『Mobius Cross_メビウスクロス16:助け』
この話からじゃ意味解かんないだろーな…構成がまだまだだ…そんなことにもめげず投稿し続けています。
ルナピンチ!
☆登場人物
·パーニャ:貧血と陽に当たれない病気の少女。夜な夜なヴァンと共におさんぽする。
·ヴァン:意思を持つ吸血の魔剣。夜な夜なパーニャと共に血を求め回遊する。
·ルナ:主人公の少年。かわいいだけじゃない。
·ランス:主人公の救世主。銀髪のイケメンちょっとツン。
·ルナベレッタ:通称ベル。囚われてたシスター。自分を責め過ぎる癖がある。
·魔神ギルト:ルナベレッタの一部に宿り、罪を喰って力を増す。
·ガリア:拳の救世主。巨漢でクールな力持ち。ちょいコワ男前。
·スクード:盾の救世主。長身軽口兄貴。女性に甘いハンサム。
·シャハネさん:美人のお姉さん。一緒にお風呂に入ってくれる(洗礼)。
·ゴルゴーン:蛇術館の主で全身甲冑の謎の彫刻家。美しい女の裸像は命が凍りついたかの如き出来栄え…
·ヒュオラ:蛇術館の侍女長。メガツインテールの幼女。館の召使い達は誰も彼女に逆らえない。
『Mobius Cross_メビウスクロス16:助け』
…だめだ…
…この娘は壊れている…
人間と動物に違いが無いって…?
僕は羊飼いだったんだぞ…。
毛を刈り、シメて、血を抜いて、解体して、食べて、売って…
そんなこと人間にするなんて想像もしたくない…
それが何故かと言えば…
…あれ…
説明が出てこないな…おかしいな…
こんな当たり前のことなのに…
…そういえば…ベルさんは肉は食べないって言ってたっけ…
ベルさんも本質的にはこの娘と似た考えだったりするのかな…
…この娘はより純粋なだけ…
…この娘も救いたかったな…
…ベルさんが…僕が最初で最後に救った人になるわけか…
…あ…悪くないと思ってしまった…
なんだか遠くからガラガラと車輪?のころがる音が聞こえる…。
あの世行きの馬車…?
死神の猫車かな…
…ベルさん…父さん…母さん…ごめんよ…
ガラガラガラガララララララ
{!!パーニャ危ない!!}
ガァンンー!と音をたてヴァンが何者かに弾き飛ばされた!
ルナは開放された。
ぼやけた視界に、見覚えのない娘が一人立ちはだかっている。
長いバンダナをたなびかせ、髪はターコイズブルー。異国の人だろうか?
足には車輪のついた靴?を履いていた。
車輪の音はこれだったわけだ。
パーニャが弾き飛ばされたヴァンに駆け寄り、振り返って言った。
「ヴァン大丈夫…?
貴女蹴ったわねヴァンを!」
車輪の娘は自信たっぷりに応えた。
「よくわかんないけど、人が剣に襲われてたら普通助けるでしょ!
ねー。」
「はい〜。姉さんの言うとおりでございます〜。」
さらにルナの後ろからもう一人。
同じ色の髪でターバンを巻き、ブカブカのローブを身に纏った女の子。顔も背格好も似ており姉妹と見られる。
妹は両手にサーベルを持ち臨戦態勢だ。
{…つまり君らも襲われる覚悟がある、ということになるがよろしいね…?}
ヴァンの刃がゆらりと光る。
「えっ喋る??しかもエラそー…」
明るいのか緊張感が無いのか、姉のヴァンに対する感想はそんなものだった。
パーニャが一歩前へ踏み出す。
「ちょうどいいわ。踊り足りなかったところなの…いいかしら?」
「いいよ?
妾ダンス超得意だからついてこれたらね…!」
{まったく。パーニャ、
今の君は無敵だが、警戒と淑やかさは忘れてはいけないよ?
坊やよ。あんな状態から幸運なことだな。
生憎、オヤスミの時間がほんの少し伸びただけだがね。}
「はは…生憎、救われちゃう質なんだよね…」
自分への皮肉も込めてルナは言った。
パーニャは足をクロスし、スカートをふわっと浮かせながらお辞儀した…
次の瞬間、一気に距離を詰めたパーニャは物凄い速さで掌を付き出す!
姉の方は靭やかな体捌きでこれを躱し、車輪靴を活かした滑るような立ち回りでパーニャを翻弄する。
パーニャは一撃一撃地面や壁を抉りながら姉を追うが全く捉えられない。
しかしその表情は鬼ごっこを楽しむ子供のようだ。
試しにえいっと足で攻撃してみる。
するとそれも柔軟に屈んで、避けられざまに足を払われ転ばされた!
「きゃっ!…すっごーい!本当にお上手♪こんなの初めて♪」
パーニャ大興奮。
「えっ硬っ!ずーるーいー!」
車輪靴のつま先、踵には刃物がついておりそれで深めに斬りつけたつもりが…
血を飲んで硬質化したパーニャの足には掠り傷しかついていなかった。
妹の方はヴァンと打ち合っている。
身体を回転させ、遠心力を利用した剣舞のような太刀回り。
サーベルの重さと加速の乗った連撃はかなりの威力らしく、ヴァンはかち合うたびにノックバックしている。
しかしジリジリと押しているのはヴァンの方だ。
「んっ!こちらも…硬いでございます〜!」
姉妹は少しずつ道の真ん中に追い詰められていき、ほぼ背中合わせ、これ以上下がったら味方同士でぶつかる…!
ルナは思わず叫んだ!
「危ない!」
振り回す妹のサーベルが姉に当たりそうになった時、
姉は妹の背中を転がるように、妹は姉の下をくぐり抜けるように回転して位置を入れ替えた!
そのまま姉の踵落としがヴァンに!妹の斬撃がパーニャの腕に同時にヒット!
あまりに流麗なスイッチで今度は一気に戦線を押し返していく。
「…いったぁい…
…けど…切られるってこんな感じなのね…」
パーニャは腕からの初流血をしゅちゅっと啜りながら、サーベル攻撃から逃げる。
「降参してくれたら斬られないですみますよ〜!」
妹は交渉を持ちかけてみる。
今の強靭なパーニャの身体も、サーベルがクリティカルヒットすれば無事では済まない。それが理解できていれば応じるかも…と。
ガッ ガッ
「?!」
いきなりサーベルを両手で掴みパーニャは応えた。
「ううんっ!切られてもいいからあなたのワインを飲みたいわ…!」
{…ところが、だ…}
姉と打ち合っていたヴァンが突如上空に消えた!姉が叫ぶ
「…ぁやば!行ったっ!!」
{パーニャを傷つける者を吾輩は赦さんがね}
妹めがけて急直下ッ!
ザクッ
「いつっ…!」
綺麗な足から鮮血が垂れる。
{…串刺しにしようとしたのだが…
やるね坊や…!}
ルナが咄嗟にクロスを飛ばし、ヴァンに当てることで軌道が少しズレたのだ。
{パーニャ!}
助けに飛び込んできた姉の蹴りをヴァンに掴まり飛び上がって躱すパーニャ。
空中で優雅に血を補給し、フワフワと降
りてくる。
「ん〜!あなたのは塩気がある〜!
これはこれで…
…お姉さんの方はどうかしらぁ?」
「…やば…」
「…です…」
姉妹は必死に応戦しているが、次第に攻撃が避けきれなくなっていく。
パーニャもヴァンも血を吸う程強くなり、その吸い方も大胆になってきた。
はるか頭上で、余裕を見せつけるようにねっとりと味わっている。
「まずいです姉さん…。
このままじゃミイラ取りがミイラになってしまいます〜!」
「ミイラにもミイラ取りにもなりたくないしっ!
…坊やくんは妾が担ぐとして、逃げ切れるかどうか…厳しいよね。。」
「怒られるの承知で言いますけど、姉さんだけなら逃げれるかも…?」
「怒るよ!」
「ぁごめんなさい…」
逃げの算段にルナも参加する
「…僕を置いて逃げてくれ…アイツらは僕が食い止める」
「バカ言わないの。怒るよ?」
「でも…僕を助けに入ったことで君達が危険に…」
「怒るよ!」
「頼むよ…君達だけでも助かって…」
「あ!怒った!!コラっ!」
怒られた…
「あんたねえ男なら
俺が全員助ける!
くらい言いなさい!」
?!ルナも思わずふふっと笑ってしまった。呆れ半分。昂り半分。
「はぁい!じゃあ、男らしく皆で助かる作戦なんですケド…」
妹が小さく手を挙げヒソヒソと持ち掛ける。
「坊やさんの剣って、上まで飛ばせますか?」
「ルナだよ。届くけど…?」
3人がヒソヒソ作戦会議してる間に、上空ではヴァンがパーニャに血を飲ませながら言った。
{パーニャ。そろそろシメようか。夜が明けてしまうよ。}
「…ちゅうちゅぅ…もうひょっほ…もうひょっほ…ちゅぅちゅう…」
話し方、戦い方がおおらかになっている…姉妹の血の影響か…。ヴァンはどうしたものかと考えていた。
先に仕掛けたのは下の3人だった!
「よっし!じゃーあ…」
「…皆で助かろう…作戦…!」
「開始!…ですっ!」
妹がサーベルを一本投げる!
ルナがそれに合わせてクロスを2本投げる!
ほぼ真上に投げられたサーベルはひらりと避けられるが、その逃げ先をクロスが狙う!
「お姉さんの血で私もダンス上手くなってないかしら?」
パーニャはヴァンを離したりまた捕まったりしながらアクロバティックにクロスを躱している。
{パーニャ舞ってる場合ではないよ?捕まってなさい。}
「は〜い♪」
ヒュッとクロスや鎖の隙間を見つけて逃げるヴァン
その時パーニャの頭上に投げたサーベルが落ちてきた!
避けるため一旦ヴァンから手を離しスレスレで躱す。
落ちてきたサーベルをキャッチしながら妹が言う
「…油断しましたね…!」
パーニャの頭上に更にもう一つ影が
「姉さんなら…
そこまで届きます〜!!」
建物の壁を駆け上った姉の渾身のオーバーヘッドキック!
咄嗟にヴァンがパーニャを庇い、叩き落とされる!
その落下先!
サーベルを重ね、ハンマー投げのように大回転する妹!
全力全重のフルスイング!
「あったれー!!」
ガッギャーーン!!
激しい金属衝突音とともに、ヴァンが屋根の彼方へ飛ばされた!
姉がヒューと降りてきてガララと着地。
「やったねーマホ♪」
「ぁはは…家宝の劔と…手が壊れてしまいましたぁ…」
握力が無くなったのか、ボロボロになったサーベルをガランと落とす妹、
マホというらしい。
落ちたサーベルを拾いながらルナに声をかける姉。
「ルナ…だっけ?生きてる?」
「おかげ…さまで…
ごめん…ちょっと待ってて…」
ルナは傷ついた身体を起こすと、向こうに落下して倒れているパーニャに近寄っていく。
「パーニャ…大丈夫か」
呼びかけるとパーニャは寝覚めのように薄目を開け、ゆっくりと眼球を動かした。
「…んん…ヴァン…?」
徐々に目を見開き首を動かし、まさかそんなと上体を起こして辺りを見回す。
パーニャは冷や汗が吹き出し背筋が急激に冷めるのを感じた。
「ヴァン…?!ヴァンどこ?!ヴァン…!!」
「ヴァンは追い払った…。君はもう自由だ…」
「…ヴァンを捜さなきゃ…!」
焦って駆出そうとしたパーニャにメビウスの鎖を巻きつけて止めるルナ。
「ちょちょっ!何してんの?!」
姉も焦る。
パーニャの力はいまだ健在で、ルナはズルズル引きずられた。
パーニャは叫んだ。
「邪魔しないでっ!」
「君はこれ以上アイツと居ちゃいけない!君は…優しい世界を知らないだけだよ…。僕についてきてくれ!」
「イヤよっ!紳士ぶらないで!何が優しい世界よ!
私にとってそれはヴァンなの!
ほんとの紳士は私からそれをとりあげたりしないわ!」
「…君を…救いたいん…」
バシンッ!
「うへッ」
クロスを離し、ルナは情けない声をあげて倒れた。姉が頭を叩いたのだ。
「もーすみませんうちの子が!どーぞ探しに行ってください!」
「…!
…っありがとうお姉さん!…っ御機嫌よう!」
パーニャは一瞬目を丸くしたあとそう言って去っていった。
「あはは〜ごきげんよ〜う…」
白々しい笑顔でパーニャを見送った姉は、見えなくなったのを確認するとゲンコツを作ってワナワナとルナを睨んだ。
「ごめん…」
怒られる前にルナは俯せのまま顔も上げずに謝った。
というより合わす顔が無かった…。
姉が黙って見下ろしていると、ルナはつらつらと話し出した。
「…ほんとバカだよな…
君達が命懸けで助けてくれたのに…
あれでもしパーニャが逆上して襲ってきたらどうするつもりだったんだ…
ほんとにごめんよ…
君達を危険に晒してごめんよ…
…情けない…男でごめんよ…!
でも救いたかったんだ…パーニャを…!
善悪の判断もつかないあの娘が…悪魔に唆されて悪業を重ねてしまうなんて…!
それを見捨てるなんて…!
僕は…ごめんよ…!」
震えるルナの肩。
見つめる姉の眼差しはもう優しくなっていた。
「全員助ける!の中にあの娘も入れるその男気は買ったげる…
だから、力つけてからにしよーよ?ね?」
祈るように俯くルナの拳に手を乗せ、姉はそう言った。
顔は伏せたまま、ルナはその手を握り返す。
「…ありがとう…
…助けてくれて…
ありがとう…強くなりたい…」
「妾、マナ!
がんばれっ!ルナ!」
to be continued
B型は酸っぱい
O型はしょっぱい
A型は甘い
あなたの血は何味?




