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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第二章】救世主と紀元の吸血鬼
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Mobius Cross_メビウスクロス25:未明短夜

ヴァン&パーニャと死闘を繰り広げるルナ達のもとに、ついに姿を現した災厄の魔犬。圧倒的脅威を前に生き延びることができるのか…!


☆登場人物

·災厄の魔犬:破滅の使徒たる災厄の魔物。絶望的に強い。

·ルナ:主人公の少年。かわいいだけじゃない。

·マナ:車輪靴を履いて舞う様に闘う異国人。元気。

·マホ:双剣で舞う様に闘う異国人。ぽや〜ん。

·シャハネさん:美人のお姉さん。一緒にお風呂に入ってくれる(洗礼)。

·ランス:主人公の救世主。銀髪のイケメンちょっとツン。

·ルナベレッタ:通称ベル。囚われてたシスター。自分を責め過ぎる癖がある。

·魔神ギルト:ルナベレッタの一部に宿り、罪を喰って力を増す。

·ガリア:拳の救世主。巨漢でクールな力持ち。ちょいコワ男前。

·スクード:盾の救世主。長身軽口兄貴。女性に甘いハンサム。


·パーニャ:貧血と陽に当たれない病気の少女。夜な夜なヴァンと共におさんぽする。

·ヴァン:意思を持つ吸血の魔剣。夜な夜なパーニャと共に血を求め回遊する。


·ゴルゴーン:蛇術館の主で全身甲冑の謎の彫刻家。美しい女の裸像は命が凍りついたかの如き出来栄え…

·ヒュオラ:蛇術館の侍女長。メガツインテールの幼女。館の召使い達は誰も彼女に逆らえない。

『Mobius Cross_メビウスクロス25:未明短夜』



 災厄の魔犬とでも呼ぼうか。

こいつが夜の闇とパーニャ達の狩りに紛れて犠牲者を増やしていたということか。

犬の形をしているが、全くの別物。夜の闇より尚黒くそこに存在し、殺虐とした気配は感じるのに音はしない。視界に捉えようと凝視するほど、闇に目が吸い込まれて見失ってしまいそうな不安にかられる。身の竦む脅威を前に口を開くことすらためらわれる。


 なんとなくこういう時、逃げるにしろ迎え撃つにしろ、1番最初に行動する奴は大抵1番最初に犠牲になる気がする。


つまりこういう状況で1番に喋りだす奴というのは…


命知らずで


後先を考えない馬鹿で


そして…



勇気の内在値が高い奴らに他ならない。



{ 「一時休戦だな」 }

ルナとヴァンが同時に言った。

{…まずはコヤツを退けよう。}

「…いや…倒す…!」

無茶の内在値はルナの方が高いらしい。


「マナ。今度こそ頼む…!」


話しかけられることで解かれる緊張もある。

「…そ、そのつもりだけどさ…大丈夫?

あんた達だけで死んだりしないよね?」


ルナは自信満々に答えた。

「君が残って全滅したらこいつの行方を知る者は居なくなる。

でも君が行けば、僕らが全滅しても今日で確実にこいつを倒せる。」


かしこい。


「あーっコラ!そんなんじゃ行かないぞっ!」


「…ごめん。

僕が全員守る。安心して行ってくれ…!」


「あいきたっ!頼んだよ…!

あとさ、パーニャ、ヴァン?」


{ 「?」 }

体の向きはそのままに、耳を寄せるパーニャとヴァン。

二人をグイと抱き寄せ言葉を送るマナ。

「さっきマホ助けに行ってくれたよね?理由はいいや。ありがとう。

預けてくから…ルナとマホのこと、お願いします。」


{!!…お前…。しかと受け取った。}

さっきまで自分を突き刺しにきていた剣をハグとは…

ヴァンは気丈な娘は嫌いではなかった。


パーニャは、人に抱き寄せられることが滅多にないので、その温かさにちょっと舞い上がった。そしてかなり勇気が出た!

「///…っお姉さん任して!私、がんばる!」


 マナは急いで救援を呼びに行った。



 …さてここからだ。ルナは状況を分析する。

マナにはノリでああ言ったが、実際は危うい。

時間を稼げば勝てるとは言え、攻撃力の高いマホは中傷へなちょこ状態…。

そのマホを守りながら、スピードのあるマナを欠いた状態で災厄の攻撃を凌ぎきらなくてはならない…。


が、


{さあ…犬ころよ…。吾輩とパーニャの花園を荒らした罪は重いぞ…}

マナから託された赤い決意を分け合うヴァンとパーニャ

「本気の狩りの始まりね!」


 今こちらには超強力な助っ人がいる…!



 ボゴッ!と地面が砕けたかと思うとパーニャとヴァンが飛び立った!

格段に上がったスピードで災厄の魔犬に迫る!



ギャンッッ!!

ブチッ!!



「…っえ…?」



 魔犬が音も無く揺らいだと思った次の瞬間、

パーニャの片腕はもげ、ヴァンの刃はかけていた。


「…っう…あ…あ…ヴァン…。手が…手が…!!」

{グゥッ…!!パーニャッ!!!}


パーニャの腕をハグッハグと咀嚼して飲み込み、顔がヌ…とパーニャの正面を向く魔犬…!

再びガシュっとその首に刃を立てるヴァンだが…切れない!

魔犬が今度は自分から襲いかかろうとすると、眼球にチクリと痛みが趨る。

ルナのメビウスクロス!

「く!目玉でも刺さらないか!」


眼球ですらこの硬度。

魔犬はまばたきをすると今度はルナを睨んだ。


{くらえ化け物!!}


キイイイイイイイイイイン!!!!!!


 ヴァンの超音波が魔犬の耳の中で爆発!

その隙にパーニャを拾って後退するヴァン。

{マズいな…!なんだあれは!強すぎやしないか!?

クソ…パーニャ!吾輩がついていながら…!!}


「ううんヴァン…これくらい覚悟はできてたのに…ビックリしちゃってごめんなさい…」


魔犬は頭を振って気付けをしている。

鼓膜も丈夫なんだろうか…しかし不快感はあるようだ。


ルナが叫ぶ!

「ヴァン!僕の血も使え!早く!」


{言われなくとも!}


 ルナの腕に切れ込み、戦闘に影響無いギリギリの量の血を吸うヴァン。


しかし魔犬は持ち直したらしく、こちらに狙いを定め、飛びかかる!


「く!!メビウス∞ネット!!」


 予め趨らせておいたメビウスの鎖が左右の民家の柱を縫ってあやとりの様な網を作り、魔犬はそこに顎から突っ込んだ!対魔物用に編み出していた新技だ!

ギリギリで止めることに成功したものの、ここから絡めとる余裕は一切ない!柱にも亀裂が走る!


「ッ早くッ…もたない…!!」

 今にも手が千切れてしまいそうなルナの後ろから、チェインソードが飛んでいった!

魔犬の牙を掘削し口内に刺さる!

魔犬は流石に怯み、鼻を振って劔を抜き飛ばした。

マホだ!頑張ったが、今の投擲で腹の傷がさらに裂け血が溢れ出す。

「うぐう…ろ、ローブが汚れるぅ…」


そこなのか…


{でかした。流れ落ちる分だけ貰うぞ?}

マホの血痕を吸うヴァン。

ローブの血のシミが薄くなる!ちょっとWin-Winだ!


 そしてルナとマホの血をパーニャに与える。

「…ヴァン…!歯が欠けてる!?大丈夫っ…?!」


{…心配は要らない。かすり傷…だ。}


 パーニャの瞳が紅くなり、再び魔犬に向かって飛び出す!

鋭い掌打やキックでかなりの衝撃をもって魔犬に打ち込んでいるが、破壊するには至らない。

ルナは鎖を巻きつけていくが動きを止めるには全く足りない。

ヴァンはまた耳元に切り込むが、前足で打ち払われてしまう。

いよいよ増して化け物。かつての災厄のオークより強いのかも知れない。


{…く…もっと血が無ければ…!}

ヴァンはついに弱音が漏れた。

しかしもう、ルナもマホも分けられる程の血はない。


 万事休すかと思われた時、パーニャが何かを思いついた!

「お兄さん!ちょっとだけがんばってて!」


何を血迷ったか戦線を離れるパーニャ。

そして後ろの方で…



「…誰か!誰か起きてる人はいませんか!!

血を分けてくれませんか!誰か!お願い!!」


…それは余りに無垢で…

切実で…

愚かな策だった。


「誰か!」


民家のドアを叩き


「誰か血を!」


夜の虚空に向かって


「血を…!」


稚拙な願いを叫んだ…。


「…誰か…」


誰も応えてはくれない。

…良い考えだと思ったのに…

…何でこんな時に誰も助けてくれないの…?

…神様は私が嫌いなの…?

…私が悪い子だから…?

…私の…せい…?


喉が詰まり、涙が滲み、とうとう膝をついた。


 沢山の命を悪戯に奪ったからバチがあたったんだ。

赦しを乞うように目を閉じると、涙が溢れ、ポツっと地面に落ちた…。



その時


「…救血魔様…!儂らの血を使ってくだされ…!」


 ハッと目を開けるとそこには、この前助けた老親子が立っていた。



{!…坊や!少しの間頑張っていてくれたまえ!}

「ッ!…任せろ…!命に替えても堪えてやる…!」


パーニャのもとへ飛んで来たヴァン。


老いた父は勇んで言う!

「救血魔様に救われた身じゃ!全て持って行ってくだされ!最後に貴女の役に立って逝くなら本望じゃ!」


「イヤよ!おじいさんはベッドの中で息子さんに看取られながらお逝きなさい!」


「はぐうううッなんと慈悲深いッ…!!」


息子は不安そうに言った。

「しかし…僕達のような古びた血でお役に立てるでしょうか…?」


 老親子からヴァンが血を吸う。

失血性ショックが起こらないギリギリまで賜った二人の血が、ヴァンの刃をこれまでに無いほど深いポルフィラ色に染め上げる。


「古びてなんかないわ。

月日を経るごとに深みが出るのよ、人も…ワインも!」


 戦線に目を向けると、ルナは限界寸前!

二重のメビウスの網で凌いでいるが、腕は痺れ目が霞んで、魔犬の牙が届きそうになる…!


ズドォンッッ!!


 パーニャのドロップキックが魔犬の鼻っ柱に撃突!魔犬を押し離した。


ブハっゼエゼエと肩で息するルナ。

「ハアハア…血は…手に入ったのか…?」

皮肉なものだ。結局パーニャが他人の血を集めることに期待しているなんて…。恥も外聞も捨て、ルナはそう訊いた。


「ええ。二人も!恵んでくれたわ。」


「ハアハア…ふ、二人…。」

ルナ、マナ、マホ…3人分でも歯が立たない相手に一般人二人の血で…はたして…

「足りる…のか…?」



ヴァンを口に構え、パーニャは啖呵を切った。

「じゅーっぶん!

この血には…魂が宿ってる!!」


to be continued

ちなみに、ヴァンの超音波攻撃の技名は『Stun Binding Ovation』


魔犬vs魔剣クライマックス…はたして勝てるか

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