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【処女作完結】Mobius Cross_メビウスクロス  作者: 阿暦史
【第二章】救世主と紀元の吸血鬼
19/66

『Mobius Cross_メビウスクロス18:stray bat』

救世主、吸血魔を追う。昼間に。

☆登場人物

·ルナ:主人公の少年。かわいいだけじゃない。

·マナ:車輪靴を履いて舞う様に闘う異国人。元気。

·マホ:双剣で舞う様に闘う異国人。ぽや〜ん。

·シャハネさん:美人のお姉さん。一緒にお風呂に入ってくれる(洗礼)。

·ランス:主人公の救世主。銀髪のイケメンちょっとツン。

·ルナベレッタ:通称ベル。囚われてたシスター。自分を責め過ぎる癖がある。

·魔神ギルト:ルナベレッタの一部に宿り、罪を喰って力を増す。

·ガリア:拳の救世主。巨漢でクールな力持ち。ちょいコワ男前。

·スクード:盾の救世主。長身軽口兄貴。女性に甘いハンサム。


·パーニャ:貧血と陽に当たれない病気の少女。夜な夜なヴァンと共におさんぽする。

·ヴァン:意思を持つ吸血の魔剣。夜な夜なパーニャと共に血を求め回遊する。



·ゴルゴーン:蛇術館の主で全身甲冑の謎の彫刻家。美しい女の裸像は命が凍りついたかの如き出来栄え…

·ヒュオラ:蛇術館の侍女長。メガツインテールの幼女。館の召使い達は誰も彼女に逆らえない。

『Mobius Cross_メビウスクロス18:stray bat』



「別の国にも災厄の噂が轟いちまったか…。

俺もまだまだだな。」


 白昼、ランスは一人貴族街に調査に出ていた。

災厄の気配を便りに吸血魔の足取りを追う。



 ここ最近、貴族街で犠牲者が多数報告されている。

時間は夜のみ。

ある者は全身の血を抜かれ、またある者は無残に喰い荒らされた姿で見つかるという。

吸血魔を恐れ、夜は人出がかなり少なくなったものの、昼の街はいつも通り賑わっている。



 むしろ情報はよく集まったのだが…


行動範囲はとんでもなく広く、一晩のうちに街の北と南で同時に被害者が出ただの…

空を飛ぶ人影を見ただの…

血を集める貴族がいるだの…

ニンニクか十字架を持っていれば大丈夫だの…

きな臭い噂話で持ち切りだった。

いったいどんな化け物なのか…。

ルナが起きたら容姿の特徴を検めよう。

ランスは腹が減ったので調査を切りあげようとした時、ふと路地から気配を感じた。

普段なら、昼時の喧騒に紛れて気づかないような幽かな物音。

それが妙に気になって、ランスは暗い路地へと入っていった。すると…





 少女が独り蹲っている。


「おい、迷子か。孤児か。」

ランスは声をかけた。



「…っ御機嫌よう…ステキなお兄さん…。」


「お前は機嫌よくなさそうだな。」


「…っ大切な人が迷子になっちゃったの…」


「はいはい。お嬢ちゃんが探してるのつもり、ね…。」


「っヴァンがいないと私…私…」


「あー泣くな泣くな。探すの手伝ってやるから。

名前は?」


「…っ私はパーニャ。貴方がヴァンを見つけてくれるの…?」


「バァカ俺そいつ知らねえよ。

あくまでお前が見つけんだよ。」


「ふえ…私もう動けないのに…」


泣き塞ぐパーニャ。

するとランスは、不機嫌に少女の手を掴むとグイッと引き上げ立たせてしまった。

唖然とするパーニャ。



「…お前なめてんのか。

子供だからってグズグズ言ってりゃ良いと思うなよ。

“お前の”大切な人だろ。お前が諦めてどうすんだ?

そのヴァンに何かあったらどうすんだ?」



「…っそれはイヤ…ゴメンナサイ…」


「わかったら行くぞ。

お前みたいな子供は無茶して怪我しないようにしろよ。」


「…っどっちなの?おかしな人!」

パーニャは少しだけ笑った。



 ランスが手を引き路地を出ようとした時、パーニャは突然制止した。

「っあ!待って待ってっ…!

私ね…太陽の光を浴びると火傷しちゃうの…なんとかならないかしら?」


それを聞き、ランスはおもむろに黒い衣を脱ぎ、ぶっきらぼうにパーニャに被せた。

「おら。これで1個怪我から守ったぞ。いけるか?」


「…っ大丈夫だと思う…

っ紳士的な匂いがするわ…♪」



 路地から出ると、表通りは夏の日差しと相変わらずの活気で賑わっていた。

人混みの中、やたら薄着の男が小柄な布のおばけのようなものをおぶって歩く。


「…っこんな中から…見つかるの…」

不安を漏らすパーニャにランスは声をかけた。


「俺の手を握ってそいつを想いながら歩け。」


ヴァンを想うパーニャ。

「…っヴァン…ああっ…ヴァン!

ヴァンが居ないと私何もできないのに…!早く出て来て、ヴァン…っ」

迷子パニックを起こすパーニャ。


「…おい。」

ランスの呼びかけもきこえなくなっていた。



するとランス、布がかかったパーニャの頭を鼓を打つようにポンッと叩いた。




「っ?!?」




音と勢いの割に全く痛くはない、が、生まれて以来初めての衝撃に目がチカチカするパーニャ。

ずれそうになった布を中からあたふた押さえ、ランスを見る。




 「お前、もしヴァンって奴がもう死んでたらどうする?」


「…っ!?!

…っそんなの…無理に決まってるじゃない…

ヴァンは死んだりなんかしないもん…っ!

私をっ…置いていったりなんか…っ」




「バカかお前。


いいか?人はいつか

か な ら ず

死ぬ。


どんっなに大切な人でも、別れはかなっらずやってくる。」




ランスにそう言われ、

ヴァンを想い過ぎてゲシュタルト崩壊していた“死”について思い出す。


 ここ数日で多くの死に触れてきた。

それと同じようにヴァンが死ぬとしても、不思議は無い…

なのに、もしもヴァンが…と考えると、胸がざわざわする。いてもたってもいられなくなる。

これが不思議…


自分の死の認識を検めるように、パーニャはランスに問う。

「…っみんな…死ぬ…お母様も…?お父様も…?」


「ああ。よくわかってるじゃねーか。」


「あなたも?」

「ああ。

お前もな。」





パーニャは少し考えた。

死については間違えてない。ではこの不思議は…

「…っなのにヴァンが死ぬのだけ飛び抜けてイヤなのは何故?」


口に出してみると自然と答えが付いて出た。

「特別だから…?」


「お前にとってな。

逆の立場で考えてみろ?

お前のその特別なヴァンは、

自分が居なくなったら即破滅なお前を見て喜ぶか?」


「ううん…彼は紳士だもの…。きっとすごく心配してくれるわ…。

そんな彼だから特別なのよ…」


 「そんなに特別に想うなら、依存してねえで安心させてやれ。」



「…っでも…私できるかしら…。

私ね?

貧血で体力は無いし…

昼間外には出られないし…

ものも知らないし…

歌も音楽もできないのよ」



「できないことを数えるな。今お前にできることを言ってみな。

可愛い。物が見える。歩ける。話せる。他には?」


「…っえーと…本が読める…、

あと、字が書けるわ!

あとね、踊りを始めたの!

…か、可愛い…っ?///」


「十分!まあがんばれや。」


「…っふふ、あなた中々の紳士ね♪ヴァンには敵わないけどっ!」


「妬けるぜ。…

…お前、もし本当に見つからなかったらよ…」

ランスが言いかけたその時、パーニャが突然声を発した




「あっ!!いた!ヴァンだわ!!ちらっと見えた!」



 人混みの中にその人を見つけたらしい。

「…へ。よかったな。行ってこいや。その上着はやるよ。」

そう言ってゆっくり下ろしてやると、


「うん!ありがとう!

あなたのこと忘れないわ!御機嫌よう!」

パーニャは人混みの中へ消えていった。


「ふー…良い事したぜ〜。

飯食いに帰ろ。」

ランスは帰路についた。




 パーニャは道端で停まっている馬車の荷台に乗り込んだ。

不細工な行商人がヴァンを抱えて入っていくのが見えたからだ。

しかし、荷台に登るために足に力を込めたのが災いした。パーニャは段差を登った瞬間、膝に力が入らなくなった。

そうして視界が勝手に天を向き、目の奥が眩んでパタリと寝そべってしまった。



「おわっ!な、なんだなんだ?!

は…?倒れてる…?」

不細工な行商人は慄いて振り返り、恐る恐るパーニャに近づき布を剥ぎ取った。

「…ガ、ガキじゃねえかおどかしやがって…。」


 空腹と急な運動で、パーニャは意識が朦朧としたままで起きられそうにない。



「…お?何か良い格好をしているぞ?

しかも、女だ!ぐへへ、こりゃ服と合わせて高く売れるぞ…!

なんなんだこの街は、豪華な剣が落ちてたり女が落ちてたり、まるで俺を祝福してるみてえじゃねえか!遥々斜向かいの国から出稼ぎに来た俺への思し召しか?真面目にコソコソ働く俺へのご褒美か??

ふひひ、足がつく前にとんずらするぜ!」

不細工な行商人は荷台の入口の布をシャッとおろした。





 「…とその前に…だ。

俺は真面目な行商人だからな…

シナサダメをしないとな〜ぁ…!ぐっへっへ!」

不細工な行商人はパーニャの顎をグイと持ち、顔を覗き込んだ。

口が清潔な筈もなく、ハァハァと吐息が臭い。

「…ほっ!ちと顔色は悪いが肌艶は良い上玉だっ!やはりどっかの貴族か?可哀想になぁ、せめて俺が高く売ってやるからな?へへっ…!

キズモノにしちまっちゃあ価値が下がるからな…だが、シナサダメは真面目にやらないとな…!フっヒ…!」

そう言って不細工な行商人は、パーニャの下半身に視線を向ける。

ワンピース型のナイトドレス、そのスカートの裾を摘みゆっくりと持ち上げてゆく。




真っ白な細いふくらはぎから、

膝…大腿部と徐々に露わになっていき…




「ハァハァ…」





ドスッ



「ハァハァ…

ハレ…?」

不細工な行商人が視線を落とすと、自身の胸から剣が生えている。





{下劣な前足でパーニャに触れるんじゃない。}

ゴキュンゴキュン

「かひゅっ…ひっ…へ…」

 一瞬にしてミイラと化し、打ち捨てられる行商人の骸。


刃を深紅に染め、宙にフワフワ浮くヴァンと、横たわるパーニャ。


{御機嫌ようお嬢さん。}


「…っ!

御機嫌ようステキな剣さん…。」


{お近づきの印にワインは如何かな?}


「…っいただくわ。じゃーあ、私の牙に口づけして?」


{では美味しくなるおまじないをしなくちゃあね。}


「乾杯」

{乾杯}


{おかえり}

「おかえり」


to be continued

私のお気に入りキャラは不細工な行商人です。

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