽや〜ん。

·ルナベレッタ:通称ベル。囚われてたシスター。自分を責め過ぎる癖がある。

·魔神ギルト:ルナベレッタの一部に宿り、罪を喰って力を増す鎖翼の異形。

·シャレス:マナとマホを迎えに来た異国人。世話係。

『Mobius Cross_メビウスクロス31:生成と蘇生』



 遺跡の奥。

マナはローラーブレイドを脱がされ台座に寝かされていた。


 蛇の神経毒は着実に彼女の身体を蝕んでいる。

始めは痛みと痺れ…徐々に四肢から胴へと拡がって、動けなくなっていった。

今は、より深刻な状態になりつつある。

全身の筋肉が弛緩し、呼吸筋が麻痺しだしたのだ。浅くしか空気が吸えず苦しい。


 虚ろな意識の中、ミイラ達が周りで犇めいているのはわかる…。

自分が今からどうされるのか、考える余力も無かったが、ぐったりし、たまたま首が向いていた視界の先でそれは明らかになる。


 横にはマナと一緒に運ばれてきた戦火の遺体が同じように仰向けに置かれている。

神官のような格好をしたミイラがゆっくり近づき、鋭い短剣を遺体の腹に突き降ろした!

それだけではない…

肉を裂き、腹膜を開き、臓物を引き摺り出していく…。

心臓以外の臓器を取り除くと、抜けた空洞に何かを詰め、何やら塩のような物をかけている…。


息も絶え絶えな自分の横で、なんと残酷な答え合わせか…。



マナは悟った。




(ちょ…調理!?)



 違う。ミイラの生成。

このあと鉄の耳掻きのような器具で脳を掻き出し、乾燥作用のある霊砂をかけ、防腐と消臭作用のある薬と布で覆い、棺に納める。

本来ならそこから数ヶ月寝かせねば完成とはならないが、ここでは数日の内に出される。

 あとはある処理を施せば、忠実な兵士として蘇るのだ。



 勿論そんなことは知らないマナ。

今の工程を見て調理だと思ってしまった。


(…食べられるのやだな…

…てか人の内臓ってあんなに詰まってんだ…

…妾細いから少なかったりするのかな…それとも、

“細いくせに案外中身ぎっしりだな”

とかミイラに思われたりするのかな…なんか…やだなあ…)


裸を見られるのは恥ずかしくないが、内臓を見られるのはちょっと恥ずかしいマナであった。



(…やば…料理長ミイラ近づいてきた…

…せめて意識無くなってからにしよーよ…

食材の気持ちになってよ…)




神官ミイラがマナの横に立つ。

短剣を持つ手が上がる…。




(…おやすみ…)








ザキュッ!



 神官ミイラの肩に刺さったメビウスクロス!メビウスの鎖が唸る!


「ッマナーーーッ!!!!」

ドキャっとルナが神官ミイラを蹴飛ばしながら飛び入ってきた!

乱入者に色めき立つミイラ達…!


「マホッ!ギルトッ!頼んだ!!」

 ルナに襲いかかるミイラ達を、チェインソードに乗って疾走するマホと、ギルトの鎖が蹴散らす!


 ルナはすぐさま解毒薬の小瓶を開け、マナに飲ませようとした。


 するとルナベレッタが

「待ってルナ君!まずマナちゃんの容態を確認してッ!」

と駆け寄ってきた。


そうだ…緊急事態こそ冷静に、適切な処置を施さねばならない…!


ルナがマナの様子を伝える。

「…顔が真っ青です…!息も浅い…!」


 ルナベレッタはマナの手首を握り、全身を素早く確認した。

「脈はあり.唇と指先は紫.呼吸困難.経口じゃもたない…もっと吸収の良い方法で投与を…」


 ルナベレッタはルナが持つ小瓶に手を添えて言った。

「1回しか言えないからよく聴いて!解毒剤半分貰うわ.ルナ君は解毒剤をマナちゃんのベロの下に流して.あと、今から私がいいって言うまで何が起こってもマナちゃんの顔だけを見てて.絶対に顔上げちゃ駄目よ!」

普段大人しいルナベレッタの畳み掛けるような早口にルナが驚いている内に、ルナベレッタはルナの持つ小瓶に素早く口を寄せ解毒薬を半分含んだ。

そしてルナの頭をグンとマナの顔間近に押し下げた。


戸惑っている暇は無い。


 ルナは言われた通り、マナの口を開き指で舌を押し上げて解毒薬を舌下に流し入れた。

あとは効くことを祈りながらマナの顔を凝視する。近すぎて見辛い。

そうしていると、ルナの後頭部にマナの膝が微かに触った。


…ん?

どういう体勢だ?

ルナベレッタは含んだ解毒薬をマナの傷口にでも吹き入れているのだろうか?

それにしても、と、ルナが感心したのはルナベレッタの知識だ。


 ルナ自身も田舎育ちでの経験と、救命の基礎は知識であるという考えから聴きかじるくらいはしていたが、ルナベレッタは遥か深く理解している様子。

元々堪能だったのだろうか?


 否、彼女は学んだのだ。

無知で人の命を危機に晒した…あの時から。

罪は人が学ぶ為に神が与えた心の傷痕。勤勉に敬虔に、その傷を埋め続ける。その力は、いつか誰かを救う。



 プハッ!ブッ!と僅かに口に逆流した液を吐き出し、ゴソゴソとマナの体勢を元に戻し、水で濯いだ口元を拭いながらルナベレッタが言った。

「ハア…ハア…ルナ君…もう顔上げても大丈夫です。顔色を確認させて下さい。」



 ルナは顔を上げ、ルナベレッタと二人でマナの経過を観察した。

しかし顔色はより悪くなり、呼吸が止まっている…!

薬が投与出来ても、停止した器官が再始動するには時間がかかる…!


「マナッ!?」

「マナちゃんッ!…脈が速い…!」

必死に呼びかけるルナとルナベレッタ。


 ミイラを粗方片付け、二人に代わって辺りを警戒するマホも叫びかける。

本当は誰より駆け寄りたい気持ちを押さえ自分の持ち場を守りながら…

「姉さん!頑張れ!

…ルナくん、ベルさんお願い!姉さんを助けて!

イウヌでは心臓は魂が宿る場所!姉さんの魂はまだ諦めてない!

だから助けて!お願い助けて!頑張れ姉さん!!」


「マナちゃん!!」


「マナ!!

死なせはしないぞ…僕の魂にかけて…!」


ルナは大きく息を吸い込み…


マナに唇を重ねた


 そして息を送り込む。

深く息を吸ってもう一度。

鼻から空気が抜けている感じがしたので今度はマナの鼻を摘んだ。

ふうーうっとマナの胸が膨らみ、口を離すとぷふーう…と空気が抜ける。

ルナはコツを掴み、何度も息を吹き込み続けた。


こんな方法があるとはルナベレッタも知らなかった。

というかこの時代、まだ人工呼吸の方法など誰も知らない。

ルナ自身我武者羅にやっているだけで、うまくいくかなどわからない。


ただ救いたい一心。


太古より死体を処置生成するために在るこの場所で、生かす為の蘇生処置を…命を吹き込むことを続けた。



 最中、ギルトが突如警報を発する。

「「!…おいお前ら…気をつけろ!

ヤツが…来る…!」」


to be continued


ヤツが来る。ピンチはまだ終わらない。



次回予告↓

やめて!イウヌの毒蛇の神経毒で、呼吸機能を停止されたら、窒息してるマナちゃんの脳まで力尽きちゃう!


お願い、死なないでマナちゃん!あなたが今ここで倒れたら、マホちゃんやルナ君との約束はどうなっちゃうの? 心臓はまだ動いてる。ここを耐えれば、毒に勝てるんだから!


次回、「マナシス」。

クロス✝✝スタンバイ!///

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